“売上金額”と”Instagram投稿量”の間にみられた高い相関関係 ~外食チェーンの取り組みから、ウィズコロナを生き抜くヒントを探る~
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、新しい生活様式を取り入れながらではあるが、徐々に以前と同様の生活に戻りつつある。しかし、新型コロナウイルスが終息するまでには時間がかかると予想されており、企業においては長期化するコロナ禍=ウィズコロナでの生き残り策を早期に検討・実行することが必要となっている。
特に、感染拡大防止のための外出自粛要請により、影響を大きく受けた外食産業においては、現状客足が戻ってきているものの、従前のビジネス形態では今回のような不測の事態に対処しきれない事が明白となっている。
そこで、今回は、外食産業を対象に、Instagram分析を通じて、ウィズコロナの新たなビジネスの在り方のヒントを探った。
2020年5月、ファミレスの業績は前年比で5割まで減少
まず、外食産業の中で、ファミリーレストランチェーンにフォーカスし、2020年5月の業績を確認した。
いずれの企業も、売上高、客数ともに軒並み前年同期比で5割程度まで減少しており、コロナの影響が改めて確認された。客単価は各社ともに前年同期を上回っており、デニーズ、すかいらーく(グループ)、ロイヤルホストは10%以上の増加となっていた。
その中で、サイゼリヤは売上高の減少率は-50%超と大きく、また客単価の増加率は0.4%と5社中最も低くなっていた。一方で、客数の減少幅は5社中最も低く、4月下旬にスタートし、現在もサービスを拡充しているテイクアウト「おうちdeサイゼ」が奏功していると考えられる。
ファン層が厚いサイゼリヤ、プロモーションのデニーズ
次に、Instagramの投稿内容から、生活者視点での各種レストランチェーンの利用状況や評価を探った。 今回の調査では、ファミリーレストラン:7チェーン、すし:2チェーン、うどん:2チェーン、肉料理:3チェーンの計14チェーンを対象に、Instagramの投稿データを分析した。
なお、本記事では、サイゼリヤ(客数減少率が最も低い)とデニーズ(客単価の上昇率が10%超)の2社にフォーカスし、分析を行った。
(※ファミリーレストランチェーン+記事未掲載分を含めた計14チェーンのInstagram投稿実績はダウンロード資料を参照)
Instagram投稿数は明暗が分かれる
サイゼリヤは、緊急事態宣言が出された4月に大きく投稿数が減少していたものの、同4月下旬からスタートした「おうちdeサイゼ」により、”テイクアウト”関連の投稿が急増。同サービスの拡充を続けた結果として、5月には前年と同程度の水準まで投稿数を戻している。
一方、デニーズは、コロナ以前の2020年1-2月からInstagramの投稿数がすでに前年を下回っており、さらに4月に大きく減少し、5月になっても低水準に留まったままとなっている。
デニーズについて、5月の投稿内容をみると、プロモーション関連の話題が多く、”○%割引”や”お子様セット”が多くみられた。これらプロモーションは自社アプリや提携メディアでも露出を行っており、積極的な販促が来店・テイクアウト・デリバリー購入のフックとなっていたと考えられる。
従前から取り組んでいた”テイクアウト”関連の話題はサイゼリヤほど多くはみられなかった。
売上高とInstagram投稿数に関連性あり
ここで、両社についてInstagramの投稿数と既存店売上高の関連性をみてみると、両チェーンともにInstagram投稿数(前年同期比)と既存店売上高(前年同期比)に相関がみられた。
このことから、Instagram投稿数≒ファンの数≒客数ポテンシャルと捉えられ、結果としてInstagram投稿数の変動が売上高の変動と連動していることが窺える。つまり、Instagram投稿数は、売上の源泉となる客数≒ファン数のポテンシャル変動を測り得る可能性が窺えた。
(→Instagramの投稿数と売上高の関連性については、他社他業界を含め別の機会に検証したい)
ウィズコロナを生き残る工夫とチャレンジ
本調査で取り上げた外食チェーンのように、外食産業だけではなく他業界でも、ウィズコロナ/アフターコロナを勝ち抜くためには、従前のビジネス形態から脱却する工夫とチャレンジが必要であると感じた。
最後に、本調査を通じて確認された外食産業の取り組みの一端をまとめて紹介する。日本国内の各チェーンあるいは海外の取り組みや、SNSでの生活者の動向などにアンテナを張り巡らせることで、ウィズコロナの時代を生き抜くヒントを見い出せるであろう。
テイクアウト/デリバリー
サイゼリヤはイタリアンレストランチェーンとして、圧倒的な安さと美味しさの実現を追求してきた結果として、生活者の心強い味方のような存在となり、多くの人がファンとなっている。コロナ禍での業績悪化にも、早期にテイクアウトサービスを始め、拡充するという柔軟性を持ち合わせたことで、ファン離れを食い止めたと思われる。
7月以降には、当面は一部店舗の試験運用のようであるが、出前館と組んでデリバリーを開始するという報道も目にしている。こだわりを持ち続けた「店内飲食」からさらに一歩外に踏み出す形となる。
店頭販売/ゴーストレストラン
一方、デニーズは、売上高やInstagramの投稿量からみたファン作りの点では苦戦を強いられているものの、コロナ禍で新たな取り組みを始めたスピード感とチャレンジ精神には注目すべき点がある。
前述の矢継ぎ早のプロモーションもさることながら、業務用商品(パンケーキミックス)の店頭販売、実店舗を持たず宅配専用店舗となる「ゴーストレストラン」を展開するなど、サイゼリヤ同様に様々な販売形態を始めている。
ミールキット(グロサリー店への転換)
海外の外食店舗ではあるが、”シェフ品質の食材”を「ミールキット」としてデリバリーするサービスを開始し、レストランの強みを活かしつつグロサリー店としてのビジネスにチャレンジする店舗が出てきている
D4DRでは、今後も情報発信、リサーチ・コンサルティングを通じて、アフターコロナの企業・ブランドのマーケティング強化に向けた支援を行って参ります。
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Mikio Aaskawa
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