都道府県別 観光客の動向調査 (Twitterビッグデータによる行動変化のSNS分析) 第9回 2021年6月

47都道府県の動向

 D4DRでは、観光地への往来が回復し、産業として復興するよう応援・確認する目的から、20年10月より47都道府県ごとのSNS上の観光話題の動向を定点モニタリングしている(対象のソーシャルメディアはTwitter、主に話題量の変化から状況を分析している)。過去の公開記事一覧はこちら

都道府県別 旅行・観光話題量の変化(前年同月比)

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感染者数減少により緊急事態宣言が解除
3月の宿泊数は前年の114%、微増にとどまる

 前月同様、まずは観光庁における都道府県別宿泊者の統計データを確認する。感染者の減少により首都圏1都3県を対象とした緊急事態宣言は3月中旬に解除される等、規制が緩和されたことにより3月の宿泊数は前年比では114%と増加していた。しかし、コロナの影響がなかった19年3月との比較では引き続き5割にとどまっている(図1)。

図1 日本全国 宿泊者数推移

緊急事態宣言下での大型連休。話題量に4月からの増加は見られず
Twitter上の47都道府県別の観光話題量を比較

 続いて、前回同様1か月に観光話題(”47都道府県名”、及び”観光”または”旅行”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外)が多くみられた都道府県を分析。 21年4月から5月の主要な関連動向は、以下となる。

■4月
 ・
世田谷区・八王子市で高齢者へのワクチン接種開始(4/12)
 ・4都府県を対象に3度目の緊急事態宣言発出(4/25)
 ・新型コロナウイルスによる死者数が1万人を超える(4/26)
 ・大阪 兵庫 京都で8割超、東京で5割超の陽性者の変異ウイルスへの感染を確認(4/28)
 ・大型連休の開始(4/29)
■5月
 ・大型連休(~5/5) 
 ・4都府県の緊急事態宣言が31日まで延長決定(5/7)
 ・全国感染者数が7,000人超 過去最多(5/8)
 ・愛知・福岡北海道岡山・広島・沖縄に緊急事態宣言の追加発出(計10都道府県)(5/12~23)
 ・東京・大阪で大規模接種センターでの接種開始(5/24)
 ・6月20日までの緊急事態宣言の延長決定(5/28)

 5月の話題量上位をみると全体的に前月より話題量が減少しており、大型連休があったにも関わらず明確な話題量増加は確認されなかった。

図2 話題量上位10都道府県(21年4月、5月)

初の緊急事態宣言下の20年5月との観光話題量比較
全体的に前年の話題量からは回復の兆しあり

 次に、季節要因による増減を排除して考察する目的から、前年と比べて観光の話題発生の減少が大きい、特に課題のみられる都道府県を確認。21年5月の前年同月比ワースト10の都道府県を調査した(図3)。

 前年同月比ワースト1位は大分で71.5%、2位は福島で76.2%、3位は富山で79.4%であった。前月は、前年に感染者が少なかったなどの理由で一時的に観光来訪についての話題量が増えるイレギュラーな要因により、極端に前年同月比が低くなる県もみられたが、今月はそうした影響がみられない中、20年5月比ワースト10位までが前年の70〜90%にとどまった。

図3 話題量前年同月比ワースト10(21年4月、5月)

 

 参考までに図4では21年5月の話題量(縦軸)と前年同月比(横軸)の関係をマッピングしている。1年前の初回の緊急事態宣言下との比較となる今回は、前年同月比100%を上回る都道府県数が28と約6割を占めた。26都道府県(55%)だった前月からも、わずかながら回復が進んでいる様子が窺われる(ピンクのエリアの都道府県増加を確認し、回復度をみていく)。なお、前年同月比がワースト10の都道府県は引き続き赤字で示している。

図4 話題量(縦軸)×前年同月比(横軸)(21年5月)

観光客が”多い”とする言及量が一部の観光地で増加
奈良では例年と比較した文脈で“少ない”とする投稿が一定量

 別の視点として、話題から各都道府県への観光客の「戻り」を把握するため、19年の平均観光話題量上位10都道府県初回記事にて選出)を対象に、客足のボリュームの印象に言及した内容に絞った調査も行っている(図5、 “都道府県名”、及び”観光客”または”旅行客”、併せて”多い””少ない”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外 )。引き続き“多い”の出現量と比率から、回復状況を分析していくダウンロード資料では全都道府県掲載!

※例:次のようなツイートを調査

図5 観光客・旅行客量の言及出現数(19年観光量上位10都道府県)

 2年連続となる緊急事態宣言下のGWも含んだ5月、北海道や沖縄で”多い”の話題量に増加傾向が確認された。奈良県のみ“少ない”の話題量が増加しているが、奈良公園の人出について、例年と比較して少ないと伝える報道がきっかけとなり、違和感を唱える声も一部含まれた。観光立県において、緊急事態宣言下ではあるものの、観光回復の兆しが確認された。

 GW中の旅行や帰省の自粛要請、緊急事態宣言下の21年5月には、以下のようなツイートがみられた。

 感染者数が徐々に減少し、6月17日には沖縄を除く9都道府県の緊急事態宣言が解除され、東京や大阪といった7都道府県はまん延防止等重点措置に移行している。

 一部ではオリンピックの観戦チケットと宿泊をセットにした公式観戦ツアーの販売を再開する動きもある。6月28日時点では、東京都で再び感染者のリバウンド傾向もみられているが、7月には一般の若年層を対象としたワクチン接種も始まる目処が立ち、少しずつ安全に観光することができる情勢に近づきつつある。D4DRでは引き続き、月1回Twitterを対象に前月分の定点調査結果を公開し、数値から復興の動向を継続的に分析していく。

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Ichiko Oki

ソーシャルメディア分析を専門領域に、投稿をもとにした実践的な生活者のインサイト抽出・提案を得意とするデータアナリスト。2018年11月よりD4DR 札幌リサーチセンター開設・室長。

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