働き方改革推進ソリューションは100万社以上の中小企業にニーズあり

2019年4月1日より、「働き方改革関連法」が順次施行されています。また、少子高齢化が進み、人材難に陥っている企業が多々あるなかで、就活生が企業を選定する際に、残業の有無や休日数などの働きやすさという点が年々重視されるようになってきています。このような背景のもと、企業(特に人材不足を課題としている中小企業)にとって、働き方改革は重要な経営課題となってきています。

そこで本記事では、JIPDECが行った「企業IT利活用動向調査2019」をもとに、企業の働き方改革への意識と、働き方改革が生み出すビジネスチャンスについて考えていきます。

企業が重視する経営課題とは

下記の調査結果をみると、「業務プロセスの効率化」、「従業員の働き方改革」、「情報セキュリティの強化」を重視する企業が、規模を問わず多いことがわかります。
業務プロセスの効率化は、働き方改革に大きく関与しています。既存業務プロセスの無駄を排除し、効率化することで労働生産性が高まり、従業員の労働時間を削減することが可能であるからです。
さらに、情報セキュリティの強化も働き方改革に大きく関与しています。前述した「働き方改革関連法」により、「多様で柔軟な働き方の実現」が求められるようになり、今後在宅勤務などのテレワークが一般化することが想定されます。テレワークを一般化させるためには、情報セキュリティ強化が必要になります。
つまり、働き方改革とそれに関わる事象が企業経営において、相当重視されていることがわかります。

働き方改革に関する取り組み状況
~中小企業の約69%が働き方改革を意識~

出典:企業IT利活用動向調査(JIPDEC)


JIPDECが行った調査では、5つの設問で「働き方改革」に関する取組み状況を調査しています。本記事では、5つの設問の回答から中小企業の働き方改革への意識について考えていきます。

※本記事での中小企業の定義は、中小企業庁の定義と厳密には異なりますが、従業員数50~999人としました。(従業員数1,000人以上を大企業としています。)

設問①働き方(ワークスタイル)変革が経営目標として掲げられている

下記の結果から、大企業の半数以上はすでに働き方改革を経営目標に掲げていることがわかります。大企業と比較すると、働き方改革を経営目標にすでに掲げている中小企業の割合は低いです。しかし、回答「検討中」の割合は中小企業のほうが高く、働き方改革推進の意識はあるがまだ経営目標として掲げるには至っていない企業が多いことがわかります。中小企業(N=391)のうち、「実施中」または「検討中」と回答した割合は約69%であり、中小企業も大企業と同様に、働き方改革への意識は高いと言えるでしょう。

出典:企業IT利活用動向調査(JIPDEC)

設問②働き方(ワークスタイル)変革のプロジェクトを設置している

働き方(ワークスタイル)変革のプロジェクト設置も①経営目標同様、すでに実施している割合は大企業の方が高く、「検討中」回答割合は、中小企業の方が高いです。設問①との相関性が非常に高いことが推測され、中小企業の約52%が、働き方改革のプロジェクトを「すでに設置済み」または、「検討中」と回答しました。

出典:企業IT利活用動向調査(JIPDEC)

設問③テレワーク(モバイルワーク)の制度が整備されている
設問④在宅勤務制度が整備されている
設問⑤働き方(ワークスタイル)改革に伴うITシステムの導入が行われている

設問③、④、⑤は、働き方改革の具体的施策についての質問です。中小企業のうち「実施中」または「検討中」と回答した割合は、④の在宅勤務制度が35%とやや低いものの、③テレワーク、⑤ITシステムの導入は45%前後であり、全体的に似通った傾向となりました。

③テレワーク(モバイルワーク)の制度が整備されている

出典:企業IT利活用動向調査(JIPDEC)

④在宅勤務制度が整備されている

出典:企業IT利活用動向調査(JIPDEC)

⑤働き方(ワークスタイル)改革に伴うITシステムの導入が行われている

出典:企業IT利活用動向調査(JIPDEC)

働き方改革が生み出すビジネス機会

JIPDECの調査結果から、企業規模を問わず企業の働き方改革への意識は高いことがわかりました。さらに中小企業に特化すると、働き方改革に関する取組み状況の全5つの設問において、「検討中」と回答した割合が「実施中」と回答した割合を上回っています。このような結果から、働き方改革推進欲求はあるものの、コスト面の問題や、具体的にどのように改革を推進すればよいか、という壁にぶつかっているのではないか、と推察されます。よって、働き方改革の推進につながる製品やサービス、ソリューションに対する中小企業からのニーズは非常に大きいといえるでしょう。また、「働き方改革の推進」という課題解決型のビジネスは様々な角度からアプローチすることが可能であり、膨大なビジネスチャンスがあるのではないでしょうか。

働き方改革が生み出す中小企業向け市場ポテンシャル試算

最後に、JIPDECの調査から何社ほどの中小企業に、働き方改革を推進する製品やサービス、ソリューションのニーズがあるかを試算しました。

働き方(ワークスタイル)変革を経営目標としてすでに掲げているもしくは、検討している企業全てにニーズがあると仮定した場合

企業数の全体は、2016年法人税申告状況で報告されている、2,794,000社とし、そのうち中小企業の割合は99.7%として算出しました。上記設問①「働き方(ワークスタイル)変革が経営目標として掲げられている」の回答「実施中」と「検討中」の割合は68.8%であったので、この数値を利用します。
よって、ニーズのある中小企業数は、2,794,000×0.997×0.688=1,916,505社となります。

働き方(ワークスタイル)変革を経営目標として掲げることを検討している企業全てにニーズがあると仮定した場合

上記設問①「働き方(ワークスタイル)変革が経営目標として掲げられている」の回答「検討中」の割合は39.9%でした。
よって、ニーズのある中小企業数は、2,794,000×0.997×0.399=1,111,461社となります。

試算値は参考程度ではありますが、働き方改革によるビジネスチャンスは多大にあることがわかるかと思います。このような大きなビジネスチャンスを掴むためには、自社の製品やサービス、ソリューションでこれからの働き方を支えることができないか、を考えることが重要になってくるでしょう。

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Sho Sato

D4DRアナリスト。Web分析からスマートシティプロジェクトまで幅広い領域に携わる。究極のゆとり世代の一員として働き方改革に取り組んでいる。

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