【2022年版】 SNS分析 手法解説(Part 1) 〜最適な手法を選ぶ〜
※当社SNS分析サービスのことを知りたい方はこちらからお願いします。
ソーシャルメディア分析(SNS分析)を実施する2つの方法
近年、InstagramやTwitterなどのソーシャルメディアは、企業のマーケティングにおいてとても重要になっています。企業のSNSの活用方法としては、アカウント運用など情報発信とその反響の確認を目的とするものと、SNS上に投稿された情報(コメントや画像、いいねやリツイート等の反響。場合によってアカウントへの反響も含む)を収集・分析を目的にするものがあります。
前者はすでにアカウント持ち運用していて、自社が発信した投稿への反響などの効果を知りたい場合や、効率的に発信をしたい場合に適しています。後者は、前者の要素も含みますが、クチコミと言われるユーザーの声を様々な目的で使用したい場合に適しています。
本記事では後者の「情報収集・分析」について、この記事に触れた方がSNS分析を効率的な手法により実施できることを考えながら、2回に分けてご紹介します。
まず、SNSを「情報収集・分析」に使う2つの方法について以下にご説明します。
方法①ソーシャルメディア分析ツール(SNS分析ツール)を導入する
SNS分析ツールは、SaaS形式で提供されておりフォロワー分析やポジネガ分析といった様々な機能により、SNS上の利用者の「生」の声を収集・分析を可能にするツールです。
専門の分析サービス会社により開発、提供されており、担当者のwebブラウザから使うことができ、半年~1年の利用契約を締結して利用します。SaaS型であるため、いつでも利用できるリアルタイム性や、定期的にシステムがバージョンアップする拡張性は利用するメリットになります。
方法②リサーチ会社のレポーティングサービスを利用する
リサーチ会社によるレポーティングサービス(SNS分析サービス)は、消費者リサーチなどの経験を持ち、専門的にSNS分析を手がけるリサーチ会社が企業に代わって分析を実施します。
リサーチ会社は、データ収集から統計的な手法などを用いた分析設計など、分析に必要なノウハウを用いたレポートを作成し、企業に提供しています。費用は、レポート単位で都度支払う形式が一般的で、定期契約を必要としないため、年間のトータルコストはツールよりは低額になります。
また、ツールの代理店をしている場合もありますので、総合的な分析環境の構築を相談することもできます。
どちらを選択するべき?
以上を踏まえて、それぞれの方法を選択する際のおすすめポイントをまとめると以下のようになります。
方法①SNS分析ツールが向いているケース
- いつでも自分でツールを操作していろいろ分析をしたい!
- 年間である程度の予算を確保できる!
方法② リサーチ型サービスが向いているケース
- 設計や分析は専門家に任せ分析結果をビジネスに活かしたい!
- 費用はできるだけ抑えたい!
※方法②については本記事と併せて続編 をご覧ください。
ソーシャルメディア分析ツール(SNS分析ツール)の紹介と特徴
SNS分析ツールの導入を検討する前に、まだ使ったことが無いという方は、各SNSが提供している機能を使ってみることをおすすめします。
twitter、InstagramなどのSNSではブラウザ版、アプリ版それぞれに検索機能があり、任意のキーワードを入力することで検索結果を閲覧することができます。自社のブランド名や競合のブランド名などを入力し、検索してみると意外な発見が得られることもあります。
たとえば、twitterの検索機能では指定したキーワードを含む投稿を簡単に抽出することができますが、さらに以下の画面にあるような「高度な検索」が標準で用意されており、特定の期間の投稿のみを検索できたり、いいね数の多かった投稿を検索することができます。
SNS分析ツールを選ぶ上で、こうした標準機能を使ってどういったクチコミがSNS上に存在しているのか、その機能はどういったものか、を知っておくことで、どういった情報が自社に必要なものなのか?を確認することができます。
では、ここからは方法①のSNS上の「生」の声を収集・分析できるツールを7サービスご紹介します。いずれのサービスも筆者が導入した実績があったり、操作したことがあるものになりますので、筆者の個人的な印象も併せて記していますので、よろしければ参考にされてください。
BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長
Twitterや2ちゃんねるなど約590億件の口コミが検索可能です。SNSのオープンデータを収集してサービスを提供しているツールも多いですが、本サービスは全世界のTwitterデータを販売するGNIPなどとデータ使用権契約を締結しており、安定的にデータを収集できるシステムになっています。サービス名「クチコミ@係長」として日本のSNS分析企業の中でも古くからサービスを提供していることで知られています。筆者が利用した際の印象では、見やすいビジュアルや設定画面の操作性の手軽さなど、ユーザーフレンドリーな部分が特徴だと感じています。初心者でも使えるユーザビリティとった感じでしょうか。
見える化エンジン
テキストマイニングSaaS市場10年連続No.1のツールです(富士キメラ総研2021年版調べ) 。SNS分析だけを専門とするサービスではなく、ベースがテキストマイニングツールになっていますので、SNSに限らず様々なテキスト情報を解析することもできます。各SNS・ソーシャルメディアからデータを収集・分析する機能を付加しており、見える化エンジンにデータを連携した上で、強みであるテキストマイニング機能により日本語の解析が行えます。2018年2月には、AI技術による画像分類機能も実装し、高度なテキストマイニング力と画像分類機能をともに兼ね備えた数少ないツールといえます。筆者も導入のお手伝いをしたり、SNSデータの分析に加えて、アンケートの定量分析や自由回答文のマイニングに使ったことがありますが、その性能に助けられた経験があります。前述のクチコミ@係長に比べるとユーザビリティは多少マニアックですが、その分、分析機能に長けているという感じです。
Social Studio
Social Studioでは、ソーシャルメディアの投稿を収集、解析してダッシュボードによって可視化することができます。機械学習による投稿の感情分析が可能なほか、AIによる画像認識技術を活用し、グローバルで展開されている200万のブランドロゴなどを含む4タイプのイメージライブラリから、自社ブランドに関する画像投稿をピックアップすることができます。筆者の印象は、ダッシュボードの情報一覧性の高さが秀逸な作りでありますが、海外発のツールになりますので日本語の解析は他のツールほど得意では無く、むしろ外国語の解析に力を発揮すると考えています。
Social Insight
他のツールと同様に、クチコミデータの収集・分析を可能にするリスニング機能を備えつつ、企業のソーシャルメディアアカウントを運用する機能も兼ね備えています。取得可能なデータ量や優れた機能を備えてるにもかかわらず、ライセンス費用が比較的低いことから、多くの企業に導入されています。筆者の印象では、SNSリスニングに特化して利用するというより、アカウント運用によるエンゲージメント強化など、自社による施策を実行する場合に必要な指標が多く実装されていると感じますので、もしそのような利用を想定しているのであれば強みを発揮するのではないでしょうか。
Insight Intelligence Q
どのSNS分析ツールでも有している定量的な分析機能を有していますが、Insight Intelligence Qの特色として商品開発や顧客接点の最適なといったマーケティング活用を目的とする利用を意識した作りになっている印象です。過去13ヶ月間のデータをもとに期間比較や競合比較などをしながら利用することができますので、使い方を工夫すればリスク監視などのブランドモニタリングに使うこともできます。SNS分析業界では、老舗の1社であるデータセクション社が独自に開発してきたデータ収集の仕組みによる独自性があることで知られています。筆者の印象としては、幅広い用途で使えるツールで、レスポンスも良いサービスになっていると感じています。
BuzzFinder
SNS分析ツールの機能として、アラート通知、デイリーメール、トレンド分析、関連語分析、ポジネガ分析などの機能が搭載されており、風評被害への早期対応、コールセンターでの迅速・的確な対応を可能にします。筆者の印象としては、設定も機能もシンプルであるため、手の込んだ機能は必要無く、とにかく手軽に使いたいというニーズに応えているサービスだと感じています。NTTグループの企業が開発したツールであるため、導入の際に与信が通りやすいという点も強みになるかもしれません。
Sprinklr
顧客管理システムと連携し、広告配信の最適化ができることが特徴であり、SNS広告運用する際にも役立つツールとして知られています。webサイトの情報によれば、2020年の第4四半期に米調査会社のForrestr Reserchが発表したレポートでは、ソーシャルリスニング業界のリーダーとしての評価を得ています。筆者の印象としては、大手広告代理店と連携して広告戦略を立案、実行しているナショナルブランドに向いているサービスだと感じています。
費用はどれくらいかかる?コスト削減の方法は?
今回ご紹介した分析ツール、サービスは、Twitter公式のものを除けばいずれも有料のものになります。分析ツールの費用負担は一般に月額制になっていますが、契約期間は1年間以上が必要になる場合がほとんどです。したがって、導入する場合に確保する予算としては、1年間利用した場合の費用を想定しておくと良いと思います。
1年間の費用としては、ツールや選択するオプション、分析できるデータのカバレッジによって費用は異なりますので概算になりますが年間100万円~800万円程度、筆者が導入のお手伝いをしたケースやお客様から直接費用を伺ったケースでは契約金額は年間400万円前後が相場だと思います。
利用の際は、IDひとつあたり1企業というケースもありますが、同一企業であっても部署が異なると別契約を必要とする場合もあります。導入に際しては、サービス提供企業に問い合わせてサービスの規約を確認したり、個別に見積を取るのが確実な方法です。
気をつけたいのは、定額型のサービス全般に共通することですが、費用に見合った利用頻度なのか、利用目的の投資対効果は理にかなっているか、といった点には留意したいところです。「最初は使っていたけど今はほとんどログインしていない。。。」というお話しを伺うことも少なくありません。
もし、「年間400万円は高い」「契約していたが利用頻度が下がった」などの場合には、必要な情報を必要な時だけを提供できるスポット利用可能なリサーチ型のサービスの方が安い場合もあります。リサーチ会社によるサービスについては続編でご紹介していますので、「SNS分析手法解説 2 分析レポーティングサービスも活用し効率良く可視化」をご覧ください。
導入してみたら使えなかった!?数あるツールの中から最適な選択をするには
以上、SNS分析ツール7サービスを紹介しました。数多くあるSNS分析ツールの中から、筆者が導入をお手伝いしたり、実際に利用した経験のあるものを中心にご紹介しましたが、それぞれの特徴は多様で、分析精度や取得できるデータの範囲などが異なります。企業の担当者にとって、サービス選定は骨の折れる作業ですが、自社の利用シーンなどを想定してから導入すれば、自分でデータに触れ、分析できる環境を得られるメリットがありますので、慎重に選定した方が後悔は少ないでしょう。
選定プロセスは重要になりますが、実際には使用開始してみないとわからないことも多く、導入前と導入後でギャップがあるのが実情です。導入後の後悔を減らすためには、サービスの提供企業が無料のお試し利用期間を設けている場合には活用してみることをおすすめします。(もし、ツールの選定など導入をサポートして欲しいという場合はお気軽にご相談ください。貴社に合ったツールをご紹介できるかもしれません。)
選定の際、利用ニーズに対してサービスの料金体系が複雑な場合はサービス提供会社に問い合わせて最適なプランを提案してもらってください。ツール導入には初期費用と年間契約が条件となるため最低でも100万円程度の投資は必要で、高いものになれば1,000万円近い料金が掛かります。サービス提供会社は「あったら便利」な付加サービスをオプションとして持っているケースがありますが、予算が増加しますので本当に必要なサービスだけでスタートするのも良いでしょう。
このように、SNS分析ツールは手探り状態で使い始めることができないため、導入を検討する場合は、サービス提供各社から営業資料などの情報を取り寄せ、有望そうなサービス提供会社には直接面談によってヒアリングするなどして、目的に合致したサービスであるかを見極めます。
その際は、自社が何をするためにツールを導入したいのか、そのためにはどういったデータがどのような精度で可視化できる必要があるのか、整理されることをお勧めします。
もし分析に時間が無かったり、ノウハウが無いので誰かに任せてしまいたい、という方は、SNS分析をビジネスに活用するもう一つの方法として、SNS分析を専門とするリサーチ会社への委託も選択肢になります。そうした企業では、定額費用が不要で単発の契約でも結果が得られるサービスを提供していますので、投資判断のハードルが低いと言えるでしょう。 (その方法については本記事と併せて続編 をご覧ください。 )
最後に
D4DRでは、2005年から開始したソーシャルメディア分析サービスにより、SNS分析サービスを提供する会社と連携して、各SNS分析ツールの導入支援や活用コンサルティングを提供しています。また、SNS分析ツールを必要としない、リサーチ会社ならではのレポーティングサービスも17年間にわたり提供し続けています。
いずれの方法についても、専門のアナリスト、コンサルタントが企業ごとに対応するサービスですので、SNS分析を新たに検討される企業や、すでに導入済みで活用方法を再検討したいと考えている企業の方々とお付き合いさせて頂いています。
ソーシャル分析をする最大のメリットは、他のマーケティングリサーチ手法と異なり、質問に回答するというバイアスを経ずに利用者の本音を可視化できることです。個人の本音は企業にとって非常に有益な情報であり、それがクレームや不満であっても、改善につながる貴重な一歩となるのです。
Takashi Saito
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