【未来戦略コンサルタント藤元健太郎が考える】通信の未来
クラウドコンピューティングの普及によりパソコンやスマホを使う時は必ず通信を使うようになり,さらにコロナ禍で激増したオンライン会議やエンタメでも動画データが普通に使われるため,通信トラフィック量はますます増大を続けている。日本のインターネット通信量は2023年5月で月間30Tbpsであるが2025年には100Tbpsまで増加するという予測もあり,このようにますます激増する通信回線の容量に対応していくことが求められている状況である。
現在進められているひとつの動きが通信バックボーンのオール光化だ。NTTはIOWNという構想で進めており2030年の実現を目指している。全てを光にすることで変換ロス無くさらに多重化することが可能になり容量を増やせるだけでなく,電気信号の利用も減らすことができるため電気代を減らすことが可能になり省エネルギー化の貢献にも繋がる技術だ。
あわせて移動体通信の5Gについては,現在国内で提供されている5Gサービスはまだまだ暫定のもので今後より高速で低遅延なサービスの展開が予定されている。2030年に向けてはさらなる大容量,低遅延の6Gについても計画されている。
その6Gでは規格にも取り込まれる予定なのが衛星ブロードバンドだがすでにイーロンマスクが経営するスペースX社のスターリンクが3000以上の衛星を軌道上に打ち上げており日本でも使える実用サービスを開始している。海上や山奥など現在地上の通信が届かない場所でも利用できるところが大きなメリットのサービスとなっており,例えばウクライナ侵攻では無償でサービスが提供されているが,これは災害時で地上インフラが破壊された時にも衛星によるインターネットサービスが有効なことが広く認識されることになった。競合としてアマゾンも同様のサービス提供を計画している。
またHAPS(High Altitude Platform Station)と呼ばれるサービスもある。こちらは成層圏あたりの上空に気球や無人飛行機を飛ばし続けることで地上の基地局を不要する技術であり,アフリカなど地上インフラの整備にまだまだ時間とコストがかかる新興国での利用が期待されているサービスである。ただ当初参入していた,グーグルやメタのプロジェクトが相次いで中止になるなどまだ事業化には時間がかかる状況だ。
今後利用の広がりが期待されている,自動車の自動運転やドローン,ロボットなどはすべて通信をリアルタイムで使う必要があるものばかりだ。街中にあるこうしたデバイスが事故を起こすことなく安全に社会で利用するためには高速で安定した通信サービスが欠かせない。通信サービスはやはり未来のインフラなのだ。
藤元健太郎
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