スーパーシティ・スマートシティにおける都市OSと住民参画の重要性
「スーパーシティ」構想とは、人工知能やビッグデータ、自動運転、ロボットなどの活用により、社会のあり方を根本から変えるような最先端都市の実現を目指すことである。内閣府では、国家戦略特区制度を活用し、複数の自治体で実証実験を行いたいと考えている。
現在、一部の地方都市や過疎地域では、高齢化や人口減少のあおりを受けたことによる自治体の財政逼迫により、住民サービスの提供は困難に直面している。これらの課題をICTやデータ、AIなどを活用し解決を目指しているのがスーパーシティ・スマートシティである。
藤元が座長をしているgコンテンツ流通推進協議会主催のg-Life委員会では、2019年8月6日(火)スーパーシティ・スマートシティをテーマに講演を行った。その中でも、都市OSと住民参画の重要性について、考察をしたい。
※内閣府「スーパーシティ」構想PRムービーより
スーパーシティ・スマートシティに関しては、カナダのトロント、中国の杭州市などでは一部実装されている。日本国内においても国家戦略特区制度を活用した、世界最先端でありながら日本にマッチしたスーパーシティの実装が求められる。
内閣府が推進するスーパーシティの基本構成要素として、
・未来像
・住民の参画
・強い首長
・技術を実装できる企業
の4つをあげている。ここでいう「未来像」とは具体的に、以下の領域を先行実現していくことと定めている。
・移動:自動走行、データ活用による交通量管理・駐車管理、マルチモード輸送(MaaS)など
・物流:自動配送、ドローン配送など
・支払い:キャッシュレスなど
・行政:パーソナルデータストア(PDS)、オープンデータプラットフォームワンストップ窓口、APIガバメント、ワンスオンリーなど
・医療・介護:AIホスピタル、データ活用、オンライン(遠隔)診療・医療品配達など
・教育:AI活用、遠隔教育など
・エネルギー・水:データ活用によるスマートシティシステムなど
・環境・ごみ:データ活用によるスマートシステムなど
・防災:緊急時の自立エネルギー供給、防災システムなど
・防犯・安全:ロボット監視など
※内閣府スーパーシティ構想最終報告書より抜粋
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/supercity/saisyu_houkoku.pdf
これらの構成要素を支える基盤として、「都市OS」が必要となり、
フィジカルな都市インフラ(道路、水道、電力網など)やデジタルインフラ(横断的なデータ連携基盤)、サービスアプリケーションなどをレイヤー構造化して横展開していく必要がある。
※内閣府資料より
スマートシティにおける「住民の参画」と個人データに対するマインド変化
先日実施されたg-life委員会の講演の中で、スマートシティを進めていく上で市民目線は必須であり、日本においてはオプトアウト型のGAFAモデルではなくオプトイン型のヨーロッパモデルを参考にすべきとの提言があった。
※オプトアウト型:データ提供の拒否を意思表示しなければ、データ提供について許諾されたとみなすもの
オプトイン型:提供者のデータ提供に対する同意、許諾の意思を前提とするもの
先述したカナダ・トロントのスマートシティはサイドウォークラボというGoogleの兄弟会社が主導し、街に埋め込んだ多数のセンサーやカメラから、交通・騒音・大気・微気象・エネルギー・人流などあらゆるデータを取得し、よりよい環境や効率的な都市運営を目指している。しかし、個人情報の扱いなどについて住民の反発を受け係争中で、難航しているのが現状だ。中には、トロントから脱出する住民もいると聞く。
※sidewalklabsのホームページより 実現イメージ
https://www.sidewalklabs.com/
このように、市民の理解を深めなければスマートシティは機能しない。
日本においては、個人データは必ず許諾の上、使用目的も明確に伝えるヨーロッパモデルのオプトイン型が望ましいと考える。
当社代表の藤元は、スマートシティにおいての個人情報の活用も、情報銀行モデルが最適という考えだ。自分の情報を預けることで、市民生活、日々の暮らしがより良く、快適になるという具体的なメリットを提示していくことで、「自分のデータを出したほうが、より良い暮らしが実現できる」と市民の意識に変化が生まれるのでは、と考える。
人が本質的に求めるものを捉えて、スマートシティ・スーパーシティを広げる
日本におけるスマートシティ・スーパーシティ実現は、市民の意識改革に最も重要なポイントがあるのではないだろうか。個人情報の活用に、情報銀行モデルが最適という藤元の考えは紹介したが、情報銀行の認識もまだ市民に浸透しているとは言えない状況だ。複数企業による情報銀行の実証実験や、本格参入に向けた準備も進んでいるが、国民への知名度や関心はまだ低い。一部のアーリーアダプター層のみに受け入れられているのが実際だ。
スマートシティ・スーパーシティの実装に関しても、同じような状況が想定される。日々の暮らしがより良く、快適になるイメージ提示は必要であるが、人間が本質的に求めてやまない幸福の概念を組み込んでいくべきだと考える。
個人データを提供することで、幸せで楽しい生活が送れるという認識が広がっていけば、市民は喜んで個人データを提供するかもしれない。個人情報の提供が進めば、日本におけるスマートシティ・スーパーシティの実装は広がりを見せ、様々な社会課題が解決していくことが予想される。
Yoshida
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