【イベント報告】「経営戦略としてのCXデザイン」(9/25 第67回NRLフォーラム)

2024年9月25日、67回目となるNext Retail Labフォーラムが開催された。

Next Retail Labとは、「次世代の小売流通」をテーマにした研究会で、製造から小売りまで、さまざまな業種に関する調査研究や、マーケティング視点での提言などを行う任意団体である。

今回は、「経営戦略としてのCXデザイン~顧客時間が実践する思考体系」をテーマに、株式会社顧客時間で執行役共同CEO・代表取締役をともに務める奥谷孝司氏、岩井琢磨氏を講師に迎え、講演を行った。

また、講演に続いてNext Retail Labのフェローも参加したディスカッションが行われ、さまざまな論点で議論が交わされた。

顧客時間が考える、今必要な顧客体験とはどのようなものなのか、経営戦略にどのように位置づけ実践していくべきなのか、講演や参加者たちの議論を一部抜粋してレポートする。

■講師:
奥谷孝司氏 株式会社顧客時間 共同CEO/代表取締役
岩井琢磨氏 株式会社顧客時間 共同CEO/代表取締役

■ホスト:
菊原政信 フィルゲート株式会社 代表取締役(NRL理事長)

■進行・モデレーター:
藤元健太郎 ディー・フォー・ディー・アール株式会社 代表取締役社長(NRL理事長)

経営戦略としてのCXデザイン~顧客時間が実践する思考体系
(奥谷孝司氏、岩井琢磨氏:顧客時間)

岩井氏(以下敬称略):本日は、私たち顧客体験が日々いろいろな企業に向き合ってCXについてお話しする中で感じたこと、我々がどこに向かっているのかという思考体系をお伝えできればと思います。

私はもともと博報堂DYグループに勤め、そこでクライアントである事業会社のプロジェクトに携わってきました。顧客時間ではプロジェクトマネージャーを務め、顧客時間のメソドロジーの統括をしています。

奧谷:今日のお話は、「我々はデジタルイノベーションという大きな時代背景の中で生きている」ということが前提です。結果として顧客とのタッチポイントはデジタルになっていますが、実現すべきはさまざまな会社の顧客のよりよい体験づくりです。それを基点とすることで、事業全体の変革が導かれると考えています。

岩井:インターネット普及の始まりがデジタルイノベーションの始まりと言われます。このような技術による社会全体の変革には、40年かかると言われているそうです。例えば電気が発明されていきなり社会全体のインフラが電気にはなりません。インフラが出来て、工場の生産体制が変わり、働き方が変わり…電気が当たり前の世の中になるのに40年くらいかかる。そう考えると、2040年くらいが本当のデジタル社会の到来ではないかと言われています。そして、始まりから考えてそのちょうど真ん中くらいにあたる2020年にコロナ禍が起きています。コロナ禍のときに、何かが新しく変わったのではなく、もともと起きていた変化が加速した、と感じた人が多かったのではないでしょうか。

この前提を踏まえて、きょうは3つのお話をしたいと思います。一つ目が、顧客時間とは何か。そして思考体系としてのデザインシステム・CX Design System、そして企業が直面している「4つのShift」についてです。

奥谷:まず、われわれ顧客時間についてご紹介したいと思います。株式会社顧客時間は、設立して7年目になります。企業組織としては珍しいかもしれませんが、社員として登録されてるのは3人だけで、それ以外は全員「メンバー」として参画しています。ストラテジー、デザイン、テクノロジーの3つの領域でプロジェクトごとにメンバーがアサインされ、顧客体験をデザインして、また解散するという形です。

現在は国内外の40名以上のメンバーがオンラインで繋がりネットワークを組み、受発注という形ではなく、共に創るという形で顧客体験のデザインをしています。

岩井:我々が大事にしているのは、顧客体験と事業変革の関係を直結させることです。どんなに事業が変わったと言っても、顧客の体験がより良くなっていなければ、それは事業変革としては失敗です。まず顧客体験から徹底して考えようというのが、私たち顧客時間が掲げていることです。

加えて、特に新規の事業開発をするときは、顧客体験を経営という視座から考える必要があります。それは実現できるのか、実現するためにはどんな戦略が求められるのか、そしてどんなシステム組織が必要なのか、これらが全て整ってなければ、顧客体験は実現しません。顧客体験は経営としての視座から考えるべきであるというのが、顧客時間の思考体系の一番の原点でもあります。

岩井:顧客体験を作る上では、当たり前ですがやはり顧客接点を持っている企業が強いと思います。しかしいまや顧客接点を強みとすることは、小売業界だけではなく、いろいろな業界に共通して広がっています。今まで顧客接点を持ってこなかったところほど、それを作る必要性を感じて新たに力を入れ始めています。

顧客体験を中心に据えた顧客デザインに必要なものとは

岩井:業界を問わず、OMOやデータ活用というのは、当然ながら既に事業の前提であってももはや課題ではありません。

今我々が向き合っている企業の中で一番課題になっているのは、その上に立って事業システム全体をどう再構築するか、そして新しい顧客価値を実現する事業をどう創造するか、さらにはそのデジタルを前提とした事業構想力のある人材をどのように育成するかという点です。デジタル領域に限らない領域で、全体の改革が進んでおり、それが次の取り組み課題になっています。

その課題を解決するために何が必要なのか、大きく3つ感じていることがあります。1つは経営が顧客体験を考える視座を持っているかどうか。経営戦略の一つとして顧客体験を作るために何をするべきかを経営が理解している必要があります。もう一つはそれを進める際の経営陣のコミットメント。そして3つ目が、外部視点を持つリーダー人材の登用です。

奧谷:今までの企業によくある、いわゆる「順当な登用」ではなく、ちょっと違うところにいた人材がリーダーになってきており、変革の局面を表してるかと思います。

岩井:この経営の視座が、本日の二つ目のテーマであるCX Desigh Systemに関するお話に関わってきます。ここについてお話したいと思います。

ホームページにも公開していますが、大きくは図のような形の考え方です。真ん中にあるのが顧客体験で、オンとオフが存在します。選択して、購入して、使用するという顧客体験に対して、お客様がどんな価値を感じられるようにするのかという「顧客価値」、実際にどのような体験をしたのかを把握する「顧客理解」、さらには誰がお客様なのかを考える「顧客戦略」、そしてそれらを通じて行う「顧客提案」、この4つの「顧客」とついている顧客レイヤーについては、システムの整合性が取れている必要があります。

そして、顧客レイヤーの外側は事業レイヤーです。当然、顧客価値は事業目的から降りてきますし、戦略は事業目標から降りてきます。さらに、システムを回していくためには組織が必要ですし、最終的には全体から得た事業成果を測らなければなりません。これら全体について、経営として整合性が取れているか、という考え方が顧客時間の考え方になります。

ここにある一つ一つは全てが関係しあって順次進むものなので、事業システム全体の設計をするという視座が必要になってきます。

奥谷:どんなビジネスでも、客数掛ける客単価であることは変わりがありません。それを踏まえてこの図にあるような考え方をしていくと、真の顧客中心主義の経営になるという、そういう僕らの考え方ですね。

岩井:日々オペレーションが走っている中で、顧客体験についてこうして俯瞰的に見る機会というのはあまりないのではないかと思うので、経営の視座を確認するためにも、この図を活用するのは新たな発見をする一つの手法ではないかと思います。

Amazon、ウォルマートが実践する新たなCX向上

奧谷:顧客時間の考え方というのは、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の延長線にあるものだと思っています。それをよくあらわしている一つの事例が、「Amazon Fresh」です。Amazonはいろいろなことをやっていますが、ある意味ものすごくCRMを実践している会社ですね。

これ自体をシステム的に見ると、Amazon Goが食材になってカートになっただけかなと思いますが、我々が一番すごいと感じたのは、システムではなく、商品の半分ぐらいがプライベートブランドだということです。Amazonは小売大手のホールフーズ・マーケットを買収したので、生産能力自体は持っていると思いますが、それだけではなく、データ活用のすごさを感じますね。

岩井:そうですね、これはもうデータ直結の話ですよね。これを顧客時間のフレームに落としてみると、アプリを立ち上げて、店舗に入って、カートに入れて、オンラインで決済する、これだけだとカートが入っただけでAmazon Goと何も変わりませんが、やろうとしたことは何かというと、家に帰ってからAlexaを搭載したスマートスピーカーのEchoで「これを買い物リストに入れて」と言って、次の買い物リストを作成することです。例えばある顧客がコーンフレークを買って、3日後に買い物リストにまた入れたとすると、3日でコーンフレークを食べたということがわかる。つまり、どのぐらいの頻度で何を食べたかというのが事後にわかる。

奧谷:こうしたカスタマージャーニーを作ることができればCX向上になることは間違いない。Amazonからそろそろキャットフードがなくなっていませんかとか、トマトジュースはどうですかと言われると、僕は普通に買ってしまいます。彼らはこのタッチポイントを使ってCRMをやっていて、顧客との対話を通じたCX向上を実現していることは間違いないですよね。

岩井:もう一つご紹介したいのが、ウォルマートです。ウォルマートでは、従業員が顧客の家の中に入って、買ったものを冷蔵庫の中に入れてくれるサービスを展開しています。

奧谷:非常に大きな注目を集めていて、ここ1、2年、いろいろな企業のお話を聞いていても、目指すべきはウォルマートだという声をやはりよく聞きますね。

荒っぽく言えばネットで頼んだものを持って行って冷蔵庫に入れているだけですが、Amazonのような大規模なデータ活用ができなくても顧客体験を向上させることができるという、良い事例ではないでしょうか。ネットスーパーをどうしようかと悩んでいるスーパーの方には、普通に高齢者にスマホを渡して、欲しいものを聞いて買い物できるようにしたらいいのではと僕は思いますね。サザエさんの三河屋さんです。

岩井:面白いのは、このサービスはもともと「インホーム・デリバリー」という名前だったのですが、今は「インホーム」に変わったんです。デリバリーそのものに顧客価値はなくて、冷蔵庫の中身が常に補充されて満たされることに価値がある。それによって、あなたの家庭では1週間で卵1パック食べるのに、注文が入っていませんよ、入れておきましょうかということができるようになるんですね。

さらに、覗いて食べたことがわかることから、何の仕掛けもない冷蔵庫が顧客接点になっている。顧客接点という考え方も非常に広義になってきていると言えます。

奧谷:顧客体験というのは、デジタルだけの話ではないわけですよね。僕はこれをヒューマンタッチテクノロジーと呼んでいますが、人とデジタルが介在することが顧客の喜びになる、そこに目をつけているのはさすがだなと思います。

企業が直面する「4つのShift」とは

岩井:今までお話した顧客体験、それを取り巻く顧客レイヤーや事業レイヤーを作っていこうとしたときに、今、大きく4つの観点で変化が起きていると考えています。これが、本日の3つ目のテーマである「4つのShift」です。

1つ目が、顧客価値。すべての企業はカスタマーサクセスへシフトする。
2つ目が、顧客戦略。すべての企業はLTV経営へシフトする。
3つ目が、顧客提案。すべての企業はユニファイドコマースへシフトする。
そして最後が、顧客理解。すべての企業はデータ&AIカンパニーへシフトする。

この4つが、我々の考える4つのShiftです。

まず、1つ目の顧客価値について。顧客価値と提供価値は意味が全く違っていて、顧客価値がお客様の成功、お客様にとって何が価値かを考えるのに対して、我々が提供できるのは何かというのが提供価値です。顧客価値にコミットしていくことが、すなわちカスタマーサクセスへのシフトですね。

奧谷:そうすると何が起きるかというと、事業の構造や顧客体験を変えていかざるを得なくなる。モノからコトへと言われて久しいですが、優れた企業というのは、つながり続ける、そして使い続けたいと思う体験設計をしています。

どういう体験を提供すればつながり続けてくれるのか。これこそを顧客エンゲージメントのコアに置くべきだというのが僕らの考え方です。

岩井:二つ目の顧客戦略について。今一番LTV経営をしていると我々が感じているのは、NIKEです。LTVというと、BtoBやサービス業のものと思いがちですが、恐らくNIKEは世界最大のLTV実践企業ではないでしょうか。

ご存知の通りいろいろな顧客接点を持っていて、2023年度の数字で大体売上の41%がDtoCだと報じられています。戦略方針としての見直しも発表されてはいますが、それだけの数字をDtoCで持っているということは、経営の予測精度がかなり上がる。さらに言うと、もう少しここは伸ばせる、ここは少し落ちているというところに手を加える手段を持っている。

奧谷:LTV経営は、デジタル時代に不可避です。例えばアパレルで3C分析して若者向けの商品を提供していても、実はかなり年齢が上の人が買っていたりする。デジタル化は顧客と向き合わざるを得ない状況を突きつけますが、意思決定をどう取るか、トップが顧客体験にディープダイブしてみようとするかどうかが重要です。

岩井:そして3つ目が顧客提案です。今お話ししたようなことは皆さんからすると当然のことだと思いますが、これらのことがしっかりとつながっているか、経営のシステムの中に入っているかが最終的な顧客提案の形を作れるかどうかに全て影響してくると思っています。

顧客提案について「すべての企業はユニファイドコマースへシフトする」とありますが、ユニファイドコマースとは何かというと、「あらゆる情報を統合して、一人一人に対して最適化されたサービスを編集して提案するマーケティング手法」と定義されています。情報だけではなく価格や商品も含めた編集というものがマーケティングの根本で、改めてフォーカスされています。

奧谷:オムニチャネルという考え方は、自社でチャネルを配置しその中でのCXを統一させるので、どちらかというと収束型です。一方でユニファイドコマースはある種もう外に委ねてしまう。店員に言われたから買いたいと思うだけではなく、TikTokerやYou Tuberに言われたから買いたいと思う顧客がいるなら、それは大切な顧客接点になっている。PLACE自体がものすごく多様化していて、顧客体験を良くできるならその方が良いと言える経営をしていれば自然とそうなっていくのだと思います。

岩井:最後の4つ目のShiftが顧客理解です。顧客理解とは何なのか、データ基盤だという答えもあると思いますが、それだけではないというのが我々の考えです。

2020年以前、顧客接点のデジタル化が大きく進み、ファーストパーティデータとAIが活用される状態になりました。これによって、サービスのオンタイム化が生まれます。ここを飛ばしてデータビジネスに行くのではなく、ここがあって初めて、例えばデータ支援ビジネスのようなデータ基盤の事業化にすすんでいく。

こうして新しいお客様に向けた事業を作るというフローが進んでいる、これが顧客理解で起きているシフトです。デジタルで顧客を理解することで単にマーケティングの効率が上がるだけではなく、新しい事業を作る大事な競争力になってきつつあると言えるのではないでしょうか。

奧谷:オンとオフが融合することによって、サービスシフトが起きています。顧客と常につながる状態を担保するとビジネスができる。データだけ取ることができてもビジネスにはなりません。オンだけではなくオフも大事です。必ずしも、オンタイムでクイックにデリバリーする必要はありません。今日はうちのサービスを使っていないなと知っている、何かを買うんだなと分かればビジネスになります。

岩井:真ん中にある顧客体験を中心に、周辺の顧客価値、戦略、提案、理解の4つの部分で起きている大きなシフトについて、ご紹介しました。これはいろいろな業界で起きています。以上が、顧客時間が思考の前提として共有している主な考え方になります。

【ディスカッション】
顧客時間が考える、今の時代に必要な顧客体験の作り方とは

講演に続き、Next Retail Labのフェローらが参加しディスカッションが行われた。一部を抜粋して紹介する。

■ディスカッション参加フェロー
・濱野幸介氏 プリズマティクス株式会社 代表取締役
・髙野一朗氏 モーターホーム株式会社 代表取締役 / opportunity creator

統計的な確からしさを踏まえたデータ、バリューポイントを見た生成AI活用

藤元:非常に整理されたお話を、ありがとうございました。最初に私から一つ質問させていただきたいと思います。選択と購入はデータがかなり取れる時代になりましたが、使用に関して、アプリやサービス企業と異なり、小売やメーカーはデータを簡単に取ることはできません。先ほどのウォルマートの事例で、配達員が冷蔵庫まで行って冷蔵庫の写真を取るというのは一つの良いヒントでしたが、顧客時間としてはどういう分析手法を使っているのでしょうか。

奧谷:それほど難しいことをしているつもりはありませんが、統計的な確からしさを見ずに、数字を見て売れたとか売れないとかを言うのは本来の姿ではありません。アンケートにしても、めちゃくちゃファンな人だけではなく、全く使ったことがない人のことも知る必要がある。やはり統計的に確かめるというのは大事だと思います。

藤元:それでいくと、元データを取る手法はまだまだアンケートやグループインタビューなどになるんでしょうか。

奧谷:そうですね。そういう意味ではやり方にはとても気を配っています。ファンの人に記述式で答えてもらってもいいことしか書きませんが、自宅で話してもらうと本音が出たりする。取り繕ったアンケートには真実が隠されていないという点には注意が必要ですね。

濱野:トレンドにもなっている生成AIについて、顧客時間としてはどのように向き合っているのでしょうか。今後どうしていこうという考えがあれば、お二人から是非お伺いしたいです。

岩井:使えるものは使いますというのが大前提です。しかし、我々にとってもクライアントにとっても、ビジネスプロセスの中のどこがバリューポイントなのかを見ながら使い方を考える必要があります。

バリューを生んでいないところで効率化するのも一つですし、バリューポイントを担っている人の余計なタスクを減らすことも一つのやり方です。バリューポイントを上げていくためにクリエイティブな使い方ももちろんあります。いずれにしろ、自分たちのワークフローなりビジネスフローが可視化できてないとそれはできません。顧客時間の場合はフローがあるので、その中に可能な部分は取り入れていこうという考え方を持っています。

奧谷:最近僕は意図的にChatGPTに聞くことを止めています。統計が大事と言っておきながらですが、顧客時間は、いわゆる人間力というか、「頭で考えられる」ということが一つの価値かなと思っているんです。

定性的な仮説や、脱フレームで出した非連続のアイディア、それを考えた上でAIに聞いたらやっぱり同じこと言うなとか、もしくは言わなかったなみたいなことの方が意味があるのではないかと最近感じています。AIは、例えば不特定多数の人へのサービス提供の一助としては絶対に使った方が良いと思いますが、特定の少数、自分の価値を上げるものとしてどう向き合うかについては、使ってみた結果、使いすぎても何か陳腐化するのではという懸念も持っています。

顧客はなぜそれをやり続けるのか、習慣化と幸せの追求

濱野:もう一つ、顧客価値のフレームワークの中にあるエンゲージメントバリュー、つながっている価値についてもお伺いさせてください。これは実際にやると簡単ではありません。つながり続ける価値って、よくよく考えると一体何だろう?となってしまいます。ここをどのように作っていったら良いのか、教えてください。

奧谷:カスタマーバリューピラミッドは、三角形の中に内包化されていることが非常に大事で、独立して考えるものではありません。その上でつながり続ける価値を考える一番の近道は、やはり顧客体験を考えることだと思うんですね。体験価値を考えた時に、他の二つの機能価値・つながっている価値がどのようなもので、そのような価値に体験価値がはさまれていたら説明しやすいか。

例えば優れた体験・すなわち商品が出来たとして、みんなすぐ大手量販店に置いてもらおうとするけれど、それだとつながり続ける価値は生まれないですよね。僕だったらなんでサブスクにしないの?と考えます。ビジネスの延長線上から、いわゆる新しい非連続な視点を入れるということが僕はつながり続ける価値になると思っています。

フレームワークとしてピラミッドの形で書くとああいう形になりますが、体験とか解決したい課題が中心にあって、それは何回も発生し得るものか、周り続ける欲求かという観点が必要ではないでしょうか。いわゆる習慣を作ることですね。

岩井:例えば、先日とある経営者と「人はなぜ旅をするのか」という話しをしたんです。一回ではなくて、習慣として旅をし続ける理由は何なのか。それを突き詰めて考えると、その人の幸せにどうつながるかに行き着く。その企業が顧客の幸せを実現するために何が必要か、そういうことが真実なんだと思います。

奧谷:LTVとか言葉はいろいろとありますが、端的に言うとどんな習慣を作ってほしいですか?ということなんだと思います。顧客はなぜこれをやり続けるんですか?という問いに答えが出れば、みんな腹落ちするわけです。それを考えると、こういう接客をしたら喜ばれたとか、こういう風にサービスを使ってほしいとか、結局は体験の話になってきます。習慣というテーマはすごくとっつきやすくて、実はそれがつながり続ける価値ではないでしょうか。

藤元:その習慣を考えたときに、ある程度人が成長しないと体験できないことがあるとしたら、どうやってそこまで顧客を成長させるかというのも大事な視点だと思うんですよね。まさに顧客を成長させる習慣をうまくインプリできると、本当に提供したい価値にお客様がたどり着いてくれる、そうすると顧客自身もハッピーになれる、そういうのも一つの幸せかなと思います。

本日はありがとうございました。

まとめ

最新の世界の動きを追い、さまざまなフレームワークを駆使しながらも、顧客時間が一貫して大事にしているのは顧客体験であり、顧客の幸せを実現することによるビジネスの成長だ。顧客体験を中心に、企業が直面する4つのShiftと顧客時間がどう向き合い、どのように新たなビジネスを生み出していくのか。今後の展開に期待が寄せられている。


※本記事はNext Retail Labから許諾を得て元記事と同内容にて掲載しております。
Next Retail Labとは、所属している組織の枠を越え、産学連携で次世代のリテールやサービス業、地域コミュニティやマーケティングについて考えアクションすることを目的とし、緩やかにつながるシンクタンクコミュニティです。NRLでは、月に1度のペースでフォーラムを開催しています。

主催:Next Retail Lab
問い合わせ先
電話:03-6427-9470
e-mail:info@nrl-lab.net

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