【未来戦略コンサルタント藤元健太郎が考える】モビリティの未来
現在ライドシェアの解禁が話題になっている。コロナ禍によりタクシードライバーの離職が一気に進み,都市部においてはせっかくのインバウンド需要が旺盛にも関わらずタクシーの供給が足りていないことも理由のひとつだ。しかし,地方都市においてももっと深刻な状況が生まれている。人口減と高齢化により地域のバス会社,タクシー会社ではドライバーが足りない状況が進展しており,路線の縮小も進んでいる。ますます増加する高齢者の免許返納が進めば住民の移動が困難になり通院や買い物など生活環境そのものが維持できない状況が生まれつつある。同様にトラックドライバーの人手不足も深刻だ。2024年にはトラックドライバーの時間外労働の規制が始まることで一気に人手不足が深刻化することがすでに予想されている。こうしたではライドシェアの解禁などの議論だけでなく,もっと広く日本社会全体のモビリティをどうするかのグランドデザインとロードマップが必要な状況に来ていると言えるだろう。
何よりも重要なキーワードは自動運転だ。すでに米国ではUberがアリゾナで自動運転タクシーのサービスをスタートした。日本でライドシェア解禁の議論をしている間に本場のライドシェアは自動運転サービスと一周先に進んでいる状況だ。いずれはほとんどの大型モビリティは自動運転になることが予想される中で所詮ライドシェアは過渡的なものであるという前提で議論しないとグランドデザインは描けない。日本においても高速道路に自動運転専用レーンの設置などの検討が進んでいるが,個人的には専用レーンについては一気に広げることが難しく,やはり専用レーンよりは混在を前提に運行ルートが決まっている高速バスや路線バスなどからの自動運転化をどんどん加速させないといけない状況なのでは無いかと考える。初期の自動運転車は当然コストが高いため,人間の方がコストが安ければ普及の妨げになる。量産化してコストを下げるためにも大量の自動運転車を導入する自動運転車大国にならなければ日本の自動車大国の地位も危うい(すでにEV車競争で危うくなっているかもだが)。
さらに注目は低速自動運転車だ。街中で歩行者と共存できるような時速6Kmや車道でも20Kmでパーソナルモビリティや宅配運搬車としての利用が想定されている。ちょっとした移動や物流の利便性が高まれば,住宅の駅近などの概念も変わる。
こうした移動手段の変化は街作りにも大きな影響を与える。MaaSや自動運転車の普及は自家用車を劇的に減らすため,街の中の駐車場が減少することが予想される。ある調査では街の中の1/3が駐車場に占められているという調査結果もあり,駅前の貴重な場所に多数あるこれらの駐車場を別の用途に転用できるようになれば有効利用できる新しい土地が生み出されることになる。車道も効率化できることで車道を歩行者とパーソナルモビリティが走行する道へと変更するところも増えるだろう。まさに車中心から人中心の都市設計に変わることになるのだ。自動運転による移動型店舗などが増加すれば昼と夜や平日と休日などで街の景色が大きく変わるダイナミックな空間活用も普通になる。さらに未来にはドローンによる空飛ぶ車も普及し,これまで当たり前であった我々の街の景色は様変わりすることになるだろう。
藤元健太郎
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