物流業界の市場動向 - 成長分野と物流の枠を超えた新規事業の開発

グローバルでは、人口の増加や経済発展に伴うGDPの伸長を背景に、国際物流が拡大しています。世界の輸送・物流サービスの市場規模は2024年に約11兆4,000億米ドルとなり、2030年までに7.6%のCAGRで成長すると予測されています。

一方、日本国内の物流市場に目を移すと、サプライチェーンのグローバル化やオンライン取引の増加による荷物量が増加する一方で、物流2024年問題で注目された労働力不足や就業時間制限、燃料費の高騰、国内産業の縮小などのマイナスの影響を受け、物流業界は成長と停滞が混在する状況になると予測されています。

このような市況下において、物流企業がどのような取り組みを進め、今後どのような方向性を見出しているのでしょうか。
本記事では、物流業界市場レポートとして、同業界のトレンド、業界構造、主要企業の現在の取り組み、事業計画をもとに、今後の動向をまとめていますので、ご参考としてください。

国内物流市場の動向

物流は、大きく陸運・海運・空運の運送手段に分けられ、ここに倉庫業を加えて市場が構成されています。

国内物流業界の営業収入構成比では、陸運の中でもトラック運送業が67.7%(2019年度実績)と最も高い構成比となっています。次いで、外航海運業が11.4%、倉庫業8.1%となっています。
物流の2024年問題を受けて、各社が陸運一貫の配送体制から、鉄道輸送や海運を組み合わせたモーダルシフトを進めているため、今後はこの構成比が変化していくことが予想されます。

物流の6大機能と新たな付加価値

物流サービスは、6大機能で構成されています。6大機能とは輸配送、倉庫保管、流通加工、梱包・包装、荷役、情報管理です。これら6つの機能が連携することで高い物流サービスの提供を実現しています。

情報管理は、以前から取り組みが進められてきたロジスティクス4.0においても注目されており、物流2024年問題への対策を経て、物流業務の効率化、品質向上、業務標準化の観点で重要度が増しています。

さらに、近年注目されている3PL(Third Party Logistics)では、これらの従来機能に加えて、コンサルティング(物流戦略立案・計画策定)、外部への物流システムの提供というソフト面の機能、あるいは、環境負荷低減や静脈物流という物流機能の付加価値も求められるようになっています。

▽3PL(Third Party Logistics)に求められる新たな機能
・顧客企業のサプライチェーンにおける課題・ニーズの把握
・物流戦略・計画の策定
・物流システムの設計、あるいは物流システムの提供
・配送・倉庫業者などとの契約管理
・GHG排出管理と削減ノウハウ
・返品や産業廃棄物に係る静脈物流(運送、トレーサビリティ)

主要企業の実績概況

物流企業の全体売上(連結)では、日本郵船が売上高トップ(2兆5,103億円、2023年度)、次いでNIPPON EXPRESS HD、ヤマトホールディングスと続きます。前年の2022年度はNIPPON EXPRESS HDが2兆6,187億円と、僅差で日本郵船(2兆6,161億円)を上回っていましたが、2023年度は両社ともに減収となり、特にNIPPON EXPRESS HDが重点5産業いずれにおいても計画を下回る結果となっています。

営業利益率(2022年度)では、売上高上位企業を抑えて、飯野海運(14.0%)、NSユナイテッド海運(13.0%)の専業海運2社がTOP2にランクインしています。当2社は従業員一人あたり付加価値額(営業利益ベース)でもTOP2となり、収益力の高さが窺えます。

次いで、住友倉庫(22年度までは海運事業を計上)、上組、日本郵船と続き、海運に係る企業が営業利益率上位5社を占める結果となっています。タンカー中心の飯野海運、ドライバルク船中心のNSユナイテッド海運、日本貨物航空(NCA)を売却した日本郵船と、強みとする事業へ資源を集中させることで高い利益率を確保していると考えられます。

主要物流企業のバリューチェーンの強み

物流大手3社は、物流ネットワークの規模拡大・細分化により強靭な基盤を構築しています。得意とする物流領域(陸海空)へ注力することで事業成長を成し得ていることが窺えます。

NIPPON EXPRESS HDをはじめとした多くの物流企業では、陸路一貫輸送ではなく、鉄道輸送や海上輸送を組み込むモーダルシフトを進めていますが、国内の物流2024年問題への対策だけではなく、グローバル物流網においても、コスト高騰、人材不足、脱炭素問題、自然災害等によるBCP対策としての成果が期待されています。

国内を主戦場とするヤマトホールディングスでは、物流2024年問題ではラストワンマイルの業務効率を高めるために、置き配だけではなく、日本郵便との協業、物流マッチングによる共同配送など、新たな取り組みを進めています。

物流業界の成長分野と、物流の枠を超えた新規事業の開発

地政学や自然災害などのリスクが抱えならがらも、グローバルでは物量の増加により成長が見込める物流業界において、各社はどのような取り組みを行い、そして今後どのような計画を立て未来へ向かおうとしているのでしょうか。

ここからは、主要3社を対象に、セグメント別の実績、事業計画、投資計画を確認しながら、今後の物流業界のビジネスの方向性を探索していきます。

本記事の続きは、詳細資料「物流業界市場レポート ~物流業界の成長分野と、物流の枠を超えた新規事業の開発」をご覧ください。

資料は以下よりダウンロードいただけます。

物流業界市場レポート

■市場動向サマリ
■市場全体の動向
・物流市場規模、推移
・物流市場の基本構造
・物流DXの導入状況、取り組み事例
・物流企業売上ランキング

■ 企業比較:事業実績
・企業基本情報
・売上高(全体、セグメント別推移)
・営業利益(全体、セグメント別、一人当たり付加価値額)
・バリューチェーンの特徴
・物流2024年問題への対応例

■ 企業比較:経営計画
・中期経営計画
・投資計画(投資分野と金額)
・新規事業計画

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Mikio Aaskawa

マーケティングエージェンシーや制作会社にて各種リサーチ・分析業務を経験した後、2009年よりD4DRのシニアアナリストとして、データドリブンのマーケティング支援に従事。現在はプリンシパルとなりプロジェクトリーダー兼アナリストとして、顧客視点で企業のマーケティング戦略立案や課題抽出、アクションプラン立案を支援している。

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