COVID-19でテクノロジー活用は広がるか
~FPRC Fortnight Feature(FFF)20年4月上旬号~

 毎月2回、FPRC研究員が国内外のニュースを取り上げ、独自の目線で読み解く「FPRC Fortnight Feature(FFF)」。2020年4月上旬号として、5G関連の動き、世界各地でCOVID-19対策に活用されているロボット、自動運転などに関するトピックスをお届けいたします。

AI・5G

・4/7「人手不足の交通整理員もAI化 安価になった映像解析」
 〈https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57185110U0A320C2000000/

 AIによる画像解析が高度化し、状況に応じた臨機応変な対応を必要とする場面にも活用されるようになってきている。記事で紹介されている交通誘導AIは、車や自転車、歩行者などをほぼ100%の高い精度で認識でき、状況に応じて柔軟に交通誘導ができる機能を持っているという。まだ「ミミズと同じ程度」の知能しか持たない[1]と言われることもあるAIだが、分野によっては人の仕事を代替できるまでに進化している。 https://www.wuwm.com/post/ai-intelligent-earthworm#stream/0

・4/1「ソフトバンクとKDDI、地方での5G網整備で合弁設立」
  〈https://jp.reuters.com/article/softbank-kddi-5g-idJPKBN21J4GW

 3月末に、日本でも第五世代移動通信(5G)サービスが開始した。現段階では対応エリアが限られているが、サービス提供各社は早期の全国展開を目指す方針を明らかにしている。ソフトバンクとKDDIは地方での5Gネットワークの早期整備に向けて、基地局資産の相互利用を推進することを発表した。5Gは地方創生への活用も期待されている[2]。自動運転による交通機関を整備することで高齢者の移動をサポートしたり、農業に活用して第一次産業の人手不足を緩和することなどが想定されている。

・4/9「IT大手が注力する「ローカル5G」、新サービス開発加速のワケ」
  〈https://newswitch.jp/outline/21793

 通信キャリアが提供する5Gネットワークとは別に、企業や自治体が個別に構築し運営する「ローカル5G」のサービス開発が加速しているという。ローカル5Gは、地域や産業の個別のニーズに対応できることから、記事で紹介されているような工場、オフィス、交通機関のほか、建設現場や医療機関、エンタメ分野など幅広い領域での活用が期待される。

VR・AR

・4/7「『問い合わせ10倍』、イベント中止で企業殺到のVRイベント 魅力は「空間共有」にあり」
  〈https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01267/00003/〉 
・4/10「新型コロナ対策にVRキャンパスツアー 受験生が自宅で大学・専門学校を見学できる」
  〈https://www.j-cast.com/trend/2020/04/10383987.html?p=all

 COVID-19の流行により、人が集まらない形式で質の高いコミュニケーションを実現するテクノロジーに注目が集まっている。VRを活用したイベントや会議を開催するサービスはその一つである。VRを活用すれば、テレビ会議システムや映像を利用する場合に比べ、よりオフラインに近い体験ができる点が評価されていると考えられる。将来的には、アバターロボットとVRや触覚を伝える技術などを組み合わせて、遠隔からまるでその場にいるかのような体験ができるようになることも期待される。COVID-19の影響で大きな影響を受けているスポーツや音楽、舞台などの分野でも、人が集まらずにライブ感を味わえるイベントが開催できる可能性がある。しかし、必要な設備を整えるハードルが高いなど、実現へは課題が多い。

エネルギー・資源

・4/2「米 シェールオイル企業が初の破綻 原油価格の急落で」
  〈https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200402/k10012363591000.html
・4/10「OPECとロシア、減産で合意 減産量は需要減分を下回る」
  〈https://www.cnn.co.jp/world/35152184.html

 原油価格の急落により、米国シェール関連企業は大打撃を受けている。COVID-19の影響による需要減とOPECとロシアなどの産油国との減産合意が打ち切られたことによる供給過多が原因。4/10にOPECとロシアで減産合意が決まったが、減産量が需要減分を上回らないかつ、コロナが長期化し需要の戻りが鈍くなると予想されるため、原油価格は今後も下がるだろう(4/20には、米WTI原油先物は暴落し、史上初のマイナスとなった(一時-40.32ドル)https://toyokeizai.net/articles/-/345758)。2014年の逆オイルショック時にも話題を呼んだジャンク債(シェール関連会社は社債で資金調達をしているところが多い)の崩壊が現実のものになり、金融市場へ大きな影響を与えかねない。

・4/14「石炭火力の新規融資停止 みずほ、50年に残高もゼロに」
  〈https://r.nikkei.com/article/DGXMZO58039820U0A410C2MM8000〉
・ 4/15世界の電力の1/3は再生可能エネルギーになりました
   <https://www.gizmodo.jp/2020/04/renewable-energy-set-a-major-record-in.html

 邦銀でも脱石炭の動きが見られた。4/14にみずほFGは石炭火力発電所向けの新規融資をやめると発表し、残高を段階的に減らし、2050年度までにゼロにするとした。また、三井住友FGも同様に融資を控える方針を出す予定である。欧米の金融機関が気候変動対策について先行しており、昨年11月には欧州投資銀行が2022年以降化石燃料に関する事業への融資を停止すると発表している。

 世界的に再生可能エネルギーの割合が伸びている。世界のエネルギーの1/3が再生可能エネルギーとなったとIRENA(国際再生可能エネルギー機関)が発表した。日本でも上記のように石炭火力への新規融資がなくなるなど、気候変動対策への意識高まりつつある。しかし、日本の再生可能エネルギーの割合は2017年で約16%、2030年度では22~24%を見通しているが、その他の先進国とは大きな差が存在している。世界とのギャップを埋めるためには、発電コストの低減や送電線の最適活用など、より一層の取組みが求められる。

ロボティクス

・4/13「マレーシアでロボットが新型コロナウイルス患者の入院病棟を巡回」
  〈https://www.channelnewsasia.com/news/asia/covid-19-robot-malaysia-iium-hospital-health-coronavirus-12636944
・4/13「ベトナム科学技術省、医療サポートロボットを発表―新型コロナ隔離施設に導入へ」
  〈https://www.viet-jo.com/news/social/200408221412.html
・4/3「チュニジアでロックダウン下の警備にパトロールロボットを使用」
  〈https://www.bbc.com/news/world-africa-52148639
・4/13「香港国際空港、「インテリジェント殺菌ロボット」配備。非臨床現場へ初導入」
  〈https://news.yahoo.co.jp/articles/b991f6debeccf1ebdc9fd80d8a982503688ecc8f

 世界各地で、COVID-19対策にロボットを活用するさまざまな事例が報じられている。医療機関で医療従事者に代わって働くロボットや、街で警備を行うパトロールロボット、公共交通機関の消毒を行うロボットなどが導入されている。マレーシアの病棟巡回ロボットとベトナムの医療サポートロボットは、カメラと画面を備え患者と医師がロボットを介してコミュニケーションを取ることができる。それに加えて、ベトナムのロボットは隔離施設で食事や日用品などの運搬、投薬も行えるという。チュニジアのパトロールロボットは、ロックダウン下の街を歩く人のIDや書類の確認を行う。

・4/9「【飲食店の新型コロナ対策】居酒屋に配膳ロボットを導入 調理・配膳ロボットが人との接触を減らし、業務の自動化を推進」
  〈https://robotstart.info/2020/04/09/style-peanut.html

 日本では、飲食店で感染予防策として自動配膳ロボットを導入している事例がある。また、4/10には株式会社ZMPが自動走行して警備と消毒を行えるロボットを発表した[3]。日本でも今後、OVID-19対策にロボットを用いる動きが広がるかもしれない。

 COVID-19対策を機に、世界的にサービスロボットや運搬ロボットの実用化が加速する可能性がある。自律走行型の運搬ロボットは、ドローンなどと組み合わせることで宅配サービスの無人化を実現できると期待されている。物流業界は外出自粛等の影響でネット宅配などの需要が急増し、人手不足が深刻化しているが、将来的には運搬ロボットの活用がその解消に貢献できる可能性がある。

モビリティ・MaaS

・4/8「ホンダなど、今夏にも自動運転車市販へ 改正法施行で」
  〈https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57774800X00C20A4XA0000/

 4/1の改正法施行により、日本で自動運転の「レベル3」が解禁された。レベル3は特定の場所で操作が自動化される段階で、乗車する人は前方を監視する必要がない。ホンダは2020年夏に、レベル3自動運転車を発売する計画で、トヨタ自動車はレベル2以上の投入を検討しているという。今回施行された改正法は2019年5月に成立したもの。2019年には改正法の成立を受けて、各地の自治体で自動運転バスの実証実験が実施されていた。すでに茨城県境町では定常運行での実用化が予定されている[4]。自動運転バスは、高齢化・過疎化が進み、運転手の人手不足が問題となっている地域での公共交通インフラの維持に貢献することが期待される。

4月に入り、COVID-19流行が社会の様々な領域に与える影響が深刻化している。患者の増加で医療現場は逼迫し、人と人との接触制限は移動・消費を激減させ多くの産業に打撃を与えている。そのような状況に対応して、感染リスクが高い場所で人に代わって働くロボットや、遠隔でもオフラインにより近いコミュニケーションを実現できるデバイス・通信ネットワークなど、人同士の接触を減らすことを助けるテクノロジーが各地で活用されている。しかし、そのような取組はあくまで一部の地域や分野にとどまっており、成果を多くの人が享受できるほどテクノロジーが社会に浸透するにはまだ時間がかかると考えられる。COVID-19の影響は短期間にとどまらないであろうこと、収束後も感染症の世界的流行が繰り返される可能性があることを考えると、テクノロジー活用をどう普及させていくかを含め、新たな社会構想を長期的な視点で検討する必要がある。

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