【イベント報告】メガネスーパーV字回復の秘密と次の一手 ~店頭に向けたデジタルの武器とは~(第17回NRLフォーラム)

2018年9月27日、D4DRが運営・企画に携わる「Next Retail Lab(ネクストリテールラボ)」フォーラムの第17回が開催されました。今回の講師は、株式会社ビジョナリーホールディングス 執行役員 デジタルエクスペリエンス事業本部本部長 川添隆(かわぞえたかし)さんです。

画像1: メガネスーパーV字回復の秘密と次の一手 店頭で使うデジタルの武器(ネクストリテールラボ 第17回)

川添さんは、EC事業を5年で4.4倍、注力する自社ECは8倍に拡大させた実績をお持ちです。この日のテーマは、「メガネスーパーV字回復の秘密と次の一手 ~店頭で使うデジタルの武器」でした。メガネスーパーでやってきたことと、今後行おうとしている施策についてご講演いただきました。

V字回復の決定打

度付きメガネとコンタクトレンズをECで販売することは、それぞれ異なる理由により難しい、と川添さんはいいます。度付きメガネは、指定したレンズの見え方が違和感がないか、ということをその場で試せないためEC販売が難しく、コンタクトレンズは、在庫リスクがないためECで売ることに適していますが、価格競争が熾烈であるため市場参入が容易ではありません。

では、メガネスーパーの業績V字回復の過程において、ECをどのように急成長させたのでしょうか。川添さんが紹介した12個の決定打のうち、いくつかを挙げます。

 
画像2: メガネスーパーV字回復の秘密と次の一手 店頭で使うデジタルの武器(ネクストリテールラボ 第17回)

一つ目は、「当日配送対象商品」や「5千円以上で送料無料」といったユーザーが本当に知りたいことを全面的に押し出したことです。

二つめは、メルマガ配信を週1回から週13回に変更するなど、いつでもユーザーが購入するためにアクセスできる状態をつくったことです。メルマガ配信を増やしたことで、メルマガ経由売上は約11~15倍にまでなりました。

三つめは、定期便やショートカット注文、リピート注文など、注文を簡略化したことです。EC会員を対象にしたアンケートによると、メガネスーパー公式通販サイトを利用する最大の要因は、注文が簡単であることでした。

エクスペリエンスのオムニチャネル化

川添さんには、ECの成長だけでなく、最重要チャネルの実店舗に貢献するための次の一手についても語っていただきました。
メガネスーパーのECやアプリはあくまでも補完チャネルという位置づけですので、デジタルコミュニケーションの入り口となるコーポレートサイトでは「来店予約」の仕組みを導入することで、顧客には「お待たせしない体験」を提供し、店舗では「時間における最適な人員配置」を行えるようにしました。限られたスタッフの人数で、充分な検査と接客をするには、時間をコントロールする必要があります。来店予約のページでは、混み合う時間を表示して、応対しやすい時間に予約をしてもらえるようにしています。さらに今後は、「店頭スタッフ自身にデジタルという武器を渡す」ことを目指しています。
講演後には、フェローや参加者の質問・ディスカッションが行われました。
そこで、川添さんが考える現状の課題について質問があり、その回答の一つにとしてメガネ店の入りにくい雰囲気があげられました。さらにディスカッションでは、美容院とメガネ屋が提携して、髪型が変わったときに似合うメガネを提供するサービスは流行るのではないかという少し奇抜なアイデアもでました。


本講演の冒頭部で、川添さんは、「まずは売れる店を作ることが大事で、集客はその後」と述べていました。私は、この言葉こそがメガネスーパーの業績V字回復の礎となったのではないかと感じます。今日、EC市場が拡大し、参入プレイヤーが増える中で、売り上げ向上や業績アップのための数々のマーケティング手法が登場しています。そのような状況だからこそ、ユーザー目線で使いやすいECをしっかり構築し、その後にECで得た顧客情報を集客に活用するといった「step by step」が、結果的に市場での差別化につながり、業績アップにつながる重要なポイントだと感じました。

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Sho Sato

D4DRアナリスト。Web分析からスマートシティプロジェクトまで幅広い領域に携わる。究極のゆとり世代の一員として働き方改革に取り組んでいる。

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