NRLオンラインイベントレポート:我慢ではなく変革の時 激動の時代をむかえたリテール業界(第四回)
【特集】アフターコロナ時代のビジネス戦略 とは
D4DRでは、今回の新型コロナウイルス(COVID-19)の流行を経て社会がどのように変化するか、そして各業界がどのような戦略にシフトしていくべきなのかを考察した「アフターコロナ時代のビジネス戦略」を毎週連載しています。
連載一覧
アフターコロナ時代にリテールに求められるものとは?
D4DRが企画・運営に関わる「Next Retail Lab(ネクストリテールラボ)」フォーラムが、オンラインで開催された。
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の発令により、小売流通業界は休業を余儀なくされるなど大変厳しい状況を迎えている。新型コロナウイルスの流行が一段落しても、消費者のマインドの変化を受け、ビジネスモデルの転換が必要となるだろう。
今回は「アフターコロナ時代にリテールに求められるものとは?」をテーマに緊急討論が行われた。オンライン参加者は180名を超え、非常に注目度が高く受け止められた。
オンライン開催で今回は多くのフェローも駆けつけ、様々な視点でアフターコロナ時代のリテールのあり方を提言、問題提起を行った。
【フェロー一覧】
奥谷孝司 オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員 COCO
川添隆 ECエバンジェリスト/株式会社ビジョナリーホールディングス 執行役員
逸見光次郎 株式会社CaTラボ 代表取締役
川連一豊 JECCICAジャパンEコマースコンサルタント協会 代表理事
高野一朗 フリーランス 代表
高橋理人 株式会社マッシュプラス 代表取締役
坂野泰士 有限会社シンプル研究所 代表
村山らむね 有限会社スタイルビズ 代表取締役
石郷 学 株式会社team145代表取締役
島袋孝一 株式会社ヤプリコミュニケーション室マーケティングスペシャリスト
徳力基彦 noteプロデューサー/ブロガー
濱野幸介 プリズマティクス株式会社 代表取締役
樋口進 シンクエージェント 代表取締役
アフターコロナ時代のリテールにおける「4つのY」
ファシリテーターのD4DR藤元より、アフターコロナ時代のリテールにおける4つのYについて提示した。4つのYについての詳細は、以下リンクから参照いただきたい。
Traceability(トレーサビリティ)
商品やモノにユニークIDを付与し、それらがどこにあるかを常に把握するなど、業界共通のサプライチェーンを考えていく必要がある。
Flexibility(フレキシビリティ)
店舗の固定化リスクが、今回顕在化した。ポップアップ化はますます進展するだろう。
Mixed reality(ミクスドリアリティ)
アバターショッピングやMRショッピングなど、現在のECよりもさらに進化した高度な買い物体験が可能になる。
Diversity(ダイバーシティ)
内需生産の重要性が高まり、リテールも多様性が求められるようになる。
デジタル化の進展が比較的ゆっくりなリテール業界においても、デジタルを活用した抜本的なビジネスモデルの転換が求められる、と警鐘をならした。
近代最大の危機を迎えたリテール業界
藤元の提言を皮切りに、各フェローによる様々な意見が交わされた。共通して聞かれたことは、リテール業界が最大の危機を迎えており、ビジネスモデルの転換が求められているということだ。
新型コロナウイルスの感染状況や経済への影響は、今だに出口や終息の兆しが見えておらず、増加ペースの鈍化を迎えてから、感染「第2波」「第3波」など影響の長期化も懸念されている。
リアルへの依存度の高いリテール業界にとって、この事態の長期化は死活問題だ。
売り場としてのリアル店舗閉鎖の長期化はもちろん、顧客とのコミュニケーションや価値提供もリアル環境に大きく依存している状況で、デジタル環境での補完が十分にできていない。
アフターコロナ時代では、デジタルを活用したつながりにますます力を入れ、顧客と密なコミュニケーションを図っていく必要がより高まっていくだろう。
不可逆的な変化への序章
世界の変化スピードに日本はついていけるか?
最大の危機を迎えている反面、世界規模で大きく変化・進化をするチャンスをむかえたという声も聞かれた。世界が同時にこの危機を共有することで、普段では考えられないスピードで変化が起こり、新しいサービスがどんどん生まれるだろう。
しかし一つ懸念されるのは、そうした変化に日本企業が追い付いていけるかという点だ。日本人の美徳である空気を読みながら進める手法や、既得権の強さなどの日本独特の風土は、このような状況下では足かせとなり、世界から立ち遅れていく危険性がある。
アフターコロナ時代の生活者の価値観にリテール業界も追従せよ
非常事態宣言の発令により、私たちのライフスタイル、ワークスタイルは大きな変化を強いられている。外出自粛要請、業務のリモートワーク化、学校や施設の休校・封鎖など、私たちの行動は大きく変化している。こういった行動の変化は、私たちの価値観にどのような変化をもたらすのか。
今回私たちは「外出する」という行動に生死のかかった恐怖を植え付けられた。この恐怖の度合いは、それぞれの年代や居住地などに左右はされるものの、「外出する」の価値観変容をもたらしつつある。
消費者のリアルな体験に対する価値や希少性は高まるものの、外出における高い体験価値提供により注力していかなければならない。
デジタルシフトする消費者
リテール業界が取り残されないためには
今回の新型コロナウイルスの影響は、高齢層の購買行動にも変化をもたらしているようだ。高齢者の購買はデジタルシフトが進行し、デジタルや比較的新しいサービス(UberEATSなど)への受容も進んでいるという。
生産年齢層においてはリモートワークやオンライン会議など新しい働き方が一気に進み、オンライン飲み会を楽しむ人々も出てきている。このような層では新しい技術に対する需要がより急速に進むことが予想される。
リテール業界においては、バーチャル試着やリアル店舗の回遊カメラなど、新しい技術が需要され、リアルとデジタルをミックスした楽しいサービスや、合理性の高いサービス等が求められるだろう。
この消費者の過激なデジタルシフトに、リテール業界はついていけるのだろうか。
フェローからは、リテールにおけるデジタル浸透が進まない理由として「精神論」がハードルになっているとの意見もあった。このご時世では、デジタルやあらゆる技術を活用し変化をしていかなければ会社やお店を続けていくことは困難となる。今までのリテールの定義を捨て、新たな定義を作っていく意識が必要だ。
リテールのビジネスモデル変化
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の重要性はさらに高まる
今後のリテール業界のビジネスは、よりロングタームで考えられるようになるだろう。そうなったとき、顧客との関係性はより「つながり」が重視されるようになる。
新型コロナ以前においても、リテールは人口減少や購買力の低下などの要因から、新規顧客を大幅に増やすことは困難な業界であり、ビジネスモデルの転換が求められていた。
アフターコロナ時代ではそのスピードはさらに高まり、LTVがさらに重要視されることとなる。長くお付き合いできる顧客を大切にする必要性は高まり、そのために企業がその顧客と徹底的に向き合うことが重要となる。
顧客目線での価値提供を軸とし、LTVを評価基準とした新しいマーケティング戦略が必要となることだろう。
また財務面においても、新型コロナ流行前に重視されていたのが四半期ベースの売上や利益だったのに対して、アフターコロナ時代には顧客資産をより重視した経営指標が必要になる。ROAやROEを考える上でも、顧客資産の可視化と資産化といった考え方が必要になると思われる。
変化に対応し続けてきた老舗
コロナとの戦争に打ち勝つ
最後に代表の菊原氏の挨拶により、今回のNRLフォーラムは閉会した。
NRLでは老舗企業のオーナーをゲストに迎え講演することも多い。老舗企業が何百年ものれんを守っている背景として、ただ昔からあったものを守り続けているだけなく、常に変革に対応していく姿があった。直近では第二次世界大戦で人もモノもない時代を経験し、そのただなかにあっても変化を続けてきた。
今は新型コロナウイルスという見えない敵との戦争のさなか、また大きな変革・進化の時期をむかえているのではないだろうか。こういう時こそ、日本では企業の垣根を超え、知恵やアイディアを出し合い乗り越えていかなければならない。
次回「アフターコロナ時代のビジネス戦略」のテーマは「不動産・住居」、5/7(木)更新予定です。
※NRLの次回開催については、当サイトでも告知を予定しております。
アフターコロナ時代のビジネスに関連するサービス内容・お見積り等は、以下をご参照ください。
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最新記事公開の際にはFPRCのtwitterアカウントからも告知しておりますので、是非ご確認ください。
FPRCの主席研究員である藤元の記事が日経クロストレンド( @NIKKEIxTREND ) に掲載されました。https://t.co/Ant3AfCe6s
弊社HPでも「アフターコロナ時代のビジネス戦略」について毎週記事を更新しています。https://t.co/izP0hoIKm3
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本レポートでは未来予測年表をベースに、日々のリサーチ活動で得た情報の中で、未来予測に関連した事柄をピックアップし、コメントを記載しています。また、レポート前半には、特に大きな動きのあった業界や技術トピックスについてまとめています。先月のトピックスの振り返りや、先10年のトレンドの把握にご利用いただける内容になっています。
Yoshida
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