人生120年時代の到来とは?
人生120年時代の到来は、医療技術の飛躍的進歩による長寿化を背景に現実味を帯びている。従来の教育、労働、引退という単線的なライフステージから、個人のニーズや状況に応じた多様なライフプラン・ライフコースへの移行が進んでいる。教育システム、雇用形態、社会保障制度など、社会の基本的枠組みの再構築が求められる。また、長期的な人生設計や継続的な学習、複数のキャリアの構築など、個人の生き方にも大きな変革が求められる。
予想される未来社会の変化
- ライフスタイル・ライフコースの多様化
- 人生100年時代を見据えた教育・介護サービスの登場
- 教育や雇用制度、社会保障などの国の制度の見直し・定年の延長・撤廃
トレンド
フレイル推定AI
フレイルとは、加齢とともに心身の働きが弱くなった要介護の前段階を示す。介護費抑制などの観点から、早期発見・早期介入のニーズが高まっているが、対面診断や質問票を用いた既存手法では住民への幅広い調査が困難だった。
NTTドコモは、日常生活を通して誰もが健康を維持・増進できる世界の実現に向けて、自動的に取得できるスマートフォンログを用いたフレイル推定AI(人工知能)を開発。本技術により、少ない負荷でフレイルリスクを把握でき、また個人ごとに改善すべき生活習慣を特定し、行動変容につなげることが可能となる。
実証実験ではフレイル推定AIを利用することによる、フレイルリスク低減の有無を評価し、介入前と比較して平均で10%のフレイルリスク低減を認めた。フレイル推定AIの利用が、要介護状態に陥ってしまうリスクを低減し、健康の維持や増進に寄与する可能性が示唆された。
センテナリアン
1世紀(センチュリー)を生き抜く100歳以上の人は「センテナリアン」と呼ばれ、2050年に2023年比5倍の47万人となる見通しになっている。
超長寿社会を健康に過ごすための研究も盛んになっており、東京大医科学研究所の中西真教授(分子腫瘍学)は2040年をめどに老化細胞を除去する技術の開発に取り組んでいる。老化の一因とされる、細胞分裂しなくなった老化細胞が、近年、加齢とともに蓄積し、臓器や運動器に悪影響を及ぼすことが分かってきた。
中西教授は2021年、ある酵素が老化細胞を生き延びさせていることを突き止めており、酵素の働きを妨げる薬を使ったマウス実験では、筋力の回復や臓器の機能改善といった「若返り」効果を確認した。人への応用を目指す。
中西教授は「2050年頃には100歳まで働き、120歳まで余生を楽しめる世の中になっている可能性がある」と話す。
貢献寿命
かつては、平均寿命や健康寿命を延ばすことが長生きの価値の指標とされていたが、最近では生きることの幸せを感じながら歳を重ねるためには、身体的・金銭的な健康だけではなく、社会との接点や貢献感が重要であることが明らかになってきた。
この貢献感を得る期間は『貢献寿命』と定義され、幸せな晩年を送るためにはこの寿命を延ばすことが必要と考えられるようになっている。
近年の研究では、定年後に社会とのつながりを持つことが心身の健康を改善し、死亡率を低下させることが次々と示されている。
例えば、東京都健康長寿医療センター研究所の研究によれば、高齢者が児童に絵本を読み聞かせるボランティア活動を行うことで、海馬の萎縮が抑制されるという結果が得られた。これは、児童とのコミュニケーションが脳に良い刺激を与え、メンバー間での学びや議論が脳の活性化につながるからだと考えられる。
さらに、ハーバード公衆衛生大学院の調査によると、年間100時間以上ボランティア活動を行う人は、そうでない人と比べて死亡リスクが4割も低下することが分かった。
また、ニューヨークの病院に勤務し『最高の老後』の著書を持つ山田悠史医師は、「自分は歳だから」と思うのではなく、むしろ「新たな人生を始めるチャンス」と捉え、貢献できる場に積極的に参加することを勧めている。
・医療技術の発展を背景にロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授によって「人生100年時代」という言葉が提唱された
・2017年9月から人生100年時代を見据えた経済社会システムを創り上げるために日本政府で「人生100年時代構想会議」が複数回にわたって開催されている。政府は、長い人生をより充実したものにするために社会人の学び直しなど生涯にわたる学習が重要としている(出典:⼈⽣100年時代構想会議(平成29年11⽉内閣官房 ⼈⽣100年時代構想推進室) )
・定年の延長や撤廃により、現在の定年である65歳を過ぎても働き続けることが可能になる。また、その働き方は、雇用されて働くパターン(継続雇用、再雇用、再就職) 以外にも、起業やNPOなどの地域貢献型、協業労働やボランティアなど様々である
・株式会社ライフシフトは、人生100年時代に備えた新たな社員教育として企業内リカレント教育プログラムを提供している。キャリアアップに必要な要素として(マインド、知恵、仲間、評判、健康)を「変身資産」と名付け、それらを軸として必要な能力を体系的に学べるカリキュラムとなっている(出典:ライフシフト大学が企業内リカレント教育プログラムの提供を開始〜人生100年時代に備える新たな社員教育の形〜(PR TIMES) )
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