個人データの統合ID化とは?
公的サービスだけでなく、民間サービスも包括する形で、個人データの統合ID化が進んでいく。「World ID」のような統合システムにより、1つのIDで公的分野と民間サービスのシームレスな連携が可能になり、より個別化された効率的なサービス提供が実現する。個人データの統合ID化は、行政のあり方や個人のデジタルアイデンティティの概念を根本から変える可能性を秘めている。
予想される未来社会の変化
- 行政サービス、医療、金融、教育など、様々な分野のデータが一つのIDで連携される
- 個人の行動履歴やプリファレンスに基づく、高度にパーソナライズされたサービスが一般化する
- 個人の信用スコアが統合IDと結びつき、社会生活の多くの側面に影響を与える
- 国境を越えたIDの相互運用が進み、グローバルな個人認証システムが構築される
- データポータビリティの権利が拡大し、個人が自身のデータを容易に移行・管理できるようになる
トレンド
総社市スマホ市役所
岡山県総社市とBot Expressは、総社市LINE公式アカウント上に開設された「総社市スマホ市役所」において実施した、PUSH型通知サービスによる給付金手続きについて、デジタルを積極的に活用し先駆的に「スーパーファストパス」を導入した。
スーパーファストパスとは、自治体からの郵送通知を待たず、住民自らがオンライン申請を行い、給付金支給につながる仕組み。
住民は、LINEで届く給付金情報を「確認」するだけで、手続きを完了することが可能になった。
利用した住民の97%が従来の方法より便利だと回答しており、99%が他の手続きにも拡げて欲しいと回答。また、サービス開始から1週間で約375人が登録し、登録者の最高年齢は91歳で、登録者の約2割が65歳以上となった。紙申請の事務処理が不要で業務負担も軽減された。
デジタル遷都
2022年2月に開始されたウクライナ戦争を契機に、デジタルテクノロジーと情報通信技術によって都市や社会の機能を移転する「デジタル遷都」が注目されている。
ウクライナは米軍や民間企業からの支援を受けてデジタルインフラを強化した。これにより、データを欧州各地のデータセンターに分散させ、被害を最小限に抑えた結果、民間と軍の活動を維持することに成功。特に、ウクライナ鉄道では米軍兵士と民間人のチームが悪質なマルウェアを駆除し、開戦時に100万人の市民が鉄道で避難することができた。
また、アマゾン・ウェブ・サービスが提供するAWSスノーボールを利用して、大量のデータを安全に転送することが可能となり、インターネット接続が難しい環境でもデータの移行が迅速に行われた。この技術により、短期間で膨大なデータがクラウドに移動され、特に厳しい条件下でも高いパフォーマンスを発揮した。
台湾でも2024年から3年間にわたり、税や医療、住民情報などの基盤データを友好国のデータセンターに分散保存し、攻撃を受けてもデジタル空間で行政機能を維持する方針を決定。さらに、英国とルクセンブルクの衛星通信会社と契約し、通信拠点を設けることで、有事においてもデータを集めて暗号を解除し、行政機能を継続させる計画が進められている。
このような動きに伴い、日本でも「デジタル田園都市国家構想」などを通じて、有事に備えたデジタル遷都によるリスク分散がデジタル庁で検討されている。
自治体が発行するデジタル市民ID「e-加賀市民証」
石川県加賀市は、観光客やワーケーション利用者など、市との関わりを持つ人々(関係人口)を増やすため、「e-加賀市民制度」を導入ている。
この制度では、訪問者がe-加賀市民サイトを通じてNFT形式の電子市民証を取得できる。市民賞の保有者は、専用コミュニティへの参加や乗合タクシーの利用、市内宿泊施設でのワーケーションサービスなど、様々な行政サービスを受けられる。また、マイナンバーカードだけでNFTの所持を確認できる仕組みも実装された。2024年には新たに500枚限定で特別なNFTを発行し、温泉旅館でのワーケーション割引や国家戦略特区の特例措置などの追加特典を設けた。
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