b-16 : 東アジアの高齢化

東アジアの高齢化とは?

東アジア(日本、韓国、中国、台湾など)では65歳以上人口の割合が急増しており、高齢化が世界で最も急速に進行している。この傾向は、労働力不足、社会保障費の増大、経済成長の鈍化、国際的な労働力の奪い合いの熾烈化など多くの課題をもたらす。
対策として、定年延長、年金制度改革、介護サービスの拡充、医療サービスの効率化、世代間連携の強化などが進められている。

予想される未来社会の変化

  1. 世界最大の高齢者市場が形成され、高齢者向けテクノロジー(シルバーテック)産業が急成長する
  2. 高齢者の就労促進のため、定年制が実質的に撤廃される
  3. ロボット介護機器などが普及する
  4. 各国で少子高齢化の社会問題化が加速し、日本のノウハウ・事例が参考とされる

トレンド

中国の生産年齢人口と高齢化率の推移見通し

出典:JETRO「中国の人口が減少、2023年にはインドが世界首位:国連予測」

国家統計局データベースによると、中国の生産年齢人口(15~64歳)は2013年の10億1,041万人をピークに減少した。2021年には9億6,481万人となった。また、生産年齢人口の全人口に占める比率も、2010年の74.5%をピークに低下。2021年は68.3%になった。

一方で、国連の「世界人口統計2022」では5歳ごとの年齢人口分布も推計している。そのデータ(中位推計)を加工して、基本的に5年刻みで今後の推移をみてみる。その結果、中国の生産年齢人口は、2022年に9億8,430万人。それが、2030年に9億7,245万人、2040年に8億6,663万人。2050年には7億6,737万人にまで低下するとした(図3参照)。つまり、2022年から2050年にかけて生産年齢人口が2億1,693万人減少することになる。

中国が持続可能な経済発展を遂げる上で、出生率の引き上げが急務となっている。そのために政府は、各種取り組みを進めている。例えば2021年8月には、「三人っ子政策」に転換を図っていた。2022年8月にも「積極的出産を支援する措置をさらに整備、着実に実施することに関する指導意見」を公表した。

韓国は日本よりも少子高齢化が深刻

出典:マネーワン「韓国政府は甘い。韓国は自身で予測するより早く消滅する」

2023年12月14日、韓国の統計庁が「将来人口推計:2022~2072年」を公表した。日本よりも韓国は少子高齢化問題が深刻になっている。2022年には合計特殊出生率が0.78まで落ち込んだ。

また、韓国では、「国籍離脱者」の多さが人口減少に拍車をかけているという見方もある。韓国法務部が公開している「国籍離脱者」の人数は2022年で1年間に「2万5,492人」であり、人口のおよそ0.05%にあたる。一方、日本の場合は韓国の2.5倍ほどの人口であるものの、国籍離脱者は多い年でも5000人に満たない。そのため、韓国は日本よりも早い速度で人口減少と少子高齢化が進んでいく可能性が高いと考えられる。

介護先進国・日本へ海外からの視察団受け入れ

介護先進国である日本は、世界から注目を集めており、各国から視察団が訪問している。

Glocal Solutions Japanは、2023年9月25日から29日までタイからの視察団を受け入れ、最先端のロボット導入施設の見学やセミナー、商談会を行ったことにより、日本企業の海外展開を支援。

タイでは、2021年の高齢者人口が約18%である一方、2040年には30%を超える見込みで、急速な高齢化が進行中である。しかしながら、国の社会保障制度が未整備であるため、タイの介護は日本より約20年遅れている。

視察団には、国立生産性協会FTPIやタイウェルネス研究団体、大手介護施設企業、建設業者などが含まれ、都市型介護施設を訪れ、介護ロボットや最新設備の見学、職員との意見交換を行った。セミナーでは、日本の介護の歴史を通じて、今後タイでも必要となる訪問医療と在宅医療の重要性について講演が行われた。最終日には、最新技術の医療展示会への参加と商談会が開催された。

また、マレーシアやイギリスからも視察受入れの依頼があり、今後の増加が予想されている。


・日本は2007年、65歳以上の割合が21%を満たし超高齢者社会へと変化。その後も高齢化は加速し、2030年には28%まで増加すると予測されている

・今後半世紀で世界の高齢化は急速に進展する。65歳以上の割合が2060年には17.8%にまで上昇すると見込まれる

・高齢化進行の速度については、高齢化率が7%を超えてからその倍の14%に達するまでの所要年数(倍加年数)を比較すると、イギリスが46年、ドイツが40年に対し、日本は24年と高齢化の速度は先進国の中でも格段に早い
しかしアジア諸国では、韓国18年、シンガポール20年と日本を上回るスピードで高齢化が進むと予想されている

・中国では長年続いた一人っ子政策の影響で世界でも類を見ないスピードで超高齢化社会に突入する。高齢者向けサービスの需要が高まり、AIや5G、IoTなどのハイテク技術を活用した介護・高齢者向けのサービスが増大している

第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題 (第3章内閣府)

・東アジア諸国の高齢化は、少子化と同時に起きている特徴がある。イギリスやアメリカは高い出生率を維持し、北欧諸国やフランスでは、社会保障政策による少子化対応を実施し、出生率を回復させている

 

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