五感の伝送技術とは?
五感の伝送技術とは、視覚や聴覚だけでなく、嗅覚、触覚、味覚といった感覚を遠隔地に伝える技術のこと。
よりリアルな情報を遠隔地から知覚できるようになり、医療・教育・エンタメ・マーケティングなど様々な分野での活用が期待されている。例えば、遠隔手術やリハビリテーション、遠隔教育プログラムでの実践的な体験の提供、ゲーム・映画などバーチャル空間でのよりリアルな体験などが可能となる。
予想される未来社会の変化
- 匂い、触感、温度感などの感覚情報がデジタル化・伝送可能となり、より没入感の高い遠隔コミュニケーションが実現する
- 感覚情報の記録・再生が可能となることで、思い出や体験の保存・共有の方法が変化し、新たな体験産業が発展する
- 医療現場での触診や、介護における身体接触を伴うケアが遠隔で実施可能となる
- 実験や実習、技能訓練が、感覚情報を含めて遠隔で実施可能となる
トレンド
Taste The TV(テイスト・ザ・ティーヴィー)
明治大学の宮下芳明教授の研究室では、任意の味を表現できる味覚ディスプレイ「Taste The TV(テイスト・ザ・ティーヴィー)」が開発された。
味覚センサーの測定値に基づき、味を形作る液体や香料を調合し、任意の味を再現した液体を噴霧する。ディスプレイに映った食べ物の味を再現した混合液体を味見フィルムやトレーに噴霧すれば、液体を舐めることで画面に映る料理の味を感じる味覚ディスプレイとなる。
アルコールの風味や辛味、香りの付与も可能であり、対象の食べ物や物体に任意の味を噴霧して味を再現し楽しむなど新たなフードスタイルを提供できる可能性がある。
将来、味見できるメニューの開発や、味のするテレビなど、映像や音声の伝送とともに味覚も伝送する次世代の味覚システムの開発が期待される。
協働ロボット用感触伝送遠隔操作ユニット(URH)のStarlink対応
慶應義塾大学発ベンチャーのモーションリブは接触感や力加減を伝えられる遠隔操作技術「協働ロボット用感触伝送遠隔操作ユニット(URH)」を開発。
URHは、2台のユニバーサルロボットを組み合わせた、6自由度の有線遠隔操作システム。物体との接触感や人の力加減といった情報を遠隔地に伝送できる制御技術「リアルハプティクス」に対応し、触覚が必要な繊細な作業でも遠隔化できる。危険作業の遠隔化による安全な就労、身体障害などで移動に制限がある方の就労などへの活用を想定している。
また、URHをSpace Exploration Technologies(SpaceX)の衛星インターネットサービス「Starlink」に対応させたことで、これまで5Gネットワークや高速インターネット通信網を介して感触情報を伝送する必要があったが、インターネット網の構築に課題のある建築や土木、農業、林業といった環境でも「感触の伝わる遠隔作業」が可能になった。
フィールテック™️
NTTドコモ、明治大学総合数理学部 宮下芳明研究室、H2Lはドコモが開発した「人間拡張基盤」と、宮下芳明研究室とH2Lが研究開発した味覚を再現する技術を連携し、相手の感じ方に合わせた味覚を共有する技術「フィールテック™️」を開発。
人それぞれに感じ方の異なる味覚を、相手の感じ方に合わせて味覚を調整した液体を味わうことで「味覚を共有する」というしくみになっており、この基盤技術の開発は世界初となっている。
事前にタブレットを使って、自分の生活習慣(喫煙や飲酒など)や、味覚の好みに関する約25項目の設問アンケートに応え、個人的な嗜好を判定し、味覚の感度に対する個人差を推定して共有する「人間拡張基盤」に登録する。そして、伝えたい味をセンシングデバイスで分析・数値化したものと、共有する相手の味覚の感じ方を、約25項目のデータをもとに人間拡張基盤上で独自アルゴリズムを用いて推定し、それらをアクチュエーションデバイスを通じて、相手に伝えたい味を再現。アクチュエーションンデバイスでは、味の基本となる五味(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)を味覚の標準液が用いられる。
・生物の嗅覚構造は複雑であり、人間には匂いの受容体が350種類あるとされる。一方、匂い成分は40万種類あるとされ、他の感覚とはデータ量の規模が膨大で、未開拓の分野となっている
・東京工業大学は嗅覚センサーで匂いを数値化し、それを元に32種類の要素臭を混ぜ合わせて、再現する技術を開発した
・ソフトバンクは、モノを持った時の固い、柔らかいという感覚の力触覚情報を、無線通信を介して伝送する実証実験を行った。
4Gでは通信遅延により正確に情報を伝送できなかったが、 5Gでは高精度の力触覚の伝送、再現に成功。これにより、5G通信技術を使って、繊細な力加減を必要とするロボットの遠隔操作が可能になるとしている
・NECは様々なにおい成分を判別する「嗅覚IoTプラットフォーム」を
研究している。
ガス分子による変化パターンのデータを、クラウド上に蓄積していき、判別エンジンが学習を行い匂いを判別する仕組み。応用分野として、下記をあげている
①ヘルスケア:呼気や体臭による体調管理
②食品:においによる果実の成熟度判別、家畜の体調管理
③環境:ホルムアルデヒドなどの検出
④安全、セキュリティ:設備のヘルスモニタリング
・BMIの発展により、直接脳に匂いの情報を伝達することも可能となる
\未来コンセプトペディアを活用してアイデア創出してみませんか?/
新規事業・新サービスアイデア創出ワークショップ
新規事業立ち上げの種となるアイデアを創出し、新たな領域への挑戦を支援します。