3Dフードプリンター・調理ロボットとは?
3Dフードプリンターとは、3Dプリンティング技術を用いて食品を造形する機器のことで、ペーストやゲル、リキッド状の食材をノズルから押し出し、設計通りに積層することで立体的な形状の食品を作り出す。
3Dフードプリンター・調理ロボットはコンシューマー向け家電として普及し、レシピ、食材、健康管理などと関連した統合的なサービスとしての供給・利用が拡大することが予想される。
予想される未来社会の変化
- 食のカテゴリー分化が進む(従来型の高度なサービスや環境を伴った外食、簡便・廉価で比較的高品質な外食、個人宅内での加工と連携した中食など)
- 外食において、料理そのものよりもサービスや雰囲気を求める客が増加する
- 個人の健康状態、栄養ニーズ、嗜好に対応したカスタマイズ食がボタン一つで製造可能になり、パーソナライズド栄養管理が一般化する
- 有力シェフや料理研究家などのフードデザイナーの地位が向上し、ブランド化されたサービスが増加する
トレンド
3Dフードプリントしたサステナブルデザート
Byte Bitesは3Dフードプリンターを活用し、「NEO新宿 アツシ」にて、フードロス食材を活用したデザートの製作・監修を行った。
廃棄予定の規格外野菜や、調理工程でロスが発生する葉野菜の根をベースにしたクリームデザート。3Dフードプリンタを用いることで、廃棄されてしまう食材をリデザインし、新たな料理に昇華した。形状は「循環」をモチーフに製作しており、3Dフードプリンタの造形を生かした文字プリントの提供も行った。
「Byte Bites」のパティシエが調理・味を考案し、クリームのレシピを元に、配合や形状など何度も試作を重ね出来上がった、特別感のあるものになっている。
協働ロボットを活用した食品3Dプリンタでの調理
IHIエアロスペースは、協働ロボットを用いた食品3Dプリンタの技術をデモンストレーションした。この技術は、航空機エンジン部品の製造において使用されているロボットの塗装技術を応用したもので、将来的には宇宙ステーションでの調理器具としての利用を目指している。
デモでは、Dobotの協働ロボットにノードソンのジェットディスペンサーを取り付け、煮物和風ジュレやフルーツの盛り合わせなど、4種類のサンプルを約10分で造形した。
使用されたシリンジには、4種類のフードインクが層状に入っており、下から順番に吐出することで多様な造形が可能。協働ロボットは、ディスペンサーの先端にフードインクが固まらないように定期的に拭く動作を行い、さらにフードインクの種類が切り替わる際には、造形した食品を固めるためにヒーターで加熱する。
食材の開発には十文字学園女子大学が協力しており、元の食材のパウダーに増粘多糖類やゲル化剤、水を加えることで、各食材の硬さや付着性を均一にし、異なる食材を同じシリンジに入れても混ざらないようにしている。今回使用された食材は、いちご、ブルーベリー、レモン、生クリーム、こんにゃく、里芋、人参など16種類あり、今後は食材の食感や味の向上にも取り組む予定。
3Dフードプリンターで介護食づくり
山形大学理工学研究科では硬い樹脂ではなく、ゲルなど柔らかい素材を活用して食品を製作する「3Dフードプリンター」を開発した。同じ見た目でも食感や栄養素の異なる食品を作ることができ、介護食や病院食への応用に向けて研究・開発が進められている。
摂食嚥下機能が低下した人にとって、家族や入居者たちが集まって食事をしているときに、自分だけペースト食など見た目が違う食事を食べることは心理的抵抗感があり、食欲低下にも繋がる。
また、介護食を作る家族や職員にとっても、食事を作った後にミキサーにかけたり、内容に合わせてゲル化剤を調整したりするなど調理の負担も大きい。
3Dフードプリンターを活用し、同じ見た目でも利用者ごとに柔らかさを調整した食事が作れれば、安心安全で楽しい食事が提供できるのではないかと期待されている。
また、3Dフードプリンターは3種類あり、メニューに合わせて使い分けることが想定されている。
・海外では小麦粉やソースをペースト化し、3D プリンターで作成したピザを提供するレストランが登場
・宇宙飛行士が宇宙空間でも新鮮なものを食べるため、NASAが研究を進めている
・料理を手軽に量産でき、介護施設や病院で個人の患者の好み、病状、その日の体調、必要な栄養素に合わせた料理の提供が可能となる。複数の料理を作る際の材料の無駄が低減され、コスト負担を抑えることができる
・調理ロボットは人間の手順を真似て調理を行うため、作業負担が
軽減される。また、プロの調理師を真似ることで、自宅でお店の
料理が食べられるようになる
・健康管理、食のアドバイス機能と統合することで、栄養バランスの 調整を行うことができるだろう
・3Dフードプリンターとエンタメ要素を付加したサービスが提供されている
・3Dプリンターでつくられた寿司を提供する「超未来すし屋」がオープン予定となっている。
予約完了時に利用者に専用のヘルスキットが届き、唾液で健康状態を把握。個人に最適な寿司を生成する仕組みとなっている
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