新規事業アイデア創出ワークショップ事例「短い時間で最大限効率よく視野を広げられたという実感がありました」(三井化学様)

従来の素材提供型ビジネスから社会課題視点のビジネスへと転換を進めている三井化学株式会社(以下、三井化学)。同社では、長期経営計画「VISION2030」のもと循環型社会・包摂社会・快適社会の実現を目指し、サービスやソリューションの開発に取り組んでいます。今回、新規事業アイデア創出ワークショップを実施したのはモビリティソリューション事業本部の新規事業開発担当チームです。

同チームでは、自動車だけにとらわれず、人の移動や情報の移動、あらゆるモノの移動をテーマとして、どのような事業があるとよいかを考えてきました。これまでは、担当チームのメンバーが普段の業務や日常生活の中でふと浮かんだ事業アイデアをまとめて蓄積していましたが、個人の興味や志向によってアイデアの分野に偏りがあることを課題として抱えていたそうです。

D4DRは、新規事業アイデア創出ワークショップを実施し、バックキャスティングアプローチによるアイディエーションをご支援しました。本記事では、新規事業開発チーム担当者の手嶋様とD4DRのプロジェクト責任者である藤元にプロジェクトの内容や感想を伺いました。

三井化学様が抱えていた課題(before)

自社で創出した事業アイデアには偏りがある
意識しても視野を広げることが難しい

 

D4DRが行なったこと

バックキャスティング考え方の共有
「移動・モビリティ」をテーマにした未来社会動向のインプット
未来コンセプトカードを使ったアイデア創出
アイデアの実現に向けたロードマップ作成

 

得られた成果(after)

個人の興味・志向に縛られない視野の獲得
バックキャスティング思考でのアイデアの創出
メンバーの普段の行動や意識の変容

社内で蓄積した事業アイデアに、どうしても偏りが出てしまうことが課題

ワークショップを実施する前は、どのようにしてアイデアを創出していたのでしょうか?

手嶋 業務として関わっている案件や普段の日常生活のなかで、ふとした気付きをすぐにアイデアとして形にすることをメンバーそれぞれで行っていました。パワーポイントの指定のフォーマットを活用し、1年間で100個以上のアイデアを蓄積していきました。

 

普段からアイデアを蓄積するなかで、どのような課題をお持ちだったのでしょうか?

手嶋 創出したアイデアの内容が、どうしてもメンバーの興味関心のあるテーマや取り組んでいる案件のテーマに偏ってしまいがちでした。一度チーム内で蓄積したアイデアを棚卸しした際に、特定の分野にアイデアが偏っていることが明確になりました。偏りのない、俯瞰的な視点でアイデアを創出するためにはどうしたらよいかが悩みのタネとなっていました。

 

新規事業創出ワークショップ実施前にどのような経緯があったのでしょうか?

手嶋 最初はイーロン・マスクの事業を俯瞰的に解説するワンチャートセッションについて問い合わせをしました。その際にD4DRの著書である「消費トレンド2040市場予測」のご紹介を受け、購入しました。購入理由は、新規事業開発に取り組む中で、モビリティだけではなく広く未来社会の動向を把握し、チーム全体で知識をつけておく必要があったからです。

 

書籍も購入いただいたなかで、新規事業創出ワークショップも実施した理由は何でしょうか?

手嶋 D4DRがワークショップで取り入れている「未来コンセプトカード」という未来の課題やトレンドが数多く書かれたカードがとても魅力的に見えました。普段のアイデア創出でも、視野を意識して広げようとはしていましたが、それには限界があると感じていました。

そこで、視野を強制的に広げるための手法として、未来コンセプトカードを使ったワークショップはとても効果的な手法なのではないかと感じました。また、D4DRが持つ未来社会に関する知見やノウハウを取り入れられることに対する期待もあったので、ワークショップの実施を依頼しました。

今までの取り組みとは違う切り口や考え方でのアイデア創出を実践

今回、取り組んだプロジェクトについて、教えてください。

藤元 今回のプロジェクトでは、「移動」をテーマとした新規事業アイデア創出ワークショップを2日間に分けて実施しました。

アイデア創出の前に実施したモビリティ・移動領域のインプット

 

1日目のワークショップでは、最初に視野を広げやすくするバックキャスティングの考え方を共有し、未来視点から移動やモビリティの領域がどのように変化していくのか、講義形式でインプットを行いました。その後、未来コンセプトカードを活用し、個人が考えるありたい未来社会の仮説を創出しました。

カードを掛け合わせてありたい未来社会の仮説を創出

 

2日目のワークショップでは、1日目で創出した未来社会仮説をもとにテーマを設定し、その実現に向けた変化要素や自社が取るべき短期的・長期的なアクションを洗い出したロードマップを作成しました。

1日目の未来社会仮説からロードマップ作成までの流れ

 

今回のプロジェクトで特徴的だったのは、すでに三井化学様が社内でアイディエーションに取り組んでおり、100個以上アイデアを蓄積していたことでした。ですから、今回のワークショップは単なるアイデア創出の場として提供するのではなく、今までの三井化学様の方法とは違った切り口や考え方で、アイデアを創出できることを意識したプログラム設計にしました。インプットのあと、すぐに事業アイデアを創出するのではなく、未来社会の仮説作成とロードマップの作成を行ったのはそのためです。

また、すでに未来社会の動向などについても学ばれていたので、それらを把握するためのオンボーディングの場を簡略化し、創出したアイデアをより深めていく時間を重視しました。

短時間でも効率よく視野を広げたアイデア創出が実現。メンバーの新しい側面の発見も。

実際にワークショップを体験して、印象に残っていることや成果を感じられることは何ですか?

手嶋 未来コンセプトカードを使って自分たちの視野を広げられることについては期待以上の結果でした。最初はカードの量の多さにびっくりしましたが、ジャンルごとに色分けされていることが、アイデア創出時に良い効果をもたらしていると感じました。

 

 

未来コンセプトカードや社会課題カードで社会課題として興味が内容を選ぶというだけではなく、生活者インサイトカードを掛け合わせることで、社会課題と日常生活の行動を繋げることもできました。

また、自分たちでアイディエーションしているときは、うーん、、、と悩んでしまうこともあったのですが、ワークショプでは短い時間のなかで最大限効率よく視野を広げられたなという実感がありました。

未来コンセプトカードを使うことで、メンバーの興味関心などが可視化されるので、「あ、そういう分野の内容にも興味があったんだ」と、今まで知らなかったメンバーの新しい側面を見ることができたこともとても印象深かったです。

ワークショップ後にメンバーのアイデア創出に対する意識の変容が起こった

ー 今後、今回のプロジェクトの内容を活用して、自社で取り組んでいきたいことなどを教えてください。

手嶋 今回のプロジェクトを通して、自分たちが普段見ている視野がとても狭いことを体感しました。チーム全体としても、普段見えている範囲だけではないところをどうやって取り入れるかを意識しながら、引き続きアイデアを創出していこうという話をしています。

今回のワークショップはどのような会社におすすめでしょうか?

手嶋 

何かを生み出すことが求められる製造業の担当者や、サービスや商品に関わらず常に新しいことを考えているマーケティング部門の担当者にとっては、とても魅力的だと思います。

また、商品開発をしている部署にもおすすめしたいです。普段から商品そのものと向き合う時間が多いからこそ、バックキャスティング思考で顧客視点や社会課題視点の側面から商品について考えることがいい刺激になるのではないかと思います。

 

 

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