Instagram分析事例!出店地域決定のためのマーケティングリサーチ(海外SNS動向)
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)はインターネットを使ったコミュニケーションとして、世界中に普及しています。日本では、周知のとおり、東日本大震災や熊本地震などの災害時に、携帯電話網に置き換わるような働きを見せ、コミュニケーションインフラとして機能しました。主要なSNSの一つであるFacebookは、月間アクティブ利用者数(MAU)が2018年6月時点で前年比11%増加の22億3000万人であったと公表しました(出典:https://ja.newsroom.fb.com/news/2018/07/second_quarter_results/)。
2018年6月に公表されたInstagramの利用者数データ(出典:https://techcrunch.com/2018/06/20/instagram-1-billion-users/)によると、MAU数は前年比25%増の10億人を記録し、これはInstagramの利用者が急激に増えていることを示しています。(図. 1)
(図. 1 InstagramのMAU数の推移
出典:https://techcrunch.com/2018/06/20/instagram-1-billion-users/)
Instagramは写真や動画の共有に特化したSNSとして知られています。日本ではInstagramに投稿した写真が、ひときわ見栄え良く映えるという意味で用いられる「インスタ映え」が2017年の流行語として選ばれ、話題となりました。Instagramは手軽にクリエイティブかつ美しい写真を撮影・投稿できるため、自身の体験をポジティブに発信できる場として活用されていると考えられます。
本記事では、Instagram上の画像データを活用した、マーケティング戦略の策定事例についてご紹介します。
ヨーロッパでピザの画像が多く投稿されているのはどの都市か?
ヴェネチアにピザレストランを構えるBella&Brava VENEZIA社は事業拡大のため、ヨーロッパで新店舗の出店を計画し始めました。しかし新店舗をオープンさせるにはどの場所が最適かわからないため、コンサルティング会社のOpenKnowledge社協力の下、TalkWalker社のSNSリスニングツールを使って、Instagramの分析を行いました。(図. 2)
(図. 2 ヨーロッパにおけるピザ画像投稿数の多少を表したヒートマップ。
2017年1月から8月までにヨーロッパ内(イギリスとイタリアを除く)で投稿された画像数から作成。
出典:Talkwalker社ケーススタディより)
最初に、OpenKnowledge社はBella&Brava VENEZIA社の特徴を整理し、Healthy、Made in Italy、Vegetarian、Veganの4つのクラスターに分けました。(図. 3)
(図. 3 Bella&Brava VENEZIA社 4つのクラスター)
次にOpenKnowledge社は、2017年1月から8月までのイギリスとイタリアを除くヨーロッパ内で投稿されたピザの画像を抽出し、分析をはじめました。ピザの画像が含まれる全投稿(454,500件)から、通りの名前がタグに含まれているもの(66,400件)を抽出して、どの都市のピザかを特定しました。その次に、投稿数が50件未満の都市を除外したところ、残った画像は30,165件で、82都市となりました。82都市での投稿について、その都市のピザの消費性向と上記の4つクラスターとの関係度合いを数値化し、Bella&Brava VENEZIA社が出店すべき、上位10都市を割り出しました。(図. 4)
(図. 4 OpenKnowledge社が行った、データ抽出方法の概念図)
どのような店舗・メニューを提供すべきか
次に、Talkwalker社の画像解析技術を用いて、上位10都市で投稿された画像から、どのようなシーンでピザが消費され、何と一緒に消費されることが多いのかを分析しました。画像解析の結果、ヨーロッパにおいて、大部分(72%)のピザは、バーかレストランで消費されていることが明らかになりました。また、ピザの消費シーンは都市の社会人口学的な多様性(観光客数や気候など)によって、変化することもわかりました。例えば、フランスのニースは観光客も多く、夏に雨が少ない地中海性気候で知られていますが、そういった都市では、屋外でピザを消費しているシーンが平均よりも多いことを発見しました(図. 5)。また競合他社がどのような店舗でピザを提供しているのかも知ることができます。これらの情報を整理して、消費性向に合った店舗設計をすることが求められます。
(図. 5 屋外でピザを楽しむ姿の投稿例)
さらに、ピザと一緒に頼んでいるものに注目すると、ヘルシーなピザ(バッファローモッツアレラピザ)を食べている人は、San Pellegrino社のミネラルウォーターを一緒に頼んでいることがわかりました。また、ある都市ではピザと一緒にカクテルを頼んでいる傾向がみられました。特にAperol Spritzと一緒にピザを消費しているシーン(図. 6)が多く投稿されており、進出する都市に合わせて提供するドリンクメニューをアレンジする必要がありそうです。
(図. 6 ピザと一緒にAperol Spritzをオーダーしている投稿例)
SNS分析から有益な情報を得るには
今回のInstagram分析では下記の3点について示唆を得ました。
・進出すべき都市
・ビジネスリスクの軽減(競合他社の把握・地域特性・嗜好性把握・店舗設計)
・メニュー開発の方針
このように、SNSを分析することで競合他社や消費性向などについて理解し、マーケティングに応用できます。しかし、分析の前に目的や手法を明確にしなければ、データの海に飲み込まれ、何を見ているのかわからなくなってしまいます。分析には専門知識が必要なため、効果的なSNSの分析を行うには、専門家と一緒に設計して行うのが一般的です。
D4DRでのInstagram分析事例
D4DRでは、今回紹介したInstagram分析事例と同じような分析サービスを提供しています。(図. 7)
(図. 7 D4DRで行ったビールの消費シーン分析の例)
図. 7は2017年の7月から8月までの二ヶ月間でInstagramに投稿されたビールブランドに関する分析です。各ブランドに関連する画像のみを抽出したのち、画像と投稿文から軸を設計し、広告から消費までの接触シーンを分類しています。体験シーンやプロモーションの比率や傾向を、競合他社と比較して、好ましい方向性を示唆・マーケティング戦略につなげるコンサルティングも行っています。
Muta
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