DX(デジタルトランスフォーメーション)に必要な4つの視点とは

DX(デジタルトランスフォーメーション)は、ゲームチェンジを図るディスラプターになることだけではなく、むしろ既存事業の成果を最大する余地の方が大きくあります。D4DRでは、デジタルトランスフォーメーション推進力の源泉はデータと位置づけ、顧客視点でのデータ活用を中心に、取り組みの押さえどころを紹介します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

「デジタルトランスフォーメーション」とは、直訳すると「デジタル変革」であり、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した「ITの浸透によって人々の生活をあらゆる面でより良い方向へ変化させる事」(出所:Wikipedia)と定義されています。
ITの中でも重要度が増しているのが、第3のプラットフォームとして位置づけられているクラウド、ソーシャル、ビッグデータ、モバイルの4つとされています。
もちろん手段が目的化してはいけませんので、D4DRでは、デジタルトランスフォーメーションとはつまり、ビジネス成果を達成するために、これらITソリューションを活用し変革を実現していく事と捉えています。

期待するビジネス成果

・新たな収益源の獲得
・内部リソースの再配置(単純なコスト削減ではない)による収益の増大
・継続的な収益の獲得

デジタル変革するコト

・ビジネスモデル
・業務プロセス
・顧客とのコミュニケーション

ここで触れた3つの変革するコトにあるように、デジタルトランスフォーメーションの出口は、必ずしもUberやAirbnbの様なディスラプターになる事や新たなビジネスモデルを作り出す事だけではありません。むしろ、デジタル化によって「見えなかった事を可視化する」あるいは「業務を自動化する」ことで既存事業の成果を最大する余地の方が大きいのではないでしょうか。

DX推進に必要な4つの視点

では、DXはどのように推進すればよいのでしょうか。

特定の業務効率を高めるために新たなシステムやツールを導入する事は非常に有意義な施策ですが、コンサルティング会社としての立ち場から一つ提案するとしたら、まずは一歩引いて、自社のビジネス環境を俯瞰する事から始めると良いでしょう。この際に、D4DRでは常に「顧客」を起点に組み立てていくことが重要と考えています。

ここでD4DRが考える、DXの推進に必要な4つの視点を紹介します。

  1. マーケティングの変化への対応
  2. 戦略的なデータ活用(新しく収集されるデータ、既存データの活用)
  3. データ活用による意思決定、アクションの最適化へ
  4. デジタルトランスフォーメーションを実現する組織

1.マーケティングの変化への対応

現在のマーケティングには大きな2つの変化が起きています。

一つ目の変化は、「顧客中心」へのシフトです。

企業収益の源泉は顧客(の財布)であり、商品は必要な手段、という視点です。「それは当たり前!」と思う方もいらっしゃいますが、ぜひ一度自社の実績評価指標(KPI)を振り返ってみてください。そこには、「顧客=人」の視点が含まれているでしょうか。「商品がどれだけ売れた」、「どのチャネルの実績が良い」という切り口だけで実績を捉えていないでしょうか。

「顧客中心」の視点に立つと、実績(KPI)の捉え方も商品単位から顧客単位に変化していきます。従来は「何がいくらで、いくつ売れたか」で評価していますが、「”誰が”、どのくらい、”どのくらいの頻度/期間”買ってくれたか」という視点が加わります。ここでいう”誰が”で特に重要なのが、自社にとっての優良顧客であり、「優良顧客が増え、継続的に収益をもたらしてくれる関係」を作っていくことが必要です。

モノ・サービス・情報過多の競争環境の中では、顧客のライフタイムバリュー(LTV)を高めていく事が、今まで以上に求められるようになってきています。

二つ目の変化は、「顧客の企業に対する関係性」です。

先に触れた重要度が増してるプラットフォーム「クラウド」・「ソーシャル」・「ビッグデータ」・「モバイル」の浸透により、顧客の企業との関わり方が変化しています。

その中でも商品に注目すると、商品のサービス化が進んできています。従来の消費は「商品を所有する」でしたが、「商品を利用する」という関わり方へと変化してきています。
旧来の例では、「楽曲はCDで購入する」だったことが、今では「月額料金を払って視聴する」が当たり前になっています。このようなケースがコンテンツビジネスだけでなく、耐久消費財(自動車等)・消費財(飲料など)を問わずに増えてきています。

ここで企業に求められる視点は、「商品を売る」という短期的な視点から、「顧客に継続的に商品を利用してもらう」という「顧客中心の中長期的な視点」であり、最終的には顧客のライフタイムバリューの視点でしょう。

マーケティング環境が変化していく中で、DXを推進するための第一歩は、改めて「顧客中心」に「ライフタイムバリュー(LTV)という中長期的な視点」に立ち、KPIやカスタマージャーニーを再設計していくことではないでしょうか。

2.戦略的なデータ活用

カスタマージャーニーの最適化とは、すなわちカスタマーエクスペリエンスを高めていく事ですが、ここで必要となるのが、戦略的なデータ活用です。DXでは、収集したデータの活用(アウトプット、ハンドリング方法、組織体制)までをあらかじめ見据えおきます。

カスタマーエクスペリエンス向上における、新たなにデジタル化・データ活用のポイントは2つあります。

購入モチベーションが顕在化する前、ならびに購入後のコミュニケーションへのシフト

従来のマーケティングでは、製品を購入するシーンを中心としていましたが、先に述べた通り、顧客のLTV追及や所有から利用へと顧客との関係性が変化しています。その中では、購入シーン以外だけではなく、製品・サービスの利用シーンあるいは普段の生活シーンでも最適なコミュニケーションが実現できるように、データを収集・活用し、価値のある形で顧客にフィードバックするサイクルを作り出していく事がポイントになります。

オフラインシーンでのコミュニケーションの最適化

モバイルや各種センサーの普及ならびにAIの進化により、オンラインメディア上の行動だけではなく、オフライン行動がデジタル化され、可視化できるようになっています。
顧客の製品の利用状況、移動パターン、視線、発話内容、体調の変化、生活リズム等が収集できることで、商圏や顧客セグメントの特定、ライフスタイルに合った製品の推奨や効果的なプロモーションの展開、店内レイアウトの改善、スタッフアサインの最適化等、多くの施策への活用が期待できます。

これらの取り組みは、新たにデジタル化施策を行わなければならない訳ではありません。従来からの収集データが蓄積されている、あるいは十分に活用しきれていないのであれば、まずは既存データでコミュニケーション・業務の改善に取り組み、成功体験を作ると良いでしょう。

いずれにしても、データドリブンで経営・マーケティングの意思決定やコミュニケーションの最適化を図るためには、初動のコンセプト設計と小規模のPoCによる成功体験の蓄積を行う事で、その後の活動がスムーズになるでしょう。

3.データ活用による意思決定、アクションの最適化へ

収集データの観点で、DX用いて推計していた情報がクリアになるという事です。これにより、企業自らで把握できる「事実」が増え、意思決定の精度、スピードの向上が期待されます。

データ活用の役割としては、次の4点が挙げられます。

「可視化」:従来見えなかった事を可視化し、現状を正しく把握ならびに要因考察を行い、意思決定する
「予測」:過去の評価にとどまらず、将来を予測し、先手を打つ
「最適化」:限られたリソースを最適配分する
「評価指標の発見」:新たな要因あるいは新たなセグメントを発見し、KPIやターゲットを再設計する

これらは従来からの役割ではあるのですが、デジタル化によって新たに取得した情報が加わる事で、データの活用シーンが拡がり、カスタマージャーニーを分断することなく、顧客にとって最適なPDCAサイクルを回していくことができるようになります。

4.DXを実現する体制

DXは、局所的な施策ではなく、カスタマージャーニーやそれに伴う業務プロセス全体に一貫性を持たせる取り組みであるために、その実現のためには、部門を横串に刺した横断型の組織作りが欠かせません。
しかしながら、実際問題として、横断型組織は一朝一夕には作ることはできません。首尾よく横断型部門を作る事ができたとしても、そこからが課題山積でなかなか成果を出せない、という話しを耳にしますDX

〜DX推進体制の課題(例)〜
・横断型組織が作れない
・横断型組織を作ったが、関連する各部門との連携が進まずに、「全体企画は立てたけど、誰も実行してくれない。成果が出せない」
・注目されているシステムやツールを導入してみたが、期待するほどの成果が得られず、コストだけが毎月発生してしまう

では、どのようにして、これらの課題に向き合えばよいのでしょうか。
解決のポイントは3つあります。

1)共有
2)スモールスタート
3)リソース選定

一つ目は「共有」です。社内で、横断型組織の必要性を理解してもらう、関係部門からの協力を得るためには、「ゴール→アクション→組織」という形で、社内関係者・部門との情報共有を行い、視線を合わせていきます。

ここで役立つツールが、カスタマージャーニーMAPです。このMAPの中に、顧客の行動を起点として、必要なアクション、関連する部門を紐付けることで、各部門のメンバーが何故必要とされるかを明確にすることができます。

二つ目は「スモールスタート」です。限られた予算でスモールサクセスを出す、という事はもちろんですが、さらに「限られた担当者・部門で」という点を付け加えておきます。いきなり、多くの関係者を巻き込もうとすると、事前の調整に多くの時間と労力を費やしてしまうことになりますので、まずは動きやすい範囲からスタートすることが肝要です。

三つ目は「リソース選定」です。これは、いうなればコストの考え方です。スタートして間もない時期で安定して成果が得られるかが不透明な状況の中では、固定費の発生を極力抑える体制とする事で、状況に合わせて柔軟に取り組みを変化させることができます。
推進部門へのスタッフアサイン、運用ツール・システムは、初期段階ではコストの流動性を持たせるために、敢えて外部パートナーへアウトソースするという方法があります。コンサルティング会社や分析サービス会社へのアウトソースは、コスト面だけではなく、各社のノウハウを吸収できるというメリットがあり、社内メンバーのナレッジ向上にもつながります。

まとめ

ここまでで紹介してきた、D4DRが考えるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に必要な4つの視点を要約すると以下の通りです。

①マーケティングの変化への対応
・顧客中心で、顧客と企業の関係性の変化に対応する視点を持つ
・LTV向上を目的として、KPIやカスタマージャーニーを再設計する

②戦略的なデータ活用(新しく収集されるデータ、既存データの活用)
・カスタマーエクスペリエンス向上のためにデータを活用する
・デジタル化を図る際は、データ活用も見据えておく

③データ活用による意思決定、アクションの最適化へ
・観測データの増大により、意思決定の精度・スピード向上が期待される
・データ活用シーンの拡がりにより、カスタマージャーニーの最適化が図れる

④DXを実現する体制
・推進体制のポイントは、「共有」・「スモールスタート」・「リソース選定」の3つ
・外部パートナーの協力を得ることで、コストの柔軟性やナレッジの向上が期待できる

これらの視点を踏まえ、D4DRでは、DXを実現する取り組みステップを次の通り提案しています。

1.マーケットトレンドの把握(顧客ニーズや技術動向から新たな視点のヒントを得る)
2.カスタマージャーニーの設計(顧客接点、施策方針)
3.ビジネスプロセスの再設計(業務プロセス、データ活用、新サービス開発)
4.アクションプラン、ロードマップ
5.POC
6.実装

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Mikio Aaskawa

マーケティングエージェンシーや制作会社にて各種リサーチ・分析業務を経験した後、2009年よりD4DRのシニアアナリストとして、データドリブンのマーケティング支援に従事。現在はプリンシパルとなりプロジェクトリーダー兼アナリストとして、顧客視点で企業のマーケティング戦略立案や課題抽出、アクションプラン立案を支援している。

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