c-33 : 水素社会の実現

水素社会とは?

水素社会とは、水素を主要なエネルギー源の一つとして利用する社会である。

日本は化石燃料のほとんどを海外に依存しており、エネルギー自給率の低さが課題となっている。また、カーボン・ニュートラルの風潮が高まり、省エネ実現のために、水素などの再生可能エネルギーを新しいエネルギーとして活用しようとする動きが活発になっている。

特に、代替技術が少なく転換が困難な、鉄鋼・化学等のhard to abateセクターや、モビリティ分野、 サプライチェーン組成に資する発電等での水素活用が期待されており、今後、水素需要は高まるだろう。

2040年に向けて、水素の利用拡大による、クリーンエネルギーの普及、産業の脱炭素化、持続可能なエネルギーシステムの構築を通じて、環境負荷の大幅な削減と経済成長の両立が期待される。

また、地産地消モデルや、水素エネルギー利用の環境整備などによって、水素のコストダウンを実現することで、普及が進むと考えられる。

予想される未来社会の変化

  1. 水素を主要エネルギー源とする燃料電池車が普及し、運輸部門のCO2排出が大幅に削減される
  2. 家庭用燃料電池システムが一般化し、住宅のエネルギー自給率が向上する
  3. 大規模な水素発電所が稼働し、電力系統の脱炭素化が進む
  4. 国際的な水素サプライチェーンが構築され、エネルギーの地政学的構造が変化する

トレンド

エネルギーの“地産地消モデル”

出典:PR TIMES『コーセー、南アルプス工場のエネルギーに「水素」を活用 山梨県が誇る水を活用した、エネルギーの“地産地消モデル”構築に着手 ~山梨県の豊かな水資源の活用による持続可能な社会構築に係る基本合意書を締結~』

コーセーは、山梨県南アルプス市に新たに「南アルプス工場」を建設するにあたり、生産子会社であるコーセーインダストリーズと山梨県との連携を強化し、持続可能な社会の構築を目指すことに合意した。この取り組みでは、山梨県産の「グリーン水素」を活用し、環境に配慮したエネルギーの地産地消を進める。

グリーン水素は、再生可能エネルギーを用いて発電した電気を利用して水を電気分解し得られた水素であり、製造時にCO2を排出しない特性がある。

工場では、水由来のエネルギーをメインの電力源として活用し、県営水力発電から供給されるCO2フリー電力を使用する。また、日照時間の長さを活かした太陽光による自家発電も取り入れる。工場の稼働に必要な電力はもちろん、工場建設に必要なエネルギーとしても県営の水力発電によるCO2フリー電力を使用し、全国初となる建設段階からのCO2フリー電力の利用を実現。

さらに、熱エネルギーに関しては、従来の化石燃料から段階的に「やまなしモデルP2Gシステム」に転換し、県産のグリーン水素を利用することで環境への配慮を強化する。この「やまなしモデルP2Gシステム」は、太陽光発電による余剰電力を用い、水から作られた再生可能エネルギー100%のグリーン水素を活用するものである。

姫路地区を起点としたグリーン水素の大規模輸送・利活用

出典:PR TIMES「姫路地区を起点としたグリーン水素の大規模輸送・利活用に向けた調査の開始について~NEDO助成事業に採択~」

関西電力、西日本旅客鉄道(JR西日本)、日本貨物鉄道(JR貨物)、日本電信電話(NTT)、NTTアノードエナジー、パナソニックの6社は兵庫県姫路エリアでのインフラを活用した国内水素輸送・利活用等向けた調査、検討を行っている。

本事業は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業にも採択された。

鉄道や通信用管路といった既存インフラを活用し、水素製造・貯蔵拠点を起点とした大規模で低コストかつ低炭素な水素輸送を確立することで、水素需要創出と効率的なサプライチェーン構築に貢献することを目指している。

水素吸蔵合金配送システムを利用したクリーン電源

出典:PR TIMES『音楽フェス「カラフェス」に水素吸蔵合金配送システムを利用したクリーン電源を供給』

三菱化工機、那須電機鉄工、日本フイルコンの3社は2024年5月25日(土)~26(日)に佐賀県波戸岬海浜公園にて開催された「Karatsu Seaside Camp 2024(カラフェス)」の会場メインゲート照明などに、3社が共同開発した「水素吸蔵合金配送システム」を利用したクリーン電源を提供した。

三菱化工機の小型オンサイト水素製造装置「HyGeia-A」で製造した水素を水素吸蔵合金タンク(MH タンク)に充填して運搬、会場メインゲートに隣接して設置した燃料電池で発電し、会場照明用に電力を供給。25日15時より会場メインゲートをはじめとする照明の点灯を開始して、翌日9時まで約18時間にわたり1kwを安定的に電力が供給できることを確認した。水素使用量は試運転も含め約15m3だった。

3社共同で開発した水素吸蔵合金配送システムは、水素の貯蔵や運搬が容易なことから、災害時やイベント時など、比較的小規模かつ場所や使用期間が固定されない場所での電力供給に大きな優位点がある。今後も3社は実証実験を重ね、2024年度の商業利用開始を目指す。

 

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