c-12 : あらゆるモノのID化

あらゆるモノのID化とは?

あらゆるモノのID化とは、モノ(物理的商材、資源、資材等)に関する様々なデータが生成・蓄積・トレースされることにより、材料の調達・生産・流通・販売・消費・廃棄・リサイクル・リユースといったすべてのプロセスのデータ化・可視化が実現することである。

社会全体のデータ化が進む中で、モノにもデータの生成やトレースを目的とした個別のIDの付与がなされるようになる。個別のIDによる商品個別管理により、オムニチャネルでの効率的で高いユーザー体験の販売モデルを構築したり、リアルタイムに販売状況を可視化してマーケティングに活用する事例も現れている。

モノの生産・流通・販売等の各サプライチェーンにおいて、この個別のIDと生産地・位置情報・温度環境等のデータが紐づくことで、高度なトレーサビリティが実現する。例えば食品の産地や消費期限、製品の素材・設計といった情報の統合化によって、モノに対する安全性の保証や、ブランド等が保証されることによる付加価値の向上、最適なリサイクルまたは廃棄方法の推進などが期待される。オーガニックや比較的高価格帯の食品においては、現在も高い生活者ニーズが存在し、スマートフォンを活用してトレーサビリティ情報を確認可能なサービスなどが登場している。

予想される未来社会の変化

  1. サプライチェーンの完全な可視化が実現し、製品のライフサイクル全体が追跡可能になる
  2. 都市インフラのスマート化が進み、効率的な資源管理と予防保全が可能になる
  3. 個人の所有物がすべてデジタル管理され、シェアリングエコノミーがさらに発展する
  4. モノとヒトの相互作用データが蓄積され、より高度なパーソナライゼーションが実現する

トレンド

ブロックチェーン×IoT(NFCタグ)技術の「SHIMENAWA(しめなわ)」

出典:PR TIMES『上川大雪酒造が二風谷アイヌとコラボした北海道初の有機日本酒(オーガニック日本酒)で ブロックチェーン×IoT(NFCタグ)技術の「SHIMENAWA(しめなわ)」を導入』

SBIトレーサビリティはブロックチェーン×IoT(NFCタグ)の技術融合により現物資産とデジタル情報の強固な紐付けを可能とするトレーサビリティ・サービス「SHIMENAWA(しめなわ)」を提供している。

「NFCタグ」とは、物理的資産に固有IDを付すことができ、かつ、ブロックチェーンに記録されたその資産にかかる重要な情報と強固に紐付けする際に機能するHF帯(近距離無線通信)のNFC(Near field communication)タグ技術で、クレジットカードやマイナンバーカードなどでも使用されている。

SHIMENAWAは上川大雪酒造で導入されており、上川大雪最高峰の日本酒(限定品)“Niptay”の「箱ラベル」にはNFCタグが一体化されている。スマートフォンをかざすとブロックチェーンの高度な暗号技術で保護された情報で未開封の正規品であることが証明されるほか、北海道初「有機日本酒(オーガニック日本酒)」のスペック情報や、二風谷アイヌの方達とのコラボレーションプロジェクトの特典ムービーなどのコンテンツを楽しむことができる。

また、開封後に再びスマートフォンをかざすと、「開封(購入)情報」をブロックチェーンに記録。リアルタイムで上川大雪酒造から開封(購入)登録された地点が地図上で結ばれ、自身が購入された証を表示することでサプライズが感じられる演出が仕掛けられている。

RFIDシステムでレジの待ち時間を短縮

出典:PR TIMES「RFIDシステムでレジの待ち時間を短縮!ORIHICA全店で運用開始」

AOKIが展開する『ORIHICA』は、さらなる接客サービス向上を目的とし、高千穂交易が提供するJohnson Controls社製のRFIDシステムを全店で導入した。

RFIDシステムとは、電波(Radio Frequency)を用いて認識(IDentification)する技術のことで、タグに内蔵されるICチップが商品データを記憶し、電波の届く範囲であれば無線通信で複数のタグを一気にスキャンすることができる。 このシステムを導入することで、レジでのRFIDタグの一括読み取りが可能になり、レジでの待ち時間の短縮につながる。また、店舗にとっては検品作業や棚卸などの業務効率化が見込まれる。

サプライチェーン間のデータ連携による食品ロス削減に関する実証実験

出典:PR TIMES「サプライチェーン間のデータ連携による食品ロス削減に関する実証実験を開始」

今村商事、日本総合研究所、スーパー細川、九州シジシー、旭食品、九一庵食品協業組合、フジミツはID-POSを起点とした需要予測の結果を食品流通上の製造・卸・小売間で連携することによって、食品ロス対策およびサプライチェーンの効率化、そして各社の売り上げ向上への効果を検証する実証実験を実施する。

本実証実験では、顧客情報を含むID-POSデータを用いた需要予測を行うことによって、小売業・卸売業の発注精度がどの程度向上するのかを検証する。加えて、需要予測データを製造業と連携させることで、過剰生産を抑止するための生産計画の可能性についての検証も行う。

本実証実験は、経済産業省委託事業「令和5年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業(IoT技術を活用したサプライチェーンの効率化及び食品ロス削減の事例創出」に採択され、2024年1月22日(月)から2024年2月23日(金)まで、大分県・福岡県内で実施。

事業系の食品ロス発生の主な要因の一つに挙げられるのは、サプライチェーンの最下流である最終顧客と直接接点を持つ小売業者において、正確な需要予測が出来ていないことである。需要予測システムを導入していない中小の小売業者では、担当者の経験による属人的な運用に頼らざるを得ないことが多く、また、商品の動きのみを捉えるPOSデータを利用した既存の需要予測システムの予測精度には限界がある。

また、流通データを製造・卸・小売にわたるサプライチェーン全体で共有していないことも、事業系の食品ロスが発生している大きな要因の一つとなっている。例えば、製造業者は、卸売業者を経由して小売業者に納品された製品の在庫状況や次回の受注計画を知らされていない。そのため、機会ロスを恐れて安全在庫を多めに見積もることになり、本来の需要以上の過剰生産を行い、過剰在庫を引き起こしてしまうことが多い。過剰生産を削減できれば、製造業者の在庫削減も実現し、小売業者にはより新鮮かつ賞味期限の長い製品が納品されます。小売業者は賞味期限の近い製品に対する値引きといった販促活動を抑えられるなど、過剰生産の削減はサプライチェーン全体にとって大きなメリットがある。

本実証実験は、最終顧客の本来の需要を高い精度で予測し、その結果を製造・卸・小売間でデータ連携を行うことで、サプライチェーンの上流からも早期に見えるようにする仕組みの構築を目指して実施する。賞味期限が短く、食品ロスの発生が生じやすいとされている和日配(豆腐・練り物など)を対象として行う。本実証実験でID-POSを活用した需要予測による卸売業・小売業の発注精度向上や、需要予測のサプライチェーン間での早期共有と生産計画の精度向上が期待される。

 

 \未来コンセプトペディアを活用してアイデア創出してみませんか?/

新規事業・新サービスアイデア創出ワークショップ

新規事業立ち上げの種となるアイデアを創出し、新たな領域への挑戦を支援します。