繊維業界の市場動向と投資計画から見る将来のビジネス機会

繊維業界は国内の主要産業の一つであり、多様な製品が生産されています。グローバルでは今後も市場が成長すると予測されています。一方で、国内の繊維産業の売上高は海外トレンドとは逆行し、緩やかな減少基調にあります。人口構造の変化、バリューチェーン構造の変化、海外での競合製品の台頭など様々な要因が国内繊維市場に影響を与えています。

しかしながら、国内の繊維企業各社は新たな強みを武器に、ビジネス機会の開拓を進めています。安価な製品製造を得意とする海外勢では模倣が困難な炭素繊維素材やアラミド繊維などの高付加価値製品を開発し、海外企業との提携、そして世界シェアトップの地位を獲得するなどの成果を挙げています。

本記事では、繊維業界市場レポートとして、繊維業界のトレンド、業界構造、主要企業の現在の取り組み、今後の投資計画をまとめていますので、ご参考としてください。

繊維業界の市場動向

国内繊維業界は減少基調。一方で海外市場は拡大傾向にある

国内の繊維工業製品の出荷額は緩やかな減少基調にあり、市場規模は2021年度は3兆6,526億円(2017年比:92%、工業統計)となっています。
繊維市場はグローバルではCAGR4.4%で拡大するとの予測がみられ、2028年には1兆4千億米ドルに到達する見込みです。一方で、国内市場では海外の安価な輸入品の増加、輸出品の減少(輸出負け)、加えて国内の人口減少による需要減や担い手不足の影響を受けて逆風下にあります。

新たな変化要因への対応が競争力強化に貢献

しかしながら、炭素繊維やアラミド繊維などの高機能繊維では国内企業が強みを持ち、東レや帝人は特定製品で世界トップシェアを誇り、海外企業との提携による販路拡大を推し進めています。
今後は、従来の高付加価値製品の強みに加えて、以下の変化要因に対応することで、競争力の強化が見込まれます。

▼ 今後対応が求められる変化要因

  • 循環型社会への対応
  • デジタル技術の活用によるサプライチェーンの効率化
  • サプライチェーンの透明性(サステナブル対応)
  • ECによるマーケット拡大
  • 高機能製品の開発(スマートファブリック、ウェアラブルテクノロジー、他) など

次章以降では、主要企業の動向を俯瞰し、今後の繊維業界の方向性を探っていきます。

主要繊維企業の実績

東レ、帝人の2強は高機能繊維で世界シェアNo.1

繊維企業の全体売上(連結)では、総合化学系の企業を除くと、化学繊維に強みを持つ東レ(2兆4,893億円、2022年度)、帝人(1兆188億円、同)の2社の売上が突出しています。国内の繊維市場は減少基調であるものの、両社の売上は堅調に伸長を続けています(東レ、帝人ともに21年度比:110%超)。

両社ともに、炭素繊維、アラミド繊維では世界シェアトップクラスの製品を有しており、革新的な製品を武器に海外市場の開拓を進めていることが増収に寄与していると考えられます。

  • 東レ:炭素繊維(ポリアクリロニトリル系中心)、世界シェアNo.1
  • 帝人:アラミド繊維(パラ系)、世界シェアNo.1

人的資本に着目した経営効率の高さでも東レの強さが窺える

従業員一人あたり売上高では大手企業を抑えて、総合化学企業の三菱ケミカルがトップなっており、2.9億円/人と他社を大きく引き離しています。東レは、ここでも第3位にランクインしており、人的資本を効果的に活用し、効率よく売上を上げていることが窺えます。
グローバルでの競争を勝ち抜く上で、AI・DXの推進による開発期間の短縮化や生産品質の向上の取り組みが、結果として人的資本効率の高さに寄与すると考えられます。

国内の人口構造の変化、世界市場での激しい競争下で、各社ともにAI(MI:マテリアルズ・インフォマティクスなど)活用によるR&D期間の短縮化や製造工程の効率化、基礎研究や技術に必須となる専門知識の習得だけではなく、市場変化に対応しビジネスを創造するスキル向上を追求した独自のプログラムや制度の設置など、経営効率の向上とビジネスの拡大・継続を目指した取り組みを推進しています。

繊維業界のバリューチェーンと今後の変化要素

変化要素への対応が今後の市場競争力に影響を与える

繊維業界は、原産地(原料調達)から紡績、撚糸、製織、染色、縫製、流通を経て最終顧客へと製品が提供される流れが基本構造です。
今後はこの基本構造に対して、先に述べた変化要素の影響が大きくなると予想され、効果的に適応できた企業が競争優位な状態を確保できると考えられます。

主要企業の現在の取り組みと今後の計画

グローバル市場で勝ち抜くために、繊維企業各社はどのような取り組みを行い、そして今後どのような計画を立て未来へ向かおうとしているのでしょうか。
ここからは、主要3社を対象に、セグメント別の実績、取り組み分野、バリューチェーンにおける特徴を押さえながら、今後のビジョンや投資計画をもとに、今後の繊維業界のビジネスの方向性を紐解いていきます。

本記事の続きは、詳細資料「繊維業界市場レポート ~市場トレンドと主要企業の将来に向けた取り組みの方向性」をご覧ください。

資料は以下よりダウンロードいただけます。

繊維業界市場レポート

■ 繊維業界市場全体の動向
・市場規模、推移
・業界構造(バリューチェーン)
・売上、人的資本効率ランキング

■ 企業比較:繊維事業実績
・企業基本情報
・セグメント別売上
・事業分野とバリューチェーンの強み

■ 企業比較:将来に向けた取り組み・計画
・イノベーションへの取組み
・研究開発(方針、分野、体制、人材、特許)
・今後の事業方針、投資計画

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Mikio Aaskawa

マーケティングエージェンシーや制作会社にて各種リサーチ・分析業務を経験した後、2009年よりD4DRのシニアアナリストとして、データドリブンのマーケティング支援に従事。現在はプリンシパルとなりプロジェクトリーダー兼アナリストとして、顧客視点で企業のマーケティング戦略立案や課題抽出、アクションプラン立案を支援している。

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