都道府県別 観光客の動向調査 (Twitterビッグデータによる行動変化のSNS分析) 第10回 2021年7月

47都道府県の動向

 D4DRでは、観光地への往来が回復し、産業として復興するよう応援・確認する目的から、20年10月より47都道府県ごとのSNS上の観光話題の動向を定点モニタリングしている(対象のソーシャルメディアはTwitter、主に話題量の変化から状況を分析している)。過去の公開記事一覧はこちら

都道府県別 旅行・観光話題量の変化(前年同月比)

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初の緊急事態宣言から1年経過した21年4月の宿泊数は前年の231%、コロナ禍前の半分に満たない

 前月同様、まずは観光庁における都道府県別宿泊者の統計データを確認する。1回目の緊急事態宣言下であった20年4月は宿泊数が極端に減少していたこともあり、21年4月では前年同月比が231.2%と大幅に増加していた。しかし、コロナ前である19年4月との比較では未だ5割を下回っている(19年4月比は44.3%)(図1)。

図1 日本全国 宿泊者数推移

警戒体制が続いた21年6月、話題量は前月から横ばい状態
Twitter上の47都道府県別の観光話題量を比較

 続いて、前回同様1か月に観光話題(”47都道府県名”、及び”観光”または”旅行”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外)が多くみられた都道府県を分析。 21年5月から6月の主要な関連動向は、以下となる。

■5月
 ・大型連休(~5/5) 
 ・4都府県の緊急事態宣言が31日まで延長決定(5/7)
 ・全国感染者数が7,000人超 過去最多(5/8)
 ・愛知・福岡・北海道・岡山・広島・沖縄に緊急事態宣言の追加発出(計10都道府県)(5/12~23)
 ・東京・大阪で大規模接種センターでの接種開始(5/24)
 ・6月20日までの緊急事態宣言の延長決定(5/28)

■6月
 ・7月中下旬を目処に紙書面でのワクチンパスポート導入を発表(6/17)

 ・東京など7都府県での、緊急事態宣言の解除とまん延防止等重点措置への移行(6/20)
 ・国内感染者数が再び増加傾向(1,779人/日)(6/23)
 ・ワクチンの職域接種が一時休止(6/26)
 ・都内のほとんどの地域で公道での聖火リレー実施中止(6/29)

 6月の話題量上位をみると、前月からの話題量は横ばい状態であった。ほとんどの地域で緊急事態宣言が解除されたものの、まん延防止等重点措置など油断のならない生活が続き、話題量が大きく増加する変化はみられなかった。
 なお、高知県のみキャンペーン応募に対する自動返信ツイートが極端に多かったため、今月から該当ツイートを除いた上で算出している。

図2 話題量上位10都道府県(21年5月、6月)

初の緊急事態宣言明けとなる20年6月との観光話題量比較
前月に引き続き回復傾向を維持

 次に、季節要因による増減を排除して考察する目的から、前年と比べて観光の話題発生の減少が大きい、特に課題のみられる都道府県を確認。21年6月の前年同月比ワースト10の都道府県を調査した(図3)。

 前年同月比ワースト1位は高知で70.7%、2位は福島で73.0%、3位は北海道で75.0%であった。前月は観光話題量の回復の兆しが確認されていたが、今月も同様に20年6月比ワースト10位までが前年の70〜90%の範囲におさまっていた。

図3 話題量前年同月比ワースト10(21年6月、5月)

 

 参考までに図4では21年6月の話題量(縦軸)と前年同月比(横軸)の関係をマッピングしている。初の緊急事態宣言が明けた20年6月との比較となる今回は、前年同月比100%を上回る都道府県数が24と約5割を占めた。28都道府県(59.6%)だった前月からは1割減少しているが、前年同月比180%以上が2県だった5月に対し、6月は5県と、5月に比べて全体的に力強い回復という印象だ(ピンクのエリアの都道府県増加を確認し、回復度をみていく)。なお、前年同月比がワースト10の都道府県は引き続き赤字で示している。

図4 話題量(縦軸)×前年同月比(横軸)(21年6月)

対策が長期化した6月は
観光客についての言及量が全体的に低下

 別の視点として、話題から各都道府県への観光客の「戻り」を把握するため、19年の平均観光話題量上位10都道府県初回記事にて選出)を対象に、客足のボリュームの印象に言及した内容に絞った調査も行っている(図5、 “都道府県名”、及び”観光客”または”旅行客”、併せて”多い””少ない”のキーワードを含むツイート ※拡散によるBuzzを排除する為リツイートは除外 )。引き続き“多い”の出現量と比率から、回復状況を分析していくダウンロード資料では全都道府県掲載!

※例:次のようなツイートを調査

図5 観光客・旅行客量の言及出現数(19年観光量上位10都道府県)

 3度目の緊急事態宣言が解除されたものの、まん延防止等重点措置への移行など油断ならない日々が続いた21年6月、全体的に観光客に対する言及量は減少していた。しかし、ほとんどの地域では観光客が”少ない”よりも”多い”と言及する比率の方が高く、これまでと同様の傾向を示した。

 オリンピックを翌月に控えた21年6月には、以下のようなツイートがみられた。

 まん延防止等重点措置に移行したものの、感染者数の増加から東京では7月12日から8月22日にかけて4度目となる緊急事態宣言が発出された。さらに沖縄では既に発出されていた緊急事態宣言の延長、埼玉・千葉・神奈川・大阪の4府県ではまん延防止等重点措置を8月22日まで延長する動きもみられた。

 緊急事態宣言下でのオリンピック開催や無観客での実施など、慌ただしい情勢が続いている。また、従来より感染力が1.95倍となるデルタ株がワクチン接種率の高い国でも猛威を振るい始め、日本国内でも感染が広がっている。オリンピックだけでなく変異株の影響を鑑みると、今後の日本の観光事業がどの程度回復するか未だ未知数だ。D4DRでは引き続き、月1回Twitterを対象に前月分の定点調査結果を公開し、数値から復興の動向を継続的に分析していく。

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Ichiko Oki

ソーシャルメディア分析を専門領域に、投稿をもとにした実践的な生活者のインサイト抽出・提案を得意とするデータアナリスト。2018年11月よりD4DR 札幌リサーチセンター開設・室長。

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