自給自足志向とは?
自給自足志向とは、食料やエネルギー、その他の生活必需品などを、できる限り外部に依存せず、自身や小規模なコミュニティ内で生産・調達しようとするライフスタイルや価値観を指す。家庭菜園・アーバンファーミングや、太陽光発電・小規模風力発電、雨水収集・浄化システムなどを利用して、自給自足生活を実践する。自給自足志向を持つ人が増える背景には、環境問題への意識の高まり、大量消費社会への反省、テクノロジーの進歩による小規模生産の効率化などがある。
予想される未来社会の変化
- テクノロジーも活用しながら、自給自足生活の要素を生活の一部に取り入れるライフスタイルが広がる
- 都市部でも食料や電力の部分的な自給が一般化し、家庭菜園やソーラーパネル設置が標準的な住宅設備となる
- 個人の生活必需品の自家生産が増加し、3Dプリンターなどのパーソナルファブリケーションが普及する
トレンド
ヤマナアカデミー
千葉県南房総では交流拠点の「ヤマナハウス」をフィールドに、“地域課題”そのものをコンテンツ化、“自給自足スキル”を身につけながら楽しく課題解決を目指す「ヤマナアカデミー」を展開している。
南房総で2拠点生活を体験しながら、「地域課題」に則した「自給自足スキル」を学ぶことができる。各コースでは数カ月の間、週末に南房総を訪れ、座学と実習ともにじっくりと学ぶ。講座以外にも、ヤマナハウスの会員向け「月例アクティビティ」にも参加し、2拠点や移住者、地元の方々とも交流できる。
「小屋DIY」「狩猟ジビエ」などを地域で活躍する熟練した講師陣から直接指導を受けることができ、本格的な自給自足スキルを体感できる。
CORRUGATED HOUSE
ADDReCは、FOOD FORESTと共同で、日本で最古のコルゲートハウスである川合健二邸を改装し、自給自足や自然を体感できる一棟貸ホテル「CORRUGATED HOUSE」をオープン。
コルゲートハウスは、トンネルや地下鉄などに使用されるコルゲートパイプを用いた建築で、主に鉄素材で構成されており、最終的には自然に還るエコ建築。冷暖房設備は最小限に抑えられ、快適さよりも四季の変化を感じることを重視している。この建物は、建築家の川合健二氏が、インフラから脱却し、自然の中で自給自足の生活を送りたいという想いを込めて自邸として建てたもので、日常から離れた生活を体験できる究極の空間としてDOCOMOMO(モダン・ムーブメントにかかわる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織)に選出されて話題となった個人住宅としてセルフビルドされた建物となっている。
「CORRUGATED HOUSE」は川合氏の哲学を反映し、日本で最初であり最古のコルゲートハウス(1965年)を改修し、その周辺敷地をリデザインした宿泊施設。このホテルでは、宿泊者が地球とのつながりを断ち、自給自足の生活を体験できるように設計されている。宿泊者は「CORRUGATED HOUSE」の敷地内で自給自足し、家族や大切な人と分け合いながら、社会を俯瞰する特別な一日を過ごすことが可能。
また、コルゲートハウスの建築だけでなく、周辺のランドスケープにも川合氏の思想が反映されており、自然との調和を重視した体験が提供されている。
インフラゼロでも暮らせる家
MUJI HOUSEとINNFRAは、エネルギーや生活水などを既存のライフラインに依存しないモバイルユニットを移設・組み合わせることでインフラの整わない場所でも自由自在に暮らすことのできる移動式住宅の実証実験「ゼロ・プロジェクト」の試験運用を千葉県で開始。2025年の実用化を目指している。
「ユーティリティ棟」と「リビング棟」2つのユニットを組み合わせた、車で運べるモバイルハウスになっており、インフラ・ゼロ、カーボン・ゼロ、リビングコスト・ゼロ、災害リスクゼロを実現。
ユーティリティ棟は蓄電池や水循環システム、キッチン、シャワーなどを設けたユニットになっており、リビング棟はリビングスペース、バイオトイレなどを備えた生活のためのユニットになっている。
・米国では、田舎での自給自足のライフスタイルやノウハウを、Youtubeで発信し広告収入を得て暮らす「ホームステッダー」と呼ばれる人々が存在。彼らが自給自足生活を始めるきっかけは、自分自身や家族の健康への懸念、農業への興味、都会での生活に対する不満などであったという
・コミュニティ単位で持続可能な社会の実現を目指し、自給自足生活を送っている事例もある
サステナビリティの考え方を生活全体に適用し、コミュニティで環境に負荷をかけない持続可能な暮らしを、共同で追求していくことを「エコビレッジ」と呼ぶ。多くのエコビレッジで実践されているのは、以下の3点であるとされる
①持続可能なエネルギーや水、物質の利用・再利用
②持続可能な食料自給
③持続可能なコミュニティ形成
・1978年に創立されたデンマークのエコビレッジ「Svanholm」では、430ヘクタールの敷地に農地、カフェ、食堂、保育園を備え、約130人が共同で自給自足生活を送る。「収入の共有」を 理念の一つとし、住民が収入の80%をビレッジに収めていることが特徴的である
・自給自足といっても、昔ながらの素朴な暮らしに回帰する、ということを意味するとは限らず、最先端テクノロジーによって、エコと快適な生活水準を両立させる動きもある
例えばオランダのアムステルダム郊外にある「ReGen Villages」では、先端テクノロジーによって、快適な自給自足が実現されている
・自給自足生活者は、現代社会の崩壊に備え、備蓄を増やしサバイバルスキルを身につける「プレッパー」と呼ばれる人々の価値観と、親和性が高い。プレッパーは、自然災害や人災によってライフラインが崩壊した際に備えて食料や自衛用品を備えている。
・新型コロナウイルス流行で、テレワークが推奨されて働き方が変わったことで、都市部から地方に移住して、自給自足生活を送る人が増える可能性がある。
関連記事
\未来コンセプトペディアを活用してアイデア創出してみませんか?/
新規事業・新サービスアイデア創出ワークショップ
新規事業立ち上げの種となるアイデアを創出し、新たな領域への挑戦を支援します。