近現代文明・テクノロジーへの反発とは?
近現代文明やテクノロジーの急速な発展がもたらす影響に対して、懸念や拒絶反応、およびそれに基づく思想や行動が生まれる。テクノロジーの過度な使用への批判や、伝統的な価値観や生活様式の重視、環境破壊や資源の枯渇への懸念などを特徴とする。
近現代文明・テクノロジーへの反発は、自給自足生活・オフグリッド生活の実践のほか、伝統工芸や手仕事の再評価、アナログ趣味の復興(レコード、フィルムカメラなど)といった形で表現される。
予想される未来社会の変化
- デジタルデトックスが一般化し、意図的にオフラインの時間や空間を確保する生活様式が広がる
- AIや自動化への依存を避け、人間の判断や手作業を重視することの価値が再評価される
- 人間関係やコミュニケーションにおいて、直接的な対面接触や実体験が重視され、デジタルからアナログへの回帰が進む
トレンド
SNS断ち
世界的ベストセラー本である精神科医アンデシュ・ハンセンの『スマホ脳』などによってスマホの弊害が意識されるようになった。この本は、スマホが脳を過労させ、睡眠障害やうつ病、記憶力、集中力、学力の低下、依存といった被害をもたらすと警鐘を鳴らしている。
また、2024年2月には、アメリカ・ニューヨーク市が「若者のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしている」として、SNS各運営会社を提訴する動きも見られた。TikTokやInstagramに加えて、Facebook、YouTube、Snapchatも対象となっている。
このような流れをくんで、いわゆる“SNS断ち”を試みる人たちが増えている。実際に“SNS断ち”をした人によれば、SNSをやめたことで疲労感が軽減されたり、寝つきがよくなったなど健康的にもよい効果が得られている様子。また、友人たちのプライベートを見て嫉妬しなくて済むし、悲しくなるニュースやどうでもいい情報などを頭に入れずによくなったなど、良い変化が体感できている。スマホが手放せない現代人だが、“SNS断ち”を行うことで、一定数が心身ともにメリットだと感じているようだ。
有名人でもお笑いコンビ・EXITの兼近大樹が71万人のフォロワーがいたXのアカウントを削除したことが話題になった。
ラッダイト・クラブ
オンラインで常に繋がることの利点が、逆に10代の若者たちにとって負担に感じられるようになってきた。その結果、彼らはスマホを断つためのコミュニティ「ラッダイト・クラブ」を立ち上げた。この名称は、19世紀初頭のイギリスで機械に対する抗議活動を行った労働者たちに由来し、テクノロジーの変化に反対する人々を象徴するものとなっている。
ニューヨークの高校生であり、クラブ創設者のローガン・レーンは、新型コロナウイルスの影響で自粛期間中にSNS疲れを感じ始めた。「自分がSNSに完全に消費されていた」と述べ、インスタグラムでの完璧なセルフィーに疲れ果て、その結果アプリを削除し、さらにはケータイを箱にしまったという。
別の高校生、ローラ・シューブも友人がスマホを永久に捨てたことをきっかけに、iPhoneをガラケーに変更した。
ラッダイト・クラブのルールは「その場でスマホを使用しない」ことであり、集まったメンバーは全員デバイスの電源を切り、お互いの時間を大切にする。その他の高校でもこのクラブが立ち上がり始めており、ラッダイト運動が広がっている様子が見受けられる。
さらに、米国心理学会のAPA PsycNetによる2023年の調査では、スマホの使用を制限または禁止したグループが、生活の満足度や身体活動の増加を経験したという結果が示されている。これにより、今後スマホ離れの流れがさらに広がる可能性があると考えられている。
BeReal(ビーリアル)
フランス発祥のSNSアプリ「BeReal(ビーリアル)」は写真を共有するアプリの1つであり、「盛らない」ことが特徴になっている。アプリに通知が送られてきたら、2分以内に写真を撮ってシェアする必要がある。スマホに保存していた過去の写真や、別のアプリで加工して写真をシェアすることはできない。
アプリからの通知は1日1回で、朝に来ることもあれば、夜に送られてくることもあり、通知が来たら、ありのままの姿を撮影する。自分の写真をシェアしないと友達の投稿を見ることはできず、友達の投稿は1日経ったら消えてしまう。アプリから通知が来たら、一斉に写真を撮り、シェアし合うため、まさに「リアル」を共有するアプリとなっており、Z世代の女子を中心に流行している。
従来のSNSでは、加工や演出で作り込んだ投稿をシェアしていたが、BeRealは真逆の世界を楽しむことができる。
・技術の進歩とともに生活行動はスピードアップし、人々の心身の余裕の欠如や、精神的問題を抱える人が増加し、昔ながらの質朴な生活様式に関心が集まるようになった
背景には、近代的で便利な生活が、すべての人に幸福をもたらすとは限らないとの考えがある
・「ネオラッダイト運動」は、IT技術の飛躍的な進歩、発展、普及に対しての反対運動である。それらの開発を阻止し、利用を控えようとする人々に支持され、産業革命時に起こったラッダイト運動から、ネオラッダイトと呼ばれる
・「アーミッシュ」は、アメリカやカナダに20万人ほどいるといわれる、宗教集団
移民当時の生活様式を守ることを主義として、昔ながらの生活の中で生きている。近代文明を拒否し、電気、電話を使わず、基本的に自給自足を行い、コミュニティの中で支え合い、地域で密接な関係を築いている
アーミッシュの生き方は、決められた制限を尊重し、受け入れることだとされる
・「Bライフ」はベーシックライフの略称で、日本の若者の間で話題になっている。ミニマリズムや断捨離の考えが広まったことで、自ら小屋を建て、誰にも文句を言われずに、寝転がってローコスト生活を続けるライフスタイル
家にお金をかけることに魅力を感じず、シンプルに、自由に生きたいという思想が根底にある
・一定の期間、デジタルデバイスと距離を置くことでストレスを軽減する「デジタルデトックス」を行う人も多い
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