先進国での少子化・人口減少とは?
先進国では、出生率の低下と平均寿命の延伸により、労働力人口の減少と高齢化が進行している。これは経済成長の鈍化、社会保障制度の持続可能性への懸念、地方の過疎化などの問題を引き起こしている。
対策として、女性の労働参加促進、育児支援の強化、移民政策の見直し、新たな技術を活用した労働生産性・効率の向上などが進む。人口動態の変化に適応した社会システムの再構築が求められる。
予想される未来社会の変化
- 労働力不足を補うため、ロボットやAIが積極的に導入される
- 高齢者の就労促進のため、定年制が実質的に撤廃される
- 消費規模や生産人口に依存しない、新たな経済指標づくりが試みられる
トレンド
ハンガリーの名目GDP(国内総生産)比で5%の少子化対策
ハンガリーでは名目GDP比で5%という大胆な少子化対策を行い、日本以下だった出生率がV字回復したと話題を集めた。日本の子ども・子育て支援に対する公的支出の対GDP比率は2020年時点で1.7%(OECD平均2.1%)。
ハンガリー政府は子育て世代への無利子貸付、多子世帯ほど手厚い住宅購入支援、子どもがいる母親の所得税の優遇といった諸政策を用意し、子育てを支援してきた。
その結果、2011年には1.23にまで低下したハンガリーの出生率は、2020年には1.56まで上昇した。
しかし、多子世帯ほど手厚い住宅購入支援をしたことで不動産価格が高騰してしまい、次世代の住宅購入が厳しくなってしまうことや、少子化対策に費やした財政のツケで次世代が苦しめられるなど、仮に出生率が回復しても次世代世代に負担がかかってしまうというデメリットがある。また、財政負担の割には成果が出ていないという批判もある。
移民を積極的に受け入れて少子化を防ぐカナダ
カナダも多くの西側諸国と同様に少子高齢化問題を抱えており、労働力人口の減少を補完するために、2025年までに3年間で150万人(年間50万人)の移民の受け入れを発表した。カナダは人口あたりではイギリスの約8倍、隣国アメリカの4倍もの永住者を受け入れることになる。
もともとカナダでは人口と経済拡大のために永住者(国籍は取得しないが永住権を持つ移民)の獲得に力を入れてきた。今回の大規模な移民受け入れ政策の発表の前年には40万5000人を受け入れた。政府の発表によると、移民はすでに同国の全ての労働分野で人数拡大に貢献している。2032年までには人口増にも寄与することになるという。また、難民受け入れにも力を入れており、2021年には2万428人の難民を受け入れた。
現地では多くの人が移民受け入れに肯定的な意見が多い一方で、フランス語話者の減少など文化面での懸念の声もあがっている。
GDPに代わる「豊かさの指標」
国連事務総長アントニオ・グテーレスは、2022年の世界環境デーで、環境に悪影響を及ぼす行為がGDPを押し上げる現状を批判し、GDPを経済指標として用いることをやめ、循環型・再生型の経済への移行を提唱した。
GDPは1934年にサイモン・クズネッツによって導入され、戦時中に政府が資金調達のために使った指標であり、社会福祉を測るためのものではなかった。そのため、ダイアン・コイルやアマルティア・セン、ジョセフ・スティグリッツといった経済学者は、GDPが社会的側面を無視していることから、時代遅れであると指摘している。
現在、中国、ドイツ、ニュージーランドなどではGDPに代わる新しい指標の導入が検討されており、特にブータンの「国民総幸福量(GNH)」が注目されている。この指標は心の健康や生活水準、地域の活力、環境の回復力を含み、憲法にも記載されている。
また、国連環境計画(UNEP)が提唱する「包括的な富指数」は、各国の経済、人的資本、人工資源、自然資本の社会的価値を評価し、持続可能な発展の指標を提供しているが、現在140カ国近くがその基準に達していない状況。
そのほか、経済協力開発機構(OECD)の「より良い暮らし指標」は、住宅価格やワークライフバランスなど、多様な観点から生活の豊かさを測るための指標を採用している。
・2019年、初めて出生数が90万人(86万人)を割り、少子化が加速している
・コロナウイルスの影響により、産院の予約の規制や、里帰り出産の受け入れ拒否などが要因となり、結婚・出産の意欲が低下。更なる少子化を招く可能性がある
・他国の状況として、フランスではシラク三原則という政策を導入している。無料保育所の提供や、育休からの復帰支援対策など精神面にも配慮した取り組みを行っている
・少子化・人口減少によって、労働人口が減少している。人口減少により、医師や自衛官など、生活の安全を支える職業にも人材不足が起きている。特に地方ではその傾向が顕著である
・福島県会津若松市は、AiCTというICTオフィスビルを建設
先端技術の実証・実装フィールドとして、ICT関連産業の集積拠点となっており、NECやアクセンチュア、三菱商事などの大手企業が利用している。当該オフィスビルは交流の場も設けており、地域全体がまちづくりに参加できるシステムを備える
また、近隣の大学ではコンピューター分野を専門とする大学があり、卒業生の活躍の場としてAiCTを設立することで、若者労働力の調達を実現している。
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