b-26 : 都市機能麻痺のリスク(パンデミック、テロ、システム障害など)

都市機能麻痺のリスクとは?

パンデミック、大規模テロ、サイバー攻撃、水害、富士山噴火、巨大地震などにより、エネルギー、交通、電力、通信、水道などの重要インフラが同時に機能停止する可能性がある。これは経済活動の停滞、市民生活の混乱、医療サービスの停止と感染症の拡大、政治の機能停止につながる恐れがある。
これらのリスクを前提として、都市機能の分散や、都市のレジリエンスの強化、各種インフラの強化、フェーズフリー対応などの備えが必要とされる。

予想される未来社会の変化

  1. 東京への大震災と富士山の噴火により、首都機能が麻痺することが予想され、副首都、代替首都の計画が検討される
  2. 大規模災害やパンデミックに備えた分散型の都市設計が標準となり、スマートシティ化が加速する
  3. 都市部への一極集中が見直され、地方分散型の社会構造への移行が進む

トレンド

首都岡山

日本ではM7クラスの直下型地震が、2022年から30年以内に70%の確率で発生すると推測されている。現在は政治や行政、経済などの機能が東京に全て集約されている「東京一極集中型」となっているため、首都直下型地震が発生した際にそれらの機能が全て止まってしまい、国の混乱を招く可能性が考えられる。

そこで近年は首都機能を災害リスクの低い地方に移転する「首都移転」の必要性が唱えられ始めており、岡山県吉備中央町の首都移転構想の動きが見られている。

吉備中央町を中心に広がる吉備高原地帯は地盤運動が少なく、安定した「準平原」といわれている。地球年代学分野の観点から資源開発などを行っている「地球年代学ネットワーク」の理事長・板谷 徹丸氏によると、この一帯は深さ約20kmまでが1枚の岩盤になっているため活断層がなく、直下型地震の心配がないと言われている。これは、3,400万年前に日本海で大規模な地殻変動が起き大陸が激しく変動した際も、同地帯は変動しなかったと研究で判明したことも裏付けている。

吉備中央町は「首都岡山」を合言葉に、町の環境を整備するとともに、首都機能移転の実現を目指してPR活動を精力的に行っている。

文化庁の京都移転

出典:朝日新聞「文化庁、京都移転から1年 東京にも残る拠点、成果には時間も」

文化庁は2023年3月27日に京都に移転した。政府が掲げる地方創生の一環で、明治以来初の中央省庁移転が実現した。

しかし、東京にも拠点が残る2拠点体制が続いている。宗教課は旧統一教会の問題があり、当面は東京での勤務になる。また、著作権や文化芸術振興などを担う4課は、他の省庁や関係団体との連携が多いとの理由で、そもそも東京に残る。京都に移った文化資源活用課も、国が世界遺産登録をめざす佐渡金銀山遺跡(新潟県)の対応のため、担当を東京に置いている。

幹部の一人は「中央省庁の最大の仕事は国会と予算。それを東京でやる以上、やはり軸足は置かざるをえない」ともらしており、完全に機能を京都に移転するのは難しい様子がうかがえる。

インドネシアの新首都・ヌサンタラ

出典:NHK『移転先はジャングル!? 新首都「ヌサンタラ」ってどんなとこ?』

インドネシアでは2022年に議会で首都をジャカルタからヌサンタラへ移転することが可決された。「ヌサンタラ」はインドネシアを象徴する「群島」という意味。

25万ヘクタールもの森林などの土地を切り開き、一から新しい首都を築こうとしており、2024年から移転を始め、2045年には完了させる計画になっている。

インドネシアでは首都ジャカルタのあるジャワ島への一極集中や、ジャカルタの洪水による地盤沈下リスク、巨大地震リスクなどが問題となってきた。

首都移転の費用について、2021年11月にジョコ大統領は日本円でおよそ4兆円が必要だと発言しているが、当初より膨らんでいる。費用の80%は官民連携の事業としたり、民間企業や外国から投資を呼び込んだりして、まかないたいという意向。

しかし、首都移転は難航している。ソフトバンクグループに当初協力を求めていたが、出資を見送ったとしており、「費用のむだづかい」などとして、およそ6割が首都の移転に反対し、反対の署名活動も起きている。また、森林の伐採は、希少なオランウータンなどの動物の生息地を脅かすのではないかという生物多様性の観点からも心配の声もあがっている。


・日本では、過去に何回か首都遷都が計画されたことがある。
地下鉄サリン事件や震災により、災害やテロによる都市機能マヒの危険性を分散する目的であったが、東京の地価が落ち着きを見せたことから、鎮静化した
しかし、大阪の都構想、京都の双京構想など、東京への一極集中に対する批判は根強い

・アメリカのワシントンDCとニューヨークのように、経済の中心地と政治の中心地を切り離すことで、地域の活性化と過密状態の首都圏の減量を図れる

・国会、中央官庁、最高裁、大企業、中央銀行、有名大学、大新聞、テレビキー局、国立劇場等、政治、行政、司法、経済、教育、情報、文化等それぞれの分野において最高の地位にあるものは、すべて東京に集中している

・東日本大震災による被害は想定外の規模であり、国民に驚きを与えた
首都機能の麻痺による影響も、想定よりも多大なダメージを与える可能性があり、将来を見据えた迅速な判断と行動が求められる
今後、中長期的に発生することが予測されている首都直下型地震やパンデミックを鑑み、首都中枢機能を分散させる、副首都、代替首都としてのバックアップ体制の構築がもとめられる

・富士山が噴火した場合の被害では、降灰量が1センチまでで一部の交通網に遅延や停止、10センチまでで社会・経済活動に障害発生、30センチ以上で同活動がほぼ不能な状態に陥ると予測されている
降灰が始まると空港の封鎖や飛行禁止となり、1センチを超えると、送配電網の性能低下で、大規模停電や水道のろ過材の目詰まりによる供給停止のリスクが増大する。10センチ以上に達すると、車の走行が不能になる

出典:内閣府

 

 \未来コンセプトペディアを活用してアイデア創出してみませんか?/

新規事業・新サービスアイデア創出ワークショップ

新規事業立ち上げの種となるアイデアを創出し、新たな領域への挑戦を支援します。

関連コンセプト