国際的なサプライチェーンのリスク化とは?
デジタル化の進展により、従来一般的であった大量生産・大量消費による販売手法の陳腐化が表面化しつつあり、コト消費やモノのパーソナライズ化が求められている。大量生産・大量販売を支えてきたのが、グローバルサプライチェーンである。新型コロナウイルスによる全世界への感染拡大時には影響が仕入、メーカー、商社、物流業者など多岐に及び、グローバルサプライチェーンの脆弱性が露呈した。
国際的なサプライチェーンのリスク化とは、グローバルな供給網におけるリスクが増大し、それに伴う影響が顕在化することである。主なリスク要因には、自然災害、パンデミック、地政学的リスクなどがある。その影響は、製品の生産の遅延と中断、リスク対応によるコストの増加、複数の国や地域からの供給品の品質管理の難化等、多岐にわたり、複数の供給元の確保や、サプライチェーンの可視化とトレーサビリティの強化、供給網のローカライゼーションといったリスク緩和策が求められる。
予想される未来社会の変化
- 地政学的リスクを回避するため、製造拠点の自国回帰(リショアリング)や地域分散化が加速する
- AI・IoT等を活用したリアルタイムでのデータ収集・分析が拡大する
- 人権や環境に配慮したサプライチェーンの構築が進む
トレンド
o9 デジタルブレイン・プラットフォーム
日立ソリューションズは米o9 Solutionsと7月9日に販売代理店契約を締結し、AI(人工知能)を活用してサプライヤーから顧客までEnd to Endでのサプライチェーンの需要予測や計画最適化を支援する「o9 デジタルブレイン・プラットフォーム」を提供開始。
本サービスは、気候災害や為替、事故などさまざまな外部環境に応じて膨大なデータを高速で分析し、需要予測から供給、生産、在庫、輸送、販売まで、精度の高い計画立案を支援する。外部システムとの連携も容易にでき、拡張性高いプラットフォームとなる。売上や収益、リードタイム、納期、CO2排出量などの優先事項を設定すると、最適なサプライチェーンをシミュレートし、提案する。
ユーザーは画面上のサプライチェーンをマウスで視覚的に操作でき、要素の詳細をドロップダウンで簡単に確認できる。
企業はサプライチェーンの状況を組織を超えて共有でき、計画最適化と生産性向上を図れる。また、複数のシナリオで計画をシミュレーションできるため、迅速に質の高い意思決定が可能となる。
Web3技術を活用した日本酒輸出増実証プロジェクト
ぷらっとホームは、日本国内の地域産日本酒の輸出を拡大するために、Web3技術を活用した「日本酒輸出増プラットフォームモデル実証プロジェクト」を実施。このプロジェクトの第一回輸出実証では、シンガポール向けに日本酒を輸出し、その際に現実資産を記述する新しいトークン「ThingsToken ™」を導入した。
シンガポールには多くの日系飲食店や小売店が進出しており、日本酒は既に多様に流通しているが、輸出後の商品の流通経路や販売実績についてはほとんど情報がなかった。また、輸出に関わる長いサプライチェーンのため、特に需要の高い高級日本酒においては、輸送や保管中の温度や在庫管理が不透明な状況。
このため、日本酒の個別識別と品質管理の重要性が高まっている。Web3技術を利用することで、個品単位での管理と追跡が可能な仕組みが導入された。
実証では、ThingsToken ™をコンソーシアム型のブロックチェーン上で発行し、温度検知QRコードラベルを酒瓶に貼付して個品識別を実現。さらに、コールドチェーンの各物流ポイントでQRコードラベルをスキャンすることで、温度情報と位置情報を継続的に追跡できる仕組みが構築された。
また、輸出梱包やパレットにおいても、温度データを取得するために、温度ロガー機能を持つフレキシブルセンサータグと4Gロガー(三菱倉庫)を併用している。これにより、輸送中の温度管理が強化され、製品の品質維持が可能となる仕組みが確立。日本酒の輸出効率を向上させ、品質管理を強化することを目指す。
サプライチェーンリスク管理サービス「Resilire(レジリア)」
Resilireは、サプライチェーンの可視化、国内外のリスク検知、有事の際の影響調査の機能を搭載したサプライチェーンリスク管理SaaS「Resilire(レジリア)」を提供している。
より強靭なサプライチェーン構築のためには、企業を跨いだ横断的なサプライチェーン情報の連携が必要になると考え、今後、複数企業のサプライチェーン情報を連携・統合しデータの利活用が可能なサプライチェーンの連携基盤構築を進めている。
なお、連携基盤の構築にあたっては、経産省の「ウラノス・エコシステム」のガイドラインに準拠し、データの利活用に関する基本的な設計要件やルールを定めることで、企業間のデータ連携を安全かつ効率的に進めていく。
「ウラノス・エコシステム」とは、人手不足や災害激甚化、脱炭素への対応といった社会課題を解決しながら、イノベーションを起こして経済成長を実現するため、企業や業界、国境を跨ぐ横断的なデータ共有やシステム連携の仕組み構築に向けた取り組みのことを指す。
・中国で発生した新型コロナウイルスの影響により、中国に生産拠点を置いていた企業のサプライチェーンは寸断。生産拠点の(中国)一極集中は、地政学的リスクや社会不安リスクなど、様々なリスクを考慮しなければならないことが表面化した。
今後は東南アジアやインドなど、周辺国への分散が進むことが考えられる
・今回、世界のあらゆる交通網が寸断したことで、予測不能な海外生産のリスクも新たに浮上した
コストや製造品質、人員配置などを考慮しつつ、リスク回避を最優先し、国内回帰する動きも見られるだろう
・国際的なサプライチェーンにおける人権・環境問題への対応も、重要な課題となっている
海外では、「人権を理由とした企業のサプライチェーンに影響する規制」の導入が進んでいる
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