b-12 : パンデミックリスクの顕在化

パンデミックリスクの顕在化とは?

パンデミックリスクの顕在化は、グローバル化した現代社会の脆弱性を浮き彫りにしている。新興感染症の世界的流行は、健康被害だけでなく、経済活動の停滞、社会システムの機能不全、国際関係の緊張など、多岐にわたる影響を及ぼす。気候変動や環境破壊により新たな感染症出現のリスクも高まっている。

予想される未来社会の変化

  1. 日本の気候の亜熱帯化により、蚊を媒介とする感染症リスクが拡大する
  2. 個人に高い感染防止対策の知識、未病・治療の知識が求められるようになる
  3. パンデミックの早期収束のため、感染拡大に関するシミュレーション、および感染者の特定に関するトレーサビリティ技術が重要となる
  4. パンデミックが生み出す、精神的な影響の世界的伝播が大きな問題となる

トレンド

コロナ後遺症治療のための呼吸リハビリ方法

ヒラハタクリニックとのざき鍼灸治療院は、新井田厚司講師と協力して、コロナ後遺症患者に対する呼吸リハビリテーションのオンライン指導の効果を検証する研究を行った。

調査の結果、コロナ後遺症特有の症状である呼吸苦、倦怠感、体の痛みが改善する可能性が示された。また、質問紙調査とスマートウォッチデータの相関解析により、不眠と起床時間の関連性が確認され、スマートウォッチデータが症状変化の客観的な指標として利用できる可能性も示唆された。

2024年においても、コロナ後遺症に苦しむ患者は増加しており、倦怠感、息切れ、思考力の低下、不眠といった症状が日常生活に支障をきたしている。2023年の厚労省の調査によれば、成人におけるコロナ後遺症の発生率は11.7%から23.4%に達する。症状やその期間には個人差があるが、多くの患者が倦怠感や息苦しさ、ブレインフォグ、不眠などに悩まされ、これにより生活の質が低下し、重症の場合は寝たきりになることもある。この状況は医療アクセスや就労にも影響を与え、社会的な問題として浮上している。

現在、コロナ後遺症に対する有効な治療法は確立されていないが、先行研究から、感染による肺機能障害や微小血栓が「組織の酸素不足」に関連していることが指摘されている。これに基づき、酸素供給量を増やすための呼吸リハビリテーション法が有効であると考えられている。しかし、従来の自己実施型の呼吸リハビリでは、重症患者には実施が難しく、逆に症状を悪化させるリスクもあった。

厚労省の手引きに従った胸郭可動域拡大訓練や筋力トレーニングも中程度以上の患者には負荷が強すぎて実施できないことが多い。このような問題を解決するため、重症度に応じた無理のない呼吸リハビリ方法を開発し、呼吸リハビリオンライン指導を実施。このプログラムにはのべ1000人のコロナ後遺症患者が参加し、呼吸が楽になった、倦怠感が減った、活動量が増えた、よく眠れるようになった、自宅でできるので助かるといったポジティブなフィードバックが多数寄せられているが、効果の科学的検証は行われていなかった。

そこで、本研究では質問調査とスマートウォッチデータを活用して、呼吸リハビリオンライン指導のコロナ後遺症への効果を立証しようとした。結果として、リハビリの効果には患者間でのばらつきが見られたが、息苦しさ、倦怠感、体の痛みなどについては多くの患者において顕著な改善が認められ、呼吸リハビリ方法の効果が証明された。

パンデミック条約とパンデミック緊急事態

出典:Reuters『「パンデミック条約」交渉1年延長、来年までに締結へ=WHO』

世界保健機関(WHO)の194の加盟国は新型コロナウイルス流行中の失敗を教訓に、パンデミック発生前と発生時の協力体制を強化するための合意を目指し、感染症のパンデミック(世界的大流行)の予防や対策を定めた「パンデミック条約」の交渉を進めてきた。

しかし、ワクチン配分や備えといった問題で富裕国と貧困国との間の隔たりが埋まらず、当初は2024年5月24日の週の合意を目指していたが、協議を1年延長することを決めた。

一方、並行して話し合われていた「国際保健規則(IHR)」の改定は合意に達した。改定では重大な世界的に脅威となる公衆衛生上の危機のための新たなカテゴリー「パンデミック緊急事態」などが盛り込まれた。

感染症の拡大が「緊急事態」よりも深刻化した場合に「パンデミック緊急事態」を発令することを可能とする規定が盛り込まれ、WHOが宣言する「国際的な公衆衛生上の緊急事態」よりも重大な局面を想定している。

新たな規則では、感染症が「複数の国家にまたがって広がる」「重大な社会、経済的混乱を引き起こす」可能性がある状況などと定義し、国際社会により高いレベルの警戒と国際協調を促している。

心不全パンデミック

フィリップス・ジャパンは、新たに遠隔コミュニケーションツール「CT Collaboration Live」と心臓AI技術を搭載したプレミアムモデル「CT 5300」を発売。

2030年には高齢化に伴い、日本国内で心不全の新規発症数が35万人を超えると予測されており、これを受けて医療現場では“CTファースト”のアプローチが進んでいる。これは、心疾患の疑いがある胸痛患者に対し、侵襲的処置を避けるために先に心臓CT検査を行うことを意味し、患者ケアの向上につながるとされている。

心臓CTの需要が増加する一方で、静止画像の取得が難しく、高度な知識と経験が撮影者に求められてきた。また、高性能な装置が必要であるため、価格が問題視されることもある。

フィリップスの「CT 5300」は、心臓に特化した機能とAI技術を搭載し、撮影者の技量や患者の拍動の影響を受けにくい心臓CTを実現する。

さらに、ハードウェアとソフトウェアの設計を見直し、フラッグシップモデル並みの性能を持ちながらも低価格を達成し、多様なユーザーニーズに対応。AI技術による自動化されたワークフローと遠隔操作を可能にするコミュニケーションツールの導入により、医療従事者の負担を軽減することが期待されている。


・グローバリゼーションが進む現代においては、地域的な感染症であっても、、瞬く間に世界各地に感染が拡大し、パンデミックにつながる

・パンデミックによる影響は、経済に対する悪影響だけでなく、発展途上国において食糧問題や教育の問題等に及ぶ

出典: 新型コロナウイルスが社会・経済に与える影響と働き方の今後 (アデコ)

・いまだに、有効な薬物、ワクチンが存在しない感染症が多く存在している。エボラ出血熱、ラッサ熱、SARS、ジカウイルス等、致死率の高い感染症も見られる

・アジアではSARSやMARSの流行がたびたび発生し、多くの死者を出している

・必要のない薬を飲むこと、指定された日数の前にやめてしまうことで、抗生物質による耐性菌・ウイルスが発生し、問題になっている

・地球温暖化により、熱帯にあたる地域が増加。マラリアなど、蚊を媒介する感染症が増加する恐れがある(蚊は最も人間の命を奪っている生き物)

出典:The deadliest animal in the world (GatesNotes)

・日本では移民受け入れやインバウンドの誘致により、感染症やウイルスの持ち込みが増加。大流行に陥るリスクと常に隣り合わせにある

・都市封鎖や緊急事態宣言下における、経済活動のあり方が今後問われていく

・世界的パンデミック下では、都市封鎖や経済活動自粛によりエネルギー需要が減少し、原油価格、鉄価格などの資源価格が暴落し、国際金融に大きな影響を与えている

・パンデミックを防ぐためには、感染ルートの把握、個人レベルでの予防意識の向上が求められる。
日本では、台風や噴火、地震など、その他の災害と重なった場合を想定した対応策が求められる

・開発途上国の貧困層には、政府による社会的保護措置やワクチンへのアクセスが行き届かない現状がある

 

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