水産資源の減少とは?
水産資源の減少は、世界的な需要の拡大と、過剰漁獲、違法漁業、海洋汚染、気候変動などの影響により深刻化している。世界の魚類資源の約3分の1が持続可能な水準を超えて利用され生態系のバランスも崩れつつあり、食料安全保障、沿岸地域の経済、海洋生態系に大きな影響を与えている。漁獲量規制、海洋保護区の設定、養殖技術の改善などの対策が進められている。
予想される未来社会の変化
- 水産資源の持続可能な管理システムの構築が国際的な重要課題となり、漁獲割当制度が厳格化する
- 狩猟型食料が贅沢品化する
- 養殖技術の革新が加速し、陸上養殖や細胞培養による人工魚肉産業が急成長する
トレンド
ウルトラファインバブルを用いた「魚のへい死ロス低減」
丸山製作所とJALUXは、苫小牧漁業協同組合の一次保管に丸山製作所製「酸素気液混合ウルトラファインバブル発生装置」の導入を決定。
丸山製作所とJALUXは苫小牧漁協と連携し、約6カ月にわたりウルトラファインバブルを用いた「魚のへい死ロス低減」の効果検証を実施してきた。その結果、魚のへい死ロス低減を確認できる効果的な実証結果を得ることができ、導入を決定した。
この検証結果は、水産事業者の利益損失の低減のみならず、社会全体の経済損失を低減する一歩と捉え、JALUXと丸山製作所では引き続き連携を図り、日本発の技術・ウルトラファインバブルを用いた水産資源のロス低減をはじめ、他の一次産業への応用や、それに適した装置の開発に取り組んでいく。
完全閉鎖循環式陸上養殖システム(CRAS)
ARKは小型・分散型陸上養殖システムARKを活用した小規模陸上養殖事業であるマイクロアクアカルチャー事業者向けに完全閉鎖循環式陸上養殖システム(CRAS)「ARK-V1」に続く新商品「REF-V1」の発売を開始し、ARKの製品群を用いたハタ類養殖パッケージの提供を開始。
ARKは、国立大学法人琉球大学との共同研究成果を踏まえ、ARK-V1とREF-V1でハタ類(ヤイトハタ、クエ等)と海藻類(クビレズタ等)を複合養殖する手法(IMTA:Integrated Multi-Trophic Aquaculture、多栄養段階統合養殖技術、IMTA)を確立した。REF-V1はARK-V1と直結して運用することができる。ARK製品群によるIMTAの実現は、これまで課題とされていた陸上養殖事業の採算性の向上と、養殖密度を高めるための装置の濾過能力強化を同時に解決する有効な手段となる。
なお、ARKでのIMTAで養殖が可能なハタ類は、水産庁が制定した「養殖業成長産業化総合戦略」において、戦略的養殖品目の新魚種として指定されており、今後の養殖規模の拡大が期待されている。また、成長が早く、成育も比較的容易な上、高い市場価格が期待できることから陸上養殖への参入に適した魚種となる。
師にとっての厄介者「オオズワイガニ」を半身丸ごと使ったパエリア
食品のサブスクリプションサービスを提供するオイシックス・ラ・大地が展開する「らでぃっしゅぼーや」では、北海道産のオオズワイガニを使用したパエリア「3種ふぞろい魚介のパエリア」や、素材そのものを楽しむための「北海道産オオズワイガニ」を販売。限りある水産資源を有効活用し、海のフードロスを減少させることを目指す。
らでぃっしゅぼーやは、漁協で獲れる水産資源を大切にするため、未利用魚を中心に多くの魚類を取り扱っている。未利用魚とは、漁獲量が少ない、知名度が低い、形や傷が理由で市場価値がつかない魚のこと。家庭で食べ慣れない魚を加工し、流通を促進する努力を続けている。その結果、約3年間で約105トンのふぞろい水産品をレスキューし、フードロス削減に寄与。
オオズワイガニは、カレイ漁の網にかかることが多く、漁師にとって「漁の厄介者」として嫌われている。しかし、らでぃっしゅぼーやではその美味しさに注目し、身質の繊維が太く甘みが濃厚なオオズワイガニを活用。パエリアの素を開発し、カニの風味を引き立てる一品となっている。
このパエリアは、オオズワイガニの殻から出る出汁と、未利用魚であるドスイカの旨味を取り入れ、フライパンで蒸すことでふっくらとした食感を楽しめる。解凍後は炊飯器やフライパンで簡単に調理でき、本格的なパエリアが味わえるのが特徴。エコシュリンプの頭を使ったパエリアの素も販売されており、さまざまな選択肢が提供されている。
また、らでぃっしゅぼーやでは、2021年10月から未利用魚を定期的に届ける「ふぞろいお魚レスキューくらぶ」を開始し、未利用魚に関する情報提供やフードロス削減に特化したサービスを展開。らでぃっしゅぼーやは持続可能な水産業の実現に向けて取り組む。
・健康志向の世界的な高まりをうけ、水産資源の消費は右肩上がりで増加している
・一方で、1980年代後半から漁業生産は横ばい。養殖業の増加分が、供給の増加分を担っている(出典:平成30年度水産白書(水産庁))
・世界の水産資源のうち、適正レベルの上限まで捕獲されている状態は全体の60%、適正レベルまで漁獲されておらず、生産量を増大させる余地のある資源は7%に留まる
・養殖業は水産資源の枯渇を防ぐ一方で、餌による水質汚染、生態系の撹乱、過度な抗生物質の使用など、問題やリスクも抱えている
・地球温暖化によって、今後(50~100年単位で)海水循環が大きく変動し、酸素や栄養塩の循環が停止する可能性がある。水産資源の大規模な偏在化が起きるのではないかと危惧される。
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