抗老化・高寿命化技術とは?
抗老化・高寿命化技術とは、老化の進行を遅らせ、寿命を延ばすことを目的とした先進的な科学技術や医療手法の総称である。遺伝子編集技術、幹細胞療法、テロメア延長技術、ミトコンドリア修復技術などが用いられる。
米国を中心に、アンチエイジングを追究するスタートアップとそれを支援する投資家が増えており、今後は富裕層を中心に、アンチエイジング技術で寿命を大幅に伸ばす人が増える可能性がある。
予想される未来社会の変化
- 富裕層を中心にアンチエイジング技術による抗老化・長寿命化に対する関心が高まり、市場が拡大する
- 健康寿命が大幅に延伸し、100歳以上の活動的な高齢者が大幅に増える
- 定年や引退の概念が変化し、複数のキャリアを持つマルチステージの人生設計が標準となる
- 年齢を基準とした価値観が衰退する
トレンド
ミトコンドリア活性化物質「5-デアザフラビン」
プロラボホールディングスはミトコンドリアを活性化する画期的な成分「5-デアザフラビン」の国際特許を取得した研究機関であるケミテラスに株式出資をし、共同研究を開始した。これに伴い、「5-デアザフラビン」のサプリメントを2024年6月に“美容業界独占”で新発売した。
次世代のエイジングケア成分として注目を集めた「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」は体内に入ると、NAD+という補酵素に変換され、老化抑制に重要な働きをするサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性を促し、エイジングケアが期待できると言われている。そこでこの「5-デアザフラビン(TND1128)」は、ビタミンB2に類似した成分でミトコンドリア活性においてNMNの数十倍(国際特許取得済)のパワーをもつことが、崇城大学薬学部教授である永松朝文博士(ケミテラスCRO)の長年の研究で明らかになってきている。また、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性化についてもNMNの数倍の効果があると言われている。
現在「5-デアザフラビン(TND1128)」は、日本だけでなく、世界各国の研究者や医師らから世界最強のミトコンドリア活性化物質として注目を集めている。
超硫黄分子
島津製作所と東北大学は共同で「超硫黄分子」の特性と老化のメカニズムを解明する研究所を設立した。
超硫黄分子とは血中アミノ酸などに硫黄が結合した物質の総称である。強力な抗酸化作用を持ち、摂取すれば老化につながる体内の有害物質を減らせると考えられている。東北大学大学院医学系研究科の赤池孝章教授はこの分野の研究を世界的にリードする。
高度な質量分析を得意とする島津製作所の機器を活用し、まずは3年間共同研究を進める。超硫黄分子を含むサプリメントといった不老長寿につながる薬や食品の開発を目指す考えだ。記者会見で赤池教授は「老化の制御が可能になるだろう」と意気込みを語った。
不老長寿で有力視されるアプローチには、(1)老化に関する代謝(体内の化学反応)をコントロールする(2)炎症物質を出す老化細胞を除去する(3)健康な人の血液の液体成分を体に注入する(4)遺伝子薬で細胞を初期化する、の4つがある。実現可能性が高い順に挙げているが、島津製作所の研究では(1)老化に関する代謝(体内の化学反応)をコントロールすることに該当する。
生成AIを活用した人間の老化細胞の特定と、臨床応用に関する共同研究
GMOインターネットグループは、2023年12月26日に国立大学法人東京大学医科学研究所の癌防御シグナル分野(中西真教授)と共同で、生成AIを活用した老化細胞の特定と臨床応用に関する研究室を設立。この共同研究室は、コミュニケーションを活性化するための開放的なスペースを持ち、両者のノウハウを融合させて研究を加速することを目指している。
中西教授は、老化細胞の研究において顕著な成果を上げており、マウスの老化細胞を除去する方法や、既存の癌治療薬が老化細胞を排除することを発見した。現在、マウスでの成果を人間に応用する研究に取り組んでおり、その過程でマウスと人間の細胞内の遺伝子機能の違いを特定し、大量のデータ解析が求められている。また、老化細胞の特定には、マウスと人間の細胞内の遺伝子の共通性を見つけ、一般的な老化細胞での存在や細胞の種類ごとの違いを解析する必要がある。
この研究には、ヒトゲノム解析センターのスーパーコンピューター「SHIROKANE」や高性能GPU「NVIDIA H100」を搭載したサーバーが活用されており、中西教授の研究室が持つデータ解析を共同で進めている。マウスと人間の遺伝子機能の違いを特定し、AIモデルの構築とマッピングを行うことで、人間の老化メカニズムの解明が期待されている。老化細胞の選択的除去が可能になれば、加齢現象や老年病、生活習慣病の改善・治療法開発に寄与し、健康な状態での生活を可能にする「健康寿命」の延伸が期待されている。
・平均寿命は延伸を続けており、2045年には平均寿命が100歳に到達するとの予測もある
・複数の学者が、老化を科学技術で克服できると主張している。
英国の生物学者オーブリー・デ・グレイ氏は、老化は病気であるため治療が可能であり、細胞レベルで老化を修復することで、人間の寿命1000年が夢ではなくなると述べている。
未来学者のレイ・カーツワイル氏は、技術開発の連続で事実上の不老不死が達成できるという「寿命脱出速度(LEV)」の考え方を提唱している
•米国では近年、アンチエイジングを追究するスタートアップが急増している。アンチエイジング分野に商機を見出す投資家が多いという
•カリフォルニア州のスタートアップ、バイオエイジ社は、世界中の患者の血液や遺伝子のサンプルデータをAIで解析し、老化を引き起こす体内物質に作用する薬の開発を進めている
•人体の冷凍保存を研究するアリゾナ州のアルコー(ALCOR)延命財団は、犬を体温4℃の仮死状態から、蘇生させる実験に成功。自らの身体の冷凍保存を希望した人に対し、死亡宣告を受けた直後に体温を下げて保存する死後措置を行い、財団の施設で保存している
\未来コンセプトペディアを活用してアイデア創出してみませんか?/
新規事業・新サービスアイデア創出ワークショップ
新規事業立ち上げの種となるアイデアを創出し、新たな領域への挑戦を支援します。