マイクロナノマシンとは?
マイクロナノマシンとは、非常に小さなスケールで動作する機械装置やシステムであり、医療分野では血管内を自由に移動できる超微細型ロボットのことを指す。
マイクロナノマシンを活用することで、効率的な投薬で副作用の少ない治療が可能になるほか、微細なレベルでのセンシング・観察による精緻な身体や健康状態の把握が可能となる。複数のマシンを協調的に活動・作用させることで、効果的・効率的な診断や身体状態の制御が可能になるだろう。
予想される未来社会の変化
- マイクロナノマシンを活用して病変の早期発見や診断を行うことで、従来の侵襲的な検査や生検が不要となる
- 血管内での薬物輸送や局所的な投薬が可能となり、必要最小限の投薬で最大の治療効果が得られるようになる
- 脳内での活動が可能になることで、神経変性疾患の治療や脳機能の修復・強化が実現する
- 体内での常時モニタリングにより、健康状態の継続的な把握と即時対応が可能となる
トレンド
分子ロボットの「群れ」の実働に世界で初めて成功
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」において、北海道大学と関西大学はAIとVRを活用した分子ロボット共創環境の研究開発に取り組んでおり、今般、その環境を利用して分子ロボットの「群れ」を開発し、最大直径30マイクロメートルの物質を効率的に輸送することに世界で初めて成功。
群れの持つ利点を利用することで、分子ロボット単体ではなし得なかった大きなサイズの積荷を運搬できるようになっただけでなく、大幅な輸送効率の向上を可能にした。
今回の分子ロボットの群れの成果については将来的に、マイクロ・ナノマシンとしての薬剤の運搬や選択など医療分野、汚染物質の回収など環境保全分野への応用が期待される。
Anthrobots(アンスロボット)
タフツ大学とハーバード大学のビース研究所で人間の気管細胞を用いて、自律的に動き、神経の成長を促進する微小生物ロボット、通称「バイオボット」を作成するという革新的な研究が行われた。
バイオボットは、薬物の配達やがん細胞の識別など人体内で様々な任務を遂行するために開発されている。今回の研究では、タフツ大学とバーモント大学が以前に行った、カエルの胚細胞を用いて作成された多細胞バイオボット「Xenobots(ゼノボット)」の研究を基に、人間の気管細胞を使用して独自のバイオボットを作成し、「Anthrobots(アンスロボット)」と名づけられた。
Anthrobotsは遺伝子改変なしに成人のヒト細胞から作成され、Xenobotsよりも高い性能であることが示された。人間の細胞を使用する利点には、患者自身の細胞からボットを構築し、免疫応答を引き起こすことなく、また免疫抑制薬を必要とせずに治療作業を行うことができる。これらのボットのさらなる開発は、動脈のプラークの蓄積をクリアする、損傷した脊髄や網膜神経を修復する、細菌やがん細胞を認識する、または特定の組織に薬物を届けるなど、他の応用につながる可能性がある。
がん細胞に「体内を泳いで薬を届ける」形状変形マイクロロボット(Shape-Morphing Microrobots)
中国の研究チームはがん細胞まで直接薬剤を届けるマイクロロボットの概念実証を行った。現在の多くのがん治療において、抗がん剤による化学療法が成功を収めているが、がん細胞以外の正常な細胞まで攻撃してしまうため、大きな副作用が伴う。もし、ターゲットであるがん細胞だけに直接薬剤を投与することができれば、化学療法に伴う副作用の症状を大幅に軽減できる。そこで100マイクロメートル以下という極小サイズのロポットを使い、がん細胞へ直接薬剤を届けるという方法が注目されている。
実証には非常に小さなハイドロゲル(寒天やゼリーのような素材)で3Dプリントされた、非常に小さなロボットを活用した。魚やカニなどユニークな形状をしたマイクロロボットは、磁気でがん細胞まで誘導されpHの変化で形状変化して掴んでいた薬剤を放出することに成功。ロボットが静脈を泳ぐ能力や、体内での行動を画像化して追跡する方法など、いくつか課題はあるが、非常に単純な仕組みのマイクロロボットで、がん細胞へ着実に薬剤を届ける新しい方法が実証できたため、今後の医療用マイクロロボットの開発に貢献する可能性がある。
・50ナノメートルの薬剤等を超微細なカプセルに搭載させ、 体内を循環することでがんやアルツアイマー等の重大な疾患を早期発見、治療する画期的な仕組み
・体の隅々に張り巡らされ、異常感知、検知システムの役目を果たす。
体の異常事態を検知すると、即座に初動対応⇒診断を下し、内包している薬剤等を患部に放出して治療を行う。
免疫機能を人工的に補完、補強する総合システムとなっている
・コア技術はナノテクノロジー。
小さいサイズ、かつ精密で 多機能性が必要。患部に薬剤を届けるだけでなく、届け先で何が起こっているかを検知する。
がん特有の化学物質は出ているか、pHは酸性になっているか、それを信号として発信するので、MRIで検出することも可能。高分子合成や微細加工技術を駆使して、機能付帯する
・アルツハイマーの治療にも考えられている。脳にはバリア機能があるため薬剤が入らないが、バリア機能の引き金となる酵素を抑える働きをもつナノマシンが開発されている
・一方、ナノマシンには人工ウイルスを増殖することも可能であり、要人の暗殺やテロに使われる懸念もある。凶器としてナノマシンが使用されたとしても肉眼で確認が困難であり、事件の立件が難しくなる
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