Z世代とは?―ミレニアル世代とどう違う?新世代の消費動向と価値観を探る
・ミレニアル世代の消費動向と価値観振り返り
・Z世代の価値観とその背景
・調査からみるZ世代の消費動向
・コロナの影響―Z世代が消費のけん引役に
昨今、ミレニアル世代に代わって新たに「Z世代」と呼ばれる層が注目を集めています。その理由は全世界で20億人(米国でも人口の26%を占める)存在し、その購買力は440億ドルつまり4兆円以上の購買力を有しているとされるためです。
Z世代は、1990年代半ばから2000年代に生まれた世代を指す言葉として使われています。D4DRでは、1997~2010年生まれの世代のことをZ世代と定義しています。
Z世代は2021年現在、10歳~24歳。2010年代から2020年代にかけて社会に進出する世代となり、今後の消費の中心を担うようになる世代です。生まれた時点でインターネットが利用可能であったという意味で、最初の、真のデジタルネイティブ世代ということになります。そして彼らは「スマホ世代」と呼ばれることもあり、ミレニアル世代以上に日常とネットが融合している世代と言えるでしょう。
そのため実は、「モノ消費からコト消費へ」、「〇〇離れ」といったミレニアル世代の消費動向の変化を、より先鋭化させたといえる消費動向が見られます。
Z世代は、消費についてどのような価値観を持ち、何を志向するのでしょうか。本記事では、様々な調査データをもとに、Z世代の消費動向を整理します。
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・透明性・プロセスの重視などZ世代の4大インサイト
・Z世代の定義、理解におけるSNSの役割
・アバターにブランドのアパレルを購入(課金)するなど、”オンラインファースト”の現象
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ミレニアル世代の消費動向と価値観振り返り
まず、Z世代を語る上でベースとなるミレニアル世代の、さらにその前の世代と比較した特徴的な消費動向や価値観を簡潔にまとめると以下のようになります。(より詳細な内容が知りたい方はこちらの記事も併せて是非ご覧ください。)
- デジタルが当たり前という価値観が根付いている。
- 価値観の押し売りはNGで、多様性を重んじる傾向にある。
- モノの価値よりも体験価値を重視し、学びや体験、豊かな人生につながることにお金を使うことが普通で、抵抗が無い。
- マス的に提供される商品やコンテンツへの興味が薄く、自分にパーソナライズされた商品やコンテンツに価値を見出す。
- ステレオタイプな贅沢はダサいと感じていて、自分らしく、オシャレな贅沢を好み、楽しい非日常体験に価値を感じている。
- エシカルに対しての興味が高く、自分だけではなく社会のために良いことに対しての興味が高い。
ミレニアル世代がこうした動向を示す大きな背景には「デジタルネイティブ」であるということが挙げられます。彼らは10代の頃からパソコン・携帯電話などのデジタル機器やインターネットに親しんで育ってきた世代です。そうして様々な情報に触れることが多くなったために、総じてリベラル志向、多様性に寛容な傾向にあると言えそうです。
Z世代の価値観とその背景
デジタルが身体の一部、生活の前提になったZ世代
一方のZ世代はどうでしょうか。Z世代もまたデジタルネイティブであり上記の特徴の多くを持っているのは間違いありません。しかし、価値観のベースは近いものの、Z世代にはミレニアル世代とは全く異なる点も多いことが明らかになってきました。
Z世代は、生まれたときからデジタル機器に当然のように囲まれ、webを日常の一部として利用している世代です。また、パソコンよりもスマートフォン(スマホ)を日常的に使いこなし、生活の一部となっている「スマホ世代」でもあります。彼らの価値観を探るにあたり、彼らが過ごしてきた10代がまさにSNSが台頭し、スマートフォンが普及し始めた時代だという点には注目すべきでしょう。
Z世代の手元には、常にスマートフォンがあり、商品を購入する際には必ずオンラインやオフラインでインフルエンサーや友人の口コミをチェックします。SNSの普及によって、Z世代はミレニアル世代に比べて、社会問題について仲間と意見を交換することを望む傾向が強いことも明らかになっています。Criteoが実施したZ世代についての調査レポートでは、Z世代の半数以上が何らかのSNSを1日に複数回利用しており、かつ動画コンテンツに至っては週に23時間も利用していることが明らかになりました。これは、Z世代がコネクティビティを最大限に活かしながら、常に新しい情報を吸収することを志向していることを意味しています。こうして成長期にインターネットの恩恵を当然のように享受したため、情報発信力に長けており、当該世代からは多数のインフルエンサーが登場しています。
(出典:https://www.criteo.com/jp/wp-content/uploads/sites/6/2018/12/Criteo-2018-Gen-Z-Report-JP.pdf)
ネット空間に浸かりつつも、「リアル」と「独自性」への志向性も
ミレニアル世代以上にオンラインの世界に囲まれているZ世代ですが、同時に彼らは画面の向こうに広がる「リアル」の世界にも深い関心を持っています。Z世代はそれ以前の世代よりも個人的な交流や体験をより重視し、また日常生活や買物においても個人的な体験を優先する傾向がさらに強まっています。そして友人やインフルエンサーの影響を強く受けながらも、それぞれが自身独自の考え方や意見を確立することを重要視しています。
ゆえに、ミレニアル世代が将来を楽観視する傾向にあったのに対し、Z世代はより現実的な視点を持つと言われます。安定した職業に就き、マイホームとマイカーを所有し、2~3人の子どもに恵まれるといった、かつて成功を象徴していた生活様式に彼らが興味を示すことは減っています。Z世代にとって、それらは「リアル」ではないのです。リアルな価値を持ち、かつ独自性の強い、ユニークな事柄を志向するのがZ世代の特徴と言えます。
調査からみるZ世代の消費動向
ここからは、Z世代の消費動向について整理していきます。先述の価値観の変容から、具体的にどのような事柄の需要が高まっているのかを中心にまとめます。
企業にアクセスするチャネルを複数欲する
SNSへの投稿やツイート、近況アップデートを通じた自己表現が習慣化しているZ世代は、日々の出来事を複数のオンラインプラットフォーム上で共有します。こうした傾向から、Z世代は自分のお気に入りの企業とつながる場所として、実店舗だけでなくスマートフォンやSNSを求めていることがわかります。
実際に、Repro株式会社が実施した市場調査の結果では、Z世代の85%が新製品に関する情報を集めたい時にソーシャルメディアを利用していることがわかりました。また、アカウントをフォローするなどしてソーシャルメディア上で企業とつながっている人は、他の世代と比較すると59%も上回っています。
このようにZ世代は買い物の場面に合わせてネットワークを使い分けるので、Z世代にリーチするためには、オープンなコミュニケーションが必須です。オンライン・オフライン双方での彼らへのリーチを高められた企業は、より多くのZ世代とエンゲージできるようになるでしょう。
コト消費傾向の高まり。実店舗での購買体験の重視
ただし、Z世代は「リアル志向」も強いため、オンラインショッピングの利便性も重視する一方で、実店舗での直接的な体験にも重きを置く傾向にある点には注意が必要です。下図からは、Z世代が入念に商品の情報収集・検討をしたうえで、実店舗を訪れての体験(「コト消費」)も重視して買い物をしていることがわかります。
(出典:https://www.criteo.com/jp/wp-content/uploads/sites/6/2018/12/Criteo-2018-Gen-Z-Report-JP.pdf)
このように、Z世代の心をつかむためには、ただオンラインを活用すればいいというわけではないようです。彼らが実際に商品を手に取る際に満足のいく体験ができるかどうかが重要であり、彼らが訪れたいと思うようなデザイン性に優れた実店舗が有効であると思われます。
(出典:https://www.criteo.com/jp/wp-content/uploads/sites/6/2018/12/Criteo-2018-Gen-Z-Report-JP.pdf)
逆に、必要としている商品や好きな商品を発見しづらいオンラインショップの構成や、オンラインでの購入手続きが煩雑であったりすると、Z世代の期待を裏切るショッピング体験となる恐れがあります。小売業者のウェブサイトは、Z世代に対してSNSと比肩するほどに影響力を持つようになっているようです。
商品はブランドよりもユニークさ。本質的な部分に価値を見出す
では、Z世代はどのような商品を欲するのでしょうか。重要なのはユニークさです。YouTubeやSNSは、数百万人もいるインフルエンサーたちと世界中の人々をつなぐ窓であり、Z世代が自身の個性を表現する場でもあります。ネットを介してインフルエンサーを参考にしつつ、その上で他にはない自分を体現していくことが彼らにとっての理想の自己実現です。そうした欲求にかなうユニークな商品やコンテンツが求められています。また、ミレニアル世代以上に、Z世代は新しいものへの積極性が高い傾向を示しています。Z世代は、VRなどの可能性に最も大きな期待を寄せている世代であり、ライブ動画や360度動画などの動画フォーマットは、すでに多くの視聴者から人気を集めています。
小売業者は、他では入手できない斬新な商品やユニークな商品の取り扱いを検討し、品切れになることを恐れずに積極的に商品を導入することが有効になるかもしれません。
また、ユニークさを求める対象はモノだけに留まらず体験としてのコト消費、そして参加としてのトキ消費にも及びます。ミレニアル世代はモノ消費からコト消費への需要の変化がありましたが、Z世代ではさらにトキ消費の需要が高まっています。コトの体験に留まらず、ある特定のユニークな出来事に「自分が実際に参加した」という事実を楽しむ、つまりトキを消費することへの注目が高まっています。
(出典:https://markezine.jp/article/detail/31963)
(出典:https://www.join-the-dots.net/genz.html)
これらは、Z世代が単なる必要性や利便性、効率性ではない、その事柄自体の価値、より本質的な部分に意味を見出す傾向にあると言えるでしょう。
パーソナライズされた情報を好む
そうしたなかで、多くのZ世代がパーソナライズされた広告を受け取りたいと思っているようです。
Z世代はターゲティングされない広告に馴染みがありません。企業が自分の個人情報を簡単に入手できることを理解した上で広告を受け入れ、パーソナライズされた情報の提供は当たり前かつ、便利なものとして受け入れているようです。
Accentureが実施した意識調査では18〜20歳の回答者の71%が、過去の在庫や売り上げに基づいた自動補充システムに関心を示しています。より手軽でスピーディーに買い物ができる機能があれば、売上とともに製品の魅力を高めることができるでしょう。
実は警戒心が強く、「匿名性」を求める側面も
Z世代はパーソナライズされた情報を好む一方で、ソーシャルメディアに対する警戒心がひときわ強いことも明らかになっています。
ひとたびインターネットに載ってしまった情報は、ほぼ永久的にインターネット上から消すことはできません。その点について理解が深いZ世代は、匿名で利用できるようなブラウザを好む傾向にあります。
『Snapchat』『Whisper』『Yik Yak』『Secret』など、一定の時間が経つと投稿が消える仕組みになっているアプリは、プライバシーを保護してくれるアプリとして多くの10代から支持されています。『Twitter』や『Instagram』を利用する時は、アカウント名に本名を使わないようにしたり、アカウントを複数作って公開する情報を管理したりするのも一般的になっています。また『Instagram』のダイレクトメッセージなどの機能がある場合には、全体へ公開するよりも、直接友達に送信することを好む傾向があるようです。そして『Facebook』のような認知度が高く匿名性が低いとされるアプリは、いわゆる「身バレ」の可能性が高く、使用はしていてもあまり人気がありません。
こうした事実から考えると、Z世代にパーソナライズしたコンテンツを届けたい企業にとっては、この「匿名性」が一番の課題となる恐れがあります。企業としてははユーザーの人物像を正確に把握したいところですが、プライベートかつダイレクトな、信頼されやすいチャネルの活用が得策になるでしょう。事実、IBMが実施した「Uniquely Gen Z」という調査では、連絡先や購入履歴以上の個人的な情報を共有しても構わないと回答した10代は、3分の1以下でした。しかし、個人情報の管理を徹底していることがわかり信用ができれば、61%が個人情報を提供しても良いと回答しています。
(出典:https://www.ibm.com/downloads/cas/D7NJG8A6)
コロナの影響―Z世代が消費の牽引役に
新型コロナウイルス感染症が流行してから一年もの歳月が流れました。従来、このように社会情勢が不安定になった時は、富裕層の支出が消費市場全体を牽引する傾向にあります。しかし、EYが2020年の4月から継続的に世界18カ国の消費者を対象に実施した「グローバル消費動向調査」の調査結果から、コロナ禍において、必ずしも富裕層とは限らない、Z世代の支出が増えていることが明らかになりました。この世代は、こだわりのある商品、サービスを選択して消費しています。今後もデジタル感度の高いZ世代が、消費の牽引役になると思われます。
どの国においても、シニア世代のコロナに対する不安感は強く、高所得者層を含む全体の消費は減少傾向にあります。これに対し、感染に対する不安感が少ないと考えられるZ世代は、外出を恐れず消費活動を継続しているだけでなく、在宅が強いられていた期間も、むしろ慣れ親しんだインターネット経由の消費行動を活発化させ、市場を牽引しているのだと考えられます。
企業は消費市場におけるZ世代の台頭と、それによる変化を確実に捉え、今後の成長戦略に組み込んでいくことが求められています。
これまでとは異なるZ世代の「働き方」の価値観
Z世代は、従来型の勤務経験を持たない、あるいはその経験の期間が短いため、コロナ禍で普及したリモートワークを自然に受け入れ、働く上での当然の選択肢だと捉えている雰囲気があります。彼らにとって、企業はリモートワーク、フレックスタイム制、副業可などの柔軟な就労形態を提供して当然であり、それができなければ優秀なZ世代を採用することは難しい可能性があります。また、優秀なZ世代を引き留め、能力を最大限発揮してもらうために、彼らのモチベーションが高まるオペレーションモデルに切り替えていく必要もあるでしょう。Z世代は会社への帰属意識が低く、企業のブランドよりも「何を仕事としているか」が彼らにとっては重要なのです。
(出典:https://www.huffingtonpost.jp/entry/dell6_jp_5cdcdd18e4b0b4728ba2f390)
また、ミレニアル世代と同様のエシカル志向も見られ、企業の社会的責任にも敏感です。企業の経済活動だけでなく社会活動も含め、自分の価値観と合致する企業で働きたいという意向を強く示しています。
消費でも働き方でも、アフターコロナ時代にはZ世代が「ニューノーマル」における中心的役割を担います。Z世代の価値観に自社の商品、サービスやオペレーションが適応できるかどうかが今後のカギを握ってくるでしょう。
まとめ
以上のように、Z世代は一見ネット主義でありながら、ネットとリアルを巧みに使い分ける、用意周到な消費者たちであることが分かりました。
ミレニアル世代と比較したZ世代の価値観の特徴を整理すると、以下のようになります。
- 価値観のベースはミレニアル世代と共有している。
- ミレニアル世代以上にデジタルに馴染んでいるが、同時に警戒心も高い。自分にパーソナライズされた商品を好む一方で、匿名性も望むという二面性を持つ。
- オンラインの世界に慣れ親しんでいるため、一周回ってアナログで「リアル」な体験への関心が高まっている。人生に対する現実思考も強い。
- これまでの世代と比較しても非常に顕著なリベラルさを持ち、高い自由度と選択の多様性を重視し、「生きる意味」ともいえる本質的な価値を追求する傾向にある。
- その影響か、コロナ禍にあっても消費活動が活発。また働き方改革にも最も積極的な集団といえる。
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2022年6月1日に日経クロストレンド発行人の杉本氏とnoteプロデューサーの徳力氏をお招きし、「Z世代の次に押さえておくべき生活者のトレンドとは?」というテーマでZ世代の消費行動や生活者のトレンドを抑えるための未来洞察力について議論した。
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